原文入力:2011/07/22 20:53(2339字)
チェ・ウォンヒョン記者
右翼→左派 転向 活動家 雨宮処凛
偽装請負など法の網を避ける企業
労働不安を助長する態度を告発
韓国‘青年ユニオン’と同病相憐
プレカリアート-21世紀 不安定な青春の労働 雨宮処凛著・キム・ミジョン訳/未知ブックス・1万5000ウォン
バブル経済が崩れ不況が訪ねてきた1995年、日本経営者団体連盟は<新しい時代の日本式経営>という報告書を出した。 報告書の核心は不況に直面して企業の労働力を三つに分けて管理しなければならないという提案だった。 核心幹部中心の‘長期蓄積能力活用型’、専門分野を担当させる‘高度専門能力活用型’、そして‘雇用柔軟型’だ。 これはいったいどういう意味だったのか? 2000年代後半に達し日本の不安定労働実態を暴いた本<プレカリアート - 21世紀 不安定な青春の労働>の著者 雨宮処凛(写真)はこの宣言を次のように解説する。「これから仕事をする人を一列に列べ、階層に分けて、多くの人を使い捨て安価労働力とする。そして死なない程度に暮らせるようにする。」‘プレカリアート’という言葉は‘不安定’(precario)という言葉と‘プロレタリアート’(proletariat)を合わせた新造語だ。言葉自体はなじみがうすいかも知れないが、派遣・下請け・契約職・アルバイトなど雇用が極度に不安定な労働者層が全世界的で急激に増えているということはすでに多くの人々が認識している事実だ。 2003年イタリアで街頭の落書きとして出現したこの言葉はすでにヨーロッパのメーデーの時に広く使われているという。
著者 雨宮処凛はかなり独特な履歴を持っている作家であり社会運動家だ。北海道の片田舎で生まれた彼女は高等学校を卒業した後、美術大学進学に失敗し20代半ばまでウェートレス、販売員、酒場の店員など色々なアルバイトを転々として生きた。 安定した仕事を探すことはできない現実の中で‘なぜこのように生活が苦しいのか’を悩んだ彼女は、一時右翼ロックバンドのボーカルとして活動するなど右翼運動に身を置くこともした。当時、既存右翼と違った派手なファッションのために‘ミニスカ右翼’というニックネームを得もした。しかし日本憲法前文を偶然に読んだことを契機に右翼思想に疑問を抱いて進歩的な社会運動家に変わったという。 <貧乏人の逆襲>のような著述を通じ資本主義世界に対抗して溌刺とした失業者運動を繰り展げる松本哉とともに現在、日本の青年運動の代表的人物に挙げられる。
←<プレカリアート - 21世紀 不安定な青春の労働>の著者 雨宮処凛
90年代後半から日本では‘自由’という言葉と‘アルバイター’を合わせた‘フリーター’という言葉が流行した。 固定された働き口に執着せずアルバイトで生計を維持し、自身がしたいことを自由にする青年層を指す言葉だった。 しかし実状はどうなのか? 自身の経験と取材を土台に、著者は不安定労働者を量産し‘すぐには死なないほどの’低賃金で働かせ、必要により自由に解雇している日本の現実を告発する。 フリーターたちを含む不安定労働者は基本的な生計をかろうじて維持する程度の低賃金で暮らしをつくりあげ、いつ切られるとも知れない雇用不安に怯えていなければならない。正規職になる可能性は殆どなく、いかなる社会保険恩恵も享受できない。
彼らの後には崖がある。ややもすれば住む所さえないホームレスになり、貸し漫画屋や、路上に居座らなければならない。 不安定な生活にともなう不安定な情緒で多くの若者たちが自ら命を絶つ。 しかし社会は彼らに‘自ら責任を負わなければならない’と話すだけだ。 正規職はまた、どうなのか? 現在の位置から押し出されたり墜落するかも知れないという恐怖で殺人的な労働強度に苦しめられる。過労死や自殺も多い。
著者は労働法制を歪めたり偽装請負などで法の網を避け、労働力を絞り取っている企業の行動など詳細に現実を掘り下げる一方、こういう現実に蝕まれていく若者たちの胸中がどうかも捕捉しつくす。「どことも連結されているという認識を持てず、ただ漂流していることに不安を感じるため、彼ら(不安定労働者)は極めて安易に国家という共同体と接続することになる。」精巧な搾取のシステムが国家主義強化につながる経路まで鋭く指摘している。
著者はこういう現実に対して「怒れ」と言う。‘フリーター全般労働組合’等、不安定労働者が自ら組織を作る運動はそのような怒りと反撃の開始だという。 それでは怒って立ち上がったプレカリアートたちは何を宣言するべきか? 著者は「ただ‘生きられるようにして!’と叫ぼう。それは無条件に正しいのだ」と語る。 人間らしく生きようと思う身振り自体が、誰も否定できない強いメッセージだということ。 そのメッセージから社会安全網の強化と基本所得の保障など、多様な実践が出てくる。
著者が解き示す日本社会の現実は私たちの社会とあまりにも似ている。我が国でも昨年、青年不安定労働者たちの労働組合である‘青年ユニオン’が作られた。 労働部は彼らの労組設立申告を繰り返し差し戻しているが、そのことに対する批判の声がますます高まっている。 果たしてこの社会はいつまでプレカリアートの声を無視することができるだろうか?
チェ・ウォンヒョン記者 circle@hani.co.kr 写真 未知ブックス提供
原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/488675.html 訳J.S