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民主主義‘光速逆走行’反省します

原文入力:2010-05-14午後09:30:49(4654字)
ド・ジョンイル、ハン・ホング…論客12人
また帰ってきた‘反民主’批判
"MB政権 時代錯誤的 退行"
世の中を変える‘方法論’提案

ハン・スンドン記者

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<再び民主主義を語る>ト・ジョンイル,パク・ウォンスン他著/ヒューマニスト・1万7000ウォン

2008年以後、韓国民主主義はどうしてこれほど早く、簡単に、あえなく後退と退行と反転を強要されることになったのか?(ト・ジョンイル)

出版社ヒューマニストが企画し<オーマイニュース>と共同で進めた‘市民のための民主主義特講’を纏めた<再び民主主義を語る>に登場する12人の演者たちが診断した大韓民国という社会が病んでいる病気。それは‘逆進化’だ。恒星系の老化とともにある惑星の生物が例えば人間のような知能を持った高等生物からイグアナドンのような爬虫類へ退化して行った事実を示す遺跡探査の話を盛り込んだ科学小説(SF)もあるが、封建と植民と軍事独裁の暗いトンネルを抜けて、やっと民主主義に進化してきた社会が、ある日突然自分たちが多くの試行錯誤を経て抜け出した過去側に戻る逆進化を始める? 何のために? <再び民主主義を語る>は50年にわたる韓国民主化運動の根源的失敗地点と未完の部分を省察しつつ何をなさねばならないのかを模索し展望する。

ト・ジョンイル慶煕大名誉教授は李明博政権登場以後をこのように要約する。"国家権力の非民主的で反民主的な誤用と乱用、政府機関らの反民主的政策と形態、公権力による人権と国民基本権のじゅうりん、市民威嚇、私生活侵害、言論締めつけ、地方自治体らの横暴と公務員たちの非民主的精神状態、受任されない私的市場権力と言論権力による民主主義破壊行為、政府与党国会議員らの民主的力量欠乏など、去る2年間に発生した数多くの事件と事例は韓国民主主義が体験している退行と反転の衝撃的実状を雄弁に語る。"

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チン・ジュングォン氏は李明博政府のこういう退行を"彼の頭の中にはシャベル一丁" という言葉に圧縮した。"ビジョン自体が産業化初期に留まっているという問題があるとしか言えません。" 国民大多数はすでに情報社会に行っているので、"大統領一人で後退りして啓蒙するとか広報するとか洗脳するとか言ったりしています。時代錯誤的です。朴正熙をまねていると言いましょうか?"

パク・ミョンニム延世大教授はこういう逆進化の原因を"私的利益の公的調整の役割" を引き受けなければならないという国家の脱公共化、私事化、市場化に求めた。これにより社会権力資源の分配が力の強い者に集中する寡頭化、超集中化、世襲化、逆近代化が起き無力な個人たちは個体化、自営化、万人不安化の中で‘負け組’に転落しているということだ。こういう逆進化は単に政府の民主化に過ぎなかったのに、社会や共同体の民主化を成し遂げたと勘違いした過去の‘民主政府’時から始まっていたし、李明博政府になって社会が "ほとんど解体段階" に達したわけだ。

それでも大統領と与党に対する支持率は落ちることを知らない、なぜなのか? ハン・ホング聖公会大教授は語る。“皆さん、私たちが血と汗を流して民主化を成し遂げたけれど、民主化されて暮らし向きが良くなりましたか? …民主化されて本当に良くなったのは財閥で、それから朝鮮・中央・東亜ではないですか? くやしくないですか? 民主主義がなぜこのようになったのでしょう? どうして民主主義が汝矣島で投票する手続き程度にゆがんでしまったのでしょう? 民主主義を私たちの暮らしと関係ないことにしているじゃないですか、そうしておいて民主主義の危機だといくら騒いでどうするんですか? 民主主義が私たちの暮らしと関連があってこそ、民主主義が実現されて私の暮らしが良くなったことがあってこそ、民主主義のために何をしようとか、やめようとかするのと違いますか。”いわゆる“民主主義がご飯を食べさせてくれるのか?”ということだが、ハン教授の答えは“そうだ。ご飯を食べさせてくれる”だ。彼によれば1987年6月抗争で開かれ始めた民主化空間で、その年の夏に労働者大闘争が起きた。その結果、労働者の賃金がぐんと跳ね上がり、彼らの暮らし向きが良くなり、爆発した消費のおかげで国の財政も大きく良くなった。
残業徹夜が減り映画館の客が数十万単位から数百万、千万単位へ急増し、平均寿命が大幅に伸びるなど、生活の質が大きく改善された。

問題はその時から始まった資本と既得権勢力の反撃だ。新自由主義を経ながら労組が破壊され非正規職が量産され、民主主義は4年ごとに一回ずつの投票をする時だけ主人として振舞える、うわべに形骸化した。ポール・クルグマンの<未来を語る>を見ると、このような逆進化は米国で先ず進行された。独占資本を規制した民主党政権のニューディール政策により永らく守勢に追い込まれた共和党中心の米国資本家・既得権勢力は、新自由主義を前面に掲げたロナルド・レーガンが政治の前面に出始めた1970年代から本格的な反撃に出たし、ブッシュ一族の執権時、その絶頂に到達した。ウォールストリート発金融恐慌で共和党政権は崩れたが、それを1テンポ遅れてまねているイ・ミョンバク政権の威勢は相変わらずだ。

キム・サンボン全南大教授は、大学序列体制を土台にした学閥権力を“特権階級の利益が国家全体の利益だと強弁する”韓国的逆進化を支える核心部として把握する。“今日ではごく少数の資本家にすべての権利と権力が集中しているが、一種の小作人とでも言いましょうか? 管理階級であり寄生権力として学閥権力がその下にいるのです。かつては国家権力に、さらに遡れば植民地権力に寄生してきましたよね。”

チョン・ヒジン氏は何かに付けて国家や国民、科学の名で自分たちだけの私的利益を正当化する権力者らの奸計を看破しようと叫び、ウ・ソクフン氏はアパート坪数増やしなど‘10大 保守化’プロジェクトを推進し、それを通じて執権したハンナラ党政権の虚構を指摘する。

憲法に対する認識水準が、民主主義の水準と正比例すると見るキム・ジョンチョル延世大教授は憲法の勉強と実践を、保守言論と進歩言論の影響力構造が5対5になってこそ世の中が正しく立てられるというオ・ヨンホ<オーマイニュース>代表は“町内新聞、地域情報誌、個人ブログ、オンライン カフェなど、オン・オフラインで一人とか五人程度が意図的あるいは非意図的に運営するとても小さな規模の言論”すなわち‘毛細血管 言論’で逆進化を阻止しようと語る。

ホン・ソンウク ソウル大教授は、市民たちが科学技術政策に積極的に参加する市民科学を通じた より大きな民主主義を主に主張し、キム・チャンホ聖公会大教授は民主主義の基本根拠地である村を生き返らせようと力説する。

2010年選挙革命を夢見るパク・ウォンスン弁護士は、こういう世の中を変えること、すなわち大韓民国の逆進化に対する抵抗の主体は目覚めている市民ひとりひとり、“まさにあなた!”と話す。

ハン・スンドン選任記者 sdhan@hani.co.kr
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12演者の‘ろうそくデモ’分析

ティーンエージャーが先に感じた‘危険’

卸売商政府に良質商品注文
保守勢力ら‘背後論’で上塗り

<再び民主主義を語る>は、昨年この時期ノ・ムヒョン前大統領逝去直後‘逆行する我らが時代、どこへ行くべきで何をしなければならないか’という問題意識で企画され、光州抗争30周年に合わせて出版されたとヒューマニスト側は明らかにした。昨年11~12月、一週間に2回ずつ12人の演説者が代わる代わる毎回100人ほどの市民を相手に行った講演と質疑応答内容を4ヶ月間かけて整理、補完し纏めた。1年ぶりに出てきたこの本の出版時期は2008年5月に荒々しく燃え上がった‘ろうそくデモ’2周年ともほとんど重なるが、保守新聞はろうそくデモ2年ぶりに突然に示威参加者などを登場させ、あたかもろうそくデモが特定勢力の扇動とそそのかし、または認識の誤りのせいで起きた非自発的愚行のごとく追いやり、大統領が立ち上がり それを‘絶賛’するというあきれた‘アンサンブル’を演出した。天安艦沈没ミステリーの渦中に、地方選挙を控えて出てきたこのハプニングに不適切に動員されたデモ参加者らの反発と解明が後を追ったが、媒体寡占の威力を過信してか演出者たちは微動だにしなかった。

12人の演者たちはろうそくデモをどのように眺めたのだろうか。ろうそくデモ関連の部分を抜粋する。

“ろうそくデモの時、なぜ10代が先に出てきたのですか? イ・ミョンバク政権になって数ヶ月にもならないのに学校の雰囲気がパサパサになり、子供たちが一番最初に感知したのです。校則適用が厳格になり、0時間目が復活し、頭髪取り締まりが厳しくなって、夜間自習が強化されるや、すぐに子供たちが疲労を感じたのです。”(ハン・ホング)

“ろうそくデモに出てきた市民たちは自身を…グローバル市場の消費者と考えたと思います。これが10代の女性たち、若い主婦たちがろうそくデモを主導した理由です。また、ろうそくデモ参加者中の多くの人々がイ・ミョンバク政府に投票したという事実も説明されるのです。これがミステリーと考えた方々が多くないですか? さあ、市場に牛肉が出てきました。それで最小限の良心がある卸売商(イ・ミョンバク政府)ならば、問題のある商品を買ってきてはいけなくて、商品状態をだますのはもっと話になりません。これは基本的な経済的・資本主義的思考がないということです。消費者たちは、どうか政府が卸売商の役割を正しくしろと訴えただけなのに、政府と進歩陣営はこれを反政府デモとだけ考えるのです。”(チョン・ヒジン)

“その時が…中間考査の直前です。ロウソクのあかりを持って行こうとする時‘君、今出て行けば落伍するぞ’と先生が止めたでしょう。私の想像ではおそらく学生が<女子高怪談>に出てくるみたいにヒュッと背を向けながら冷たく‘まだご存知なかったんですか? 私たち、もう落伍したことを’と答えたようです。”(キム・サンボン)

“最近、リスク研究者たちは普通の人々の危険認識に影響を及ぼす十種の要素を整理しました。非自発性、不平等性、危険から逃げることのできる方法が発見されない時、新たな危険である時、人間が作った危険である時、隠されていて元に戻せない危険である時、子供たちや次世代に及ぶ危険である時、恐ろしいことである時、科学者らがその内容についてよく知らずにいる時、専門家たちの間に意見が一致しない時などです。これらの要素を見れば私たちが米国産牛肉輸入に対し感じた危険が全て該当するということを知ることが出来、なぜ人々が確率が低いのにその危険を大きく受け入れたのかが理解できます。”(ホン・ソンウク)

ハン・スンドン先任記者

原文: https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/420867.html 訳J.S