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「待ちわびる思い」を歌い“ドナウ川の惨事”慰めたブダペスト・オーケストラ

登録:2019-06-26 09:53 修正:2019-06-26 11:47
24日、ロッテコンサートホールの公演で韓国語で合唱  
団員全員で韓国歌曲「待ちわびる思い」を歌う  
 
ハンガリー大統領の追悼文「音楽で慰労を伝えたい」 
ピアニストのチョ・ソンジンもアンコールで 
ショパンの「プレリュード」で哀悼
今月24日、ソウル松坡区のロッテコンサートホールで開かれたブダペスト・フェスティバル・オーケストラ公演で演奏団員たちが韓国歌曲「待ちわびる思い」を合唱している=ロッテ文化財団提供//ハンギョレ新聞社

 「日出峰に日が昇ったら私を呼んでくれ/月出峰に月が昇ったら私を呼んでくれ/待てども待てどもあなたは来ず/洗濯の音、水車の音に涙を流した…」

 発音は正確でなくても、真心がこもったあたたかい慰めだった。ハンガリー出身の指揮者イヴァン・フィッシャー(68)が率いるブダペスト・フェスティバル・オーケストラ(BFO)の来韓公演が開かれた24日、ソウル松坡区(ソンパグ)のロッテコンサートホールでは韓国の歌曲「待ちわびる思い」が鳴り響いた。先月29日、ハンガリーのドナウ川で起こった遊覧船ハブレア二号沈没事故の犠牲者を追悼するためにオーケストラが準備した追悼曲で、団員は席から立ち上がって直接歌った。韓国人23人が死亡したこの事故は、現在行方不明者3人を探す捜索を続けている。

 歌に先立ち、マイクを持ったフィッシャー氏は「私たちはハンガリーのブダペストから来ました。最近、悲惨な事故があったところです」と丁重な声で挨拶をした。続いて「ハンガリーの国民とブダペスト市民たち、団員たちと私は、心を尽くして遺族の悲しみと苦痛に共感しています。彼らにささやかな慰労を伝えたいです」と言葉を結んだ後、韓国語で合唱を始めた。数人の団員の演奏に合わせて、楽器の代わりに楽譜を手にして歌う演奏者たちの姿は印象的だった。ドナウ川辺で「アリラン」を歌いながら深く悲しんだハンガリー市民の気持ちが、そのままソウルにも伝わってくるようだった。ロッテコンサートホールの関係者は「愛する人を待つ気持ちが込められた曲だとして、ブダペスト・フェスティバル・オーケストラが韓国に来る前に直接選曲した曲」と伝えた。

ブダペスト・フェスティバル・オーケストラのツイッターに掲載された韓国歌曲の練習の様子=SNSよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 ハンガリーのヤーノシュ・アーデル大統領は、公演パンフレットに「追悼の文」も載せた。「私たちはこの惨事を永遠に記憶するだろう」とし、「ブダペスト・フェスティバル・オーケストラがソウル公演を犠牲者に献呈することで、ハンガリーに代わり深い弔意を伝えるだろう。音楽を通じて慰労を伝えたい」と語った。

 3年ぶりの韓国公演で感動的なプレゼントを渡したブダペスト・フェスティバル・オーケストラは、フィッシャー氏が36年前、仲間の指揮者のコチシュ・ゾルターン氏とと組んで作った世界の名門の楽団だ。最初は複数の交響楽団の団員を集め、フェスティバル期間中にだけ活動したオーケストラだったが、名声を積んで常設楽団になった。フェスティバルに基盤を置いた楽団だったためか「サプライズイベント」を取り込んだ創意的な公演を見せることでも有名だ。典型化された楽器の配置ではなく、後列の打楽器を前列に配置したり、この日追悼曲を合唱したように演奏団員らが歌を披露したりもする。2016年の韓国公演でも「アリラン」を歌い、観客を驚かせた。

 追悼曲で始まったこの日の公演は、ベートーベン生誕250周年を祝う意味を込め、すべてベートーベンの曲で構成された。1部は悲壮な美しさが漂う「エグモント序曲」からはじまり、ピアニストのチョ・ソンジン氏(25)との共演で「ピアノ協奏曲第4番」を演奏した。チョ・ソンジン氏は叙情的かつ迫力あふれるロマンチックな演奏を披露した。クラシック評論家のホ・ミョンヒョン氏は「簡単には予測できないフレーズが続くが、強い説得力と躍動感で観客を惹きつけた」と話した。

今月24日、ソウル松坡区のロッテコンサートホールで開かれたブダペスト・フェスティバル・オーケストラ公演でピアニストのチョ・ソンジンがベートーベンの「ピアノ合奏曲第4番」を共演している=ロッテ文化財団提供//ハンギョレ新聞社

 観客の熱烈な歓呼に応えるかのように、チョ・ソンジン氏ははアンコールにショパンの「プレリュード第4番」、ブラームスの「6つのピアノ小品」を演奏した。特に「プレリュード第4番」は、ショパンの葬式で演奏された曲で追悼の意味が込められており、ドナウの惨事を追悼するブダペスト・フェスティバル・オーケストラの公演に呼応する意味を帯びていたた。

 ブダペスト・フェスティバル・オーケストラは2部で、「交響曲7番」で聴衆をとりこにした。通常は右側や左側に位置するコントラバスを中央の後列に配置し、弦楽器の濃密な演奏が引き立った。評論家のホ・ミョンヒョン氏は「独特な席の配置によるイヴァン・フィッシャーならではの個性的な楽器バランスが際立った」とし、「あちこちで湧きあがる音響は完璧にコントロールし、数知れず演奏されたベートーベンのテクスチュアにまだ新しい地点がたくさんあるという事実を知らしめた公演」と評価した。

 2千余りの座席を埋め尽くした観客は、ドナウの惨事を哀悼し、感動的な公演を披露したオーケストラの演奏に夜が更けても歓呼を止めなかった。フィッシャー氏は激しいブラームスの「ハンガリー舞曲第1番」をアンコール曲で演奏し、感謝の挨拶を伝えた。音楽で追悼の品格を見せたブダペスト・フェスティバル・オーケストラの公演は、25日ソウル芸術の殿堂や釜山(26日)、大邱(27日)、大田(28日)に続く。

キム・ミヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/899196.html韓国語原文入力:2019-06-25 21:03
訳M.C