原文入力:2012/02/12 19:50(2939字)
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0.1%財閥の国①過度な富の集中
1986年秋、ゴルフ場風景
シン・ヒョンファク前総理、イ・ビョンチョル三星(サムスン)会長に腰を曲げて挨拶
経済権力、政治権力の上に君臨し揺さぶることも久しくて
1986年秋‘安養(アニャン)カントリークラブ’(現、安養ベネストゴルフクラブ)。 シン・ヒョンファク 三星物産会長とホン・ジンギ中央日報会長はイ・ビョンチョル 三星会長に腰を深く曲げた。イ会長はゴルフ カートに乗り、シン会長とホン会長はカートの後を歩いた。ホン会長はイ会長と姻戚関係、シン会長は1980年に国務総理から退き、その後招聘された立場だった。
三星と近いある大学教授は「総理を歴任した方が財閥総師に腰を曲げる姿は私たちの社会で財閥の地位を示す象徴的な場面」としつつこのエピソードを紹介した。 盧武鉉大統領は在任時期 「権力は市場へ渡った」 と話した。 だが、政治権力と財閥権力間の天秤はすでにかなり以前から財閥側に傾いていた。
金大中・盧武鉉政府も例外ではない。 三星法務チーム長を務めたキム・ヨンチョル弁護士は著書<三星を考える>でこのように書いた。 "盧武鉉政府で三星に不利なことは殆どなかった。三星経済研究所が提案した政策を政府が採択した事例はあまりにありふれていた。 イ・ハクス(三星前副会長)は朝食会だけ一日二回ずつ開いた。湖南(ホナム)出身主要人物の大部分が三星と縁を結ぶことになった。 政権が変わっても財閥が主な人脈を掌握するには1年もかからなかった。"
実際、毎年開かれる‘湖巌賞’の授賞式では閣僚会議をそっくり持ってきたような姿が演出される。 昨年6月に開かれた授賞式には、キム・ファンシク総理の他にヒョン・スンジョン、イ・ホング、イ・ハンドン前総理、イ・グィナム法務部長官、イ・ヒョング大統領科学技術特別補佐官、キム・ドヨン国家科学技術委員長など主な長官たちがぞろぞろと姿を見せた。
逆に総理や長官が総帥を呼んで会うことは難しい。 現政権で総理を歴任したチョン・ウンチャン同伴成長委員長とキム・ドンス公正取引委員長は、昨年同伴成長を説得するために財閥総師との連鎖会合を提案し、幾人かの総帥との非公開出会いで満足しなければならなかった。全国経済人連合会関係者は 「格が合わないのに、どうして公開会合をするのか」として「大統領主催の席でなければ総帥が動いた事例は探し難い」と話した。実際、2000年以後に長官級人士が総帥と公開会合をしたケースは殆どないというほどだ。
官僚社会は言うまでもない。 特に高位官僚集団に対する財閥の影響力はますます大きくなっている。 高位官僚らの財閥企業行きはこのような状況を赤裸々に見せる証拠だ。 ソン・クァンス、イ・ミョンジェ前検察総長は斗山(トゥサン)、オ・セビン、イ・テウン前ソウル高裁院長は現代自動車にそれぞれ社外重役として身を置いている。 韓-米自由貿易協定を総括したキム・ヒョンジョン前外交通商部通商交渉本部長は三星電子社長(海外法務担当)として行き昨年席を移した。
身動きできない官僚社会
普段からの人脈管理で飼い慣らされて…
退職後には大企業行き
規制の話を持ち出せば "経済をつぶすつもりか" 叱責
経済部署は更に深刻だ。経済政策自体が財閥の利害から抜け出すことができない場合が多い。 三星電子・現代自動車などいくつかの大企業の株価が株式市場を翻弄し、これらの輸出実績が貿易収支と外国為替市場に直接影響を与える結果、経済政策自体がこれら財閥を中心に組まれるということだ。 公取委のある局長は「部署間協議過程で大企業集団(財閥)の経済力集中を問題にしようとすれば、毎度‘わが国の経済をつぶそうというのか’という反応が帰ってきた」と話した。高位官僚らがすでに財閥企業によって人脈管理されている上に、自らも財閥企業が揺れれば国家経済にとって大変なことになるという考えに捕らわれているためだ。 この頃、官界では財閥企業に行く席を探す官僚はいても、財閥改革に手を付けようとする人は見当たらないみるのが現実だ。
イ・トンゴル前金融研究院長(現、翰林(ハンリム)大客員教授)は「財閥が腹がふくれてこそ経済が良くなるという見解は現政権に入って更に一歩前に出ただけであり、それ以前から主流を形成していた」として「(現経済構造上)財閥改革は短期的経済後退や一時的衝撃を甘受して行う他はない」と付け加えた。
一般個人も財閥の力と影響力から自由にはなれない。 財閥の態度に舌打ちしながらも、これらの企業に入社願書を出すために求職者が集まるのが就職市場の現住所だ。 すべての経済システムが財閥中心に動き、中堅企業や中小企業に希望を探せないと見ると、どうにかして財閥企業に入社しようと駆せ参じるわけだ。 そうするうちに‘1人の天才が10万人を養う’というイ・ゴンヒ 三星会長の天才論を盛り込んだ書籍は飛ぶように売れている。 現在、イ会長の一代記と経営哲学などを扱った書籍だけで20冊を越える。
世論さえも勝手気ままに
言論、広告 依存度が高く‘財閥論理 伝播’のラッパ手に
一部大企業は専門担当チーム設けてSNSにも介入
財閥は世論形成と去就にも強大な影響力を発揮している。 表面に現れない無形の力だ。 10大財閥は地上波3社放送広告の20%以上を占めている。 新聞や雑誌も財閥依存度が高いのは同じだ。 財閥広告なしに生存できる言論媒体は探してみるのが難しいのが現実だ。 財閥広告に依存する言論媒体は財閥の前近代的な世襲経営やタコ足式事業拡張に対する指摘より‘オーナーリーダーシップ’に光を当てるなど、財閥体制を合理化することに多くの力を注いでいる。
このようなメカニズムを通じて政府、言論らは公然と財閥の論理を伝播している。 代表的な例が大企業が成長してこそ一般国民の暮らしがよくなるという落水効果(トゥリクルダウン)理論だ。 この理論は雇用なき成長が続くなかで実効性を喪失し既に久しい。 だが、財閥論理に抱き込まれた政策当局者、世論主導層はそれを伝播し続けている。 青年失業と社会両極化対策などは政府政策の優先順位で後送りされざるを得ない。
キム・ミンギ崇実(スンシル)大教授(言論広報学部)は「特定大企業に対する広告売上比重が増大するにつれ、言論が広告主の顔色を伺うことになり、結果的に世論歪曲が起きている」と指摘した。 キム教授は「最近一部大企業が数十人ずつ専門担当チームを設け、ツイッターやフェイスブックなど社会関係網サービス(SNS)に介入していることが世論形成にどんな影響を及ぼすのか注視する必要がある」と付け加えた。
キム・ギョンナク記者 sp96@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/518620.html 訳J.S