サッカーW杯カタール大会で、イラン代表チームが自国の国歌を斉唱しなかった。2カ月以上続くイランの反政府デモへの連帯を示す行動とみられる。
21日(現地時間)、AFP通信などによると、イラン代表チームは同日、グループBの第1節イングランドとの試合に先立ち、国歌斉唱セレモニーに参加しなかった。ハリーファ国際スタジアムに国歌が響き渡ったが、先発選手11人全員が沈黙したのだ。同通信は「選手たちは国歌が演奏される中、険しい顔で立っていた」と報じた。
選手たちの沈黙は、イランで9月中旬から続く反政府デモへの支持を表したものとみられる。イランの国歌にはイスラム革命とイスラム共和国が永遠であることを願うという内容が含まれている。1979年のイスラム革命を機に、イランでは立憲君主制王朝が崩壊し、イスラム宗教指導者が最高権力を持つ政治体制が維持されている。
イラン代表チームの主将DFのエフサン・ハジサフィ選手は、試合前日の記者会見で反政府デモを支持する発言をし、注目を集めた。彼は「祖国の状況を否定できない。イランが置かれている状況は良くないし、選手たちもこれを知っている」と語り、デモの過程で亡くなった人々に哀悼の意を表した。試合に先立ち、イラン代表チームのアリレザ・ジャハンバフシュ選手は、「イランの反政府デモ隊を支持するため、国歌斉唱を拒否するかどうかを集団的に決める」と述べた。
イランでは9月13日、ヒジャブをきちんと着用しなかったという理由で警察に連行されたマフサ・アミニさん(22)が3日後に疑問死したことを機に、2カ月以上反政府デモが続いている。人権団体はイラン当局の暴力的なデモ鎮圧で、これまで少なくとも380人が死亡したと推定している。国際社会の批判にもかかわらず、イラン当局は逮捕されたデモ隊に死刑を宣告するなど強硬な対応を続けている。