「原型復旧は不可能です。遺跡の中核部分が壊されたため、国家史跡の指定は難しいとみられます」
専門家らが出した見通しはすべて同じだった。2006年の発見当時、世界最大規模の支石墓と確認され、文化財庁と自治体が国家史跡の指定を推進してきた慶尚南道金海市亀山洞(キムヘシ・クサンドン)にある支石墓(現在は慶尚南道記念物)は、自治体の無理な復元工事により、どん底に突き落とされてしまった。
金海市が業者に依頼し、工期に追われながら復元整備工事を行っていたところ、中核となる床石の下の墓域の薄石などを、専門家の検討や文化財庁の現状変更許可なしに無断で破損した事実が明らかになったからだ。原型を消失させた遺跡破壊の余波により、史跡指定作業は事実上失敗に終わり、現在の地方記念物の指定も慶尚南道が解除するかどうかを議論するとみられ、亀山洞支石墓は文化財の地位が揺らぐ危機的な状況を迎えることになった。
5日昼、亀山洞支石墓の破損現場を見回りにきた文化財委員は、「国家史跡の指定の先決条件である遺跡の真正性と歴史性が決定的に傷つけられ、原状回復の可能性が消えた」と述べ、史跡指定のための準備作業は中断されると見通した。
文化財庁は5日、埋葬・史跡分科文化財委員らと職員を現場に急派し、無断の現状変更によって文化財関連法に違反した事実を確認したのに続き、今週中に慶尚南道と金海市を相手に、整備事業の経緯についての調査と責任者の告発などの法的措置に乗りだすことにした。同庁が7日に明らかにした。文化財庁関係者は「埋蔵文化財の遺存地域を原型保存しなければならない文化財関連の法律に正面から違反しただけに、告発は不可避な事案だとみている」としたうえで、「具体的な破損の規模と残っている地下遺跡を把握するための緊急発掘調査も、ただちに始める方針」だと説明した。
金海市側は、本紙が5日に遺跡破損の事実を初めて報道した後に波紋が広がると、立場表明文を発表し「慶尚南道の現状変更許可だけを得て、文化財庁との協議をしなかった」とし、整備事業の過程の問題点を認めながらも、「日光や風雨で破損された(支石墓の床石の下にある)底石を一つひとつ手で取りだし、高圧洗浄と表面強化処理を行った後、ふたたび同じ場所に埋め込み、重機は使わなかった」と主張した。
しかし、そのような金海市側の主張について、現状変更許可を出した慶尚南道の文化財委員会の一部の委員は「事実ではない」と反発した。ある委員は「原型が残っていた薄石と基壇を取りだすよう許可した事実はまったくない。後代に失われ消えた床石の周囲の一部領域に限定し、文化財当局との協議のもとで新たな部材で薄石と基壇の一部を再現することを勧告したものだが、市側が経緯を歪曲し、責任を押しつけようとしている」と反論した。
このように互いに相反する主張をしている慶尚南道と金海市の間で、今後も責任の攻防が続くものと予想される。