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「共同繁栄」の約束破った自由主義…労働者階級が背を向けたわけ【レビュー】

高学歴エリート層の党になってしまった米国民主党 
アイデンティティー政治と能力主義に偏り、階級矛盾を軽視 
ノーベル経済学賞受賞者が「労働者階級自由主義」提案
産業現場の自動化により経済は成長し、生産性も向上したが、肉体労働者の実質賃金は減少した。このような経済的隔たりが米国の労働者階級の民主党離れを促した=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 「戦後30年間、米国は非常に急速な経済成長をおう歌した。…労働者も経営者と同じくらいの利益を得ており、低学歴集団は大卒者集団よりも賃金上昇が速かった」

 「肉体労働者と非大卒労働者は賃金が減少したが、専門職、経営職、技術職の労働者の賃金は急速に増加し続けた。…1980年代に生まれた人々の半数は親よりも稼げていない」

 1960~70年代と2000年代の米国の状況を比較する上記の引用では、本書の問題意識が要約されている。2024年にノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル(米国マサチューセッツ工科大学教授)の2026年の新作『自由民主主義に何が起こったか?』からの引用だ。米国経済における階層間、世代間の不平等を指摘するこうした声そのものは、目新しいものではないだろう。本書の新しさは、こうした過程と変化を自由主義というキーワードを中心にして説明しているところだ。アセモグルの考えでは、米国経済の古き良き時代は自由主義が適切に機能していたことと密接に関係しており、現在の苦境も自由主義の退行や変質と切り離して説明するのは難しい。

 10章からなる本書でアセモグルは、自由主義の哲学的起源と歴史をたどり、現在の自由主義が危機に直面している背景をたどり、脱産業・デジタル時代に自由主義を復活させるべき理由を説明し、具体的な代案を提示しようとしている。彼がこのような過程を経て到達した結論は「労働者階級自由主義」という言葉で要約される。

 実は、自由主義は非常に複雑で微妙な概念であり、左から右に至る幅広い意味のネットワークを有している。著者は自由主義のこのような属性を「ビッグテント」という語で表現しているが、にもかかわらずその核をなす共通分母があるとしている。基本的な個人の権利と自由(表現、宗教、結社、選択の自由など)、権力のけん制、法の下の平等、「進歩」に対する信頼、弱者を助けようという意志と実践などがそれだ。中でも社会的弱者への関心は、特に左派や進歩的自由主義と近い議題である。しかし、「まさにその左派バージョンの自由主義こそ、今日の危機に陥っている自由主義」だというのが著者の判断だ。

 伝統的に米国の民主党は、肉体労働者の政治的故郷であった。例えば、1970年代には非大卒者の約60%が民主党に投票していた。大卒者で民主党に投票していたのは44%のみだった。しかし現在は、非大卒者の48%しか民主党に投票していない一方、民主党に投票する大卒者は約60%に達している。1940~70年代の共和党の下院議員はアイビーリーグ出身者が約30%を占めたが、民主党は20%未満だった。現在の民主党はアイビーリーグ出身者が30%以上、いっぽう共和党は一桁台だという事実は示唆に富む。民主党が高学歴エリート層の党になっていく間に、共和党が白人労働者に接近し、彼らの支持を確保するようになった結果こそ、トランプ政権の出現だと言える。

自由民主主義に何が起こったか?|ダロン・アセモグル著、キム・スンジン訳、センガゲヒム、2万8800ウォン//ハンギョレ新聞社

 米国の民主党に代表される西欧の中道左派がアイデンティティー政治と能力主義に埋没し、経済的・階級的矛盾を軽視しているということは、繰り返し指摘されてきた。本書の新しさは、進歩的自由主義の伝統の一部をなす「社会工学」的アプローチでそれを説明しているところだ。著者の見解では、キャンセルカルチャー(特定の言動が社会的・道徳的基準に反するとみなし、その言動をした人や企業や団体を攻撃する文化)やデプラットフォーミング(特定の個人や集団がソーシャルメディアのような公開プラットフォームで意見を共有できないようにすること)などの表現の自由を脅かす行為は、2012年以前は主に反自由主義的で保守的な集団のものであったが、それ以降は左派や進歩主義の側でより活発になっている。

 「表現の自由は自由主義にとって決して譲れないレッドライン(限界線)でなければならない」

 著者の見解では、表現の自由は自由主義の核をなすものの中でも最も重要な価値だ。「不寛容な、または無知な見解を持つ人の表現の自由をも尊重しなければならない」と彼は強調する。例えば、ある人が同性愛に反対したとしても「その態度が単なる言葉のレベルにとどまり、暴力をあおったり他者の基本的自由を侵害したりといった行動につながらないのであれば」、「自由民主主義は不快または同意しがたい見解の表現を許容する方向で判断すべきだ」

 このような考え方は表現の自由に対する信念から来ているが、自由主義に合致する見解が「最終的には勝利するという確信」から来ているものでもある。ヘイトスピーチへの対応策に苦慮する韓国社会にも示唆と討論の種を与えてくれるものだ。ただし、嫌悪や差別の表現が著者の言うような「言葉のレベル」にとどまるかどうかについては、意見が分かれるだろう。

 ソ連を筆頭とした現実の社会主義の没落以降、自由民主主義は共同繁栄、公共サービスの提供、自治と民主主義の保障などを約束することで、世界各地で有力な選択肢として受け入れられてきた。しかし、不平等の深刻化や製造業の衰退、グローバル化、地域共同体の崩壊に代表される現実は、とりわけ労働者階級に対して共同繁栄の約束が守られていないことを私たちに教えている。「自由主義を支えるためには再建しなければならない」と主張して著者が労働者階級自由主義を提案したのは、そのためだ。労働者は何よりも自動化と人工知能(AI)の導入で大きな打撃を受けてきたが、著者は「AIは労働者に有利な方向へと発展する可能性」があるとして、「労働者親和的なAI」を提唱する。生産現場で労働者を代替するのではなく、労働者を補完し発展させるかたちのAI活用が必要であり、またそれは可能だというのだ。

 表現の自由、社会工学、アイデンティティー政治、不平等、グローバリゼーション、政治の二極化、AI、ソーシャルメディア…。扱うテーマが非常に幅広く、その一つひとつが簡単なものでないにもかかわらず、自由主義という一本の幹でそれらを貫く力量には感心する。基本的な論旨には同意しつつも、経済成長は必要で望ましく、さらにそれは「環境にもあまり害がない」という主張には首をかしげる。現在人類が直面している最大の脅威だと言える気候危機に関する記述が極めて粗略で素朴なのも残念だ。

チェ・ジェボン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1272874.html韓国語原文入力:2026-08-14 05:01
訳D.K

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