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北側芸術団の公演、「うれしいです」で盛り上がり「Jへ」で一つになった

登録:2018-02-09 06:32 修正:2018-02-09 08:11
北朝鮮代表歌手イ・ギョンスクの歌で始まり  
平和の歌など北朝鮮のヒット曲を披露  
 
「愛の迷路」「みんなでチャチャチャ」など  
韓国の人気歌謡の演奏に会場盛り上がり  
 
最後の曲「また会いましょう」熱唱  
「太陽朝鮮」を「檀君朝鮮」にするなど  
歌詞改めて歌う場面も
北朝鮮の三池淵管弦楽団が今月8日午後、江原道江陵アートセンター師任堂ホールで、平昌冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する特別公演を行っている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 「同胞の皆さん、兄弟の皆さん、会えてうれしいです」

 8日夕方、「平昌(ピョンチャン)冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する三池淵(サムジヨン)管弦楽団特別公演」が行われた江陵(カンヌン)アートセンター師任堂ホールでは、北朝鮮の代表歌手、イ・ギョンスク氏の「パンガプスムニダ(会えてうれしいです)」が最初の曲として披露された。予定時間より10分遅れて始まったが、会場はすぐに盛り上がった。「男は船、女は港」(シム・スボン)「離別」(パティ・キム)、「あなたは知らないでしょう」(ヘ・ウ二)、「愛の迷路」(チェ・ジ二)、「みんなでチャチャチャ」(ソル・ウンド)、「独りアリラン」(ソ・ユソク)、「道程」(WAX)、「Jへ」(イ・ソンヒ)など、北朝鮮の演奏者らが次々と演奏する韓国の人気歌謡に、観客の熱気も最高潮に達した。公演は予定より10分遅れた8時10分に開始し、9時45分まで1時間35分間にわたり行われた。

 横14メートル・縦16メートルの師任堂ホールの舞台には、電子音楽演奏団体である牡丹峰(モランボン)楽団が中央に配置され、管弦楽団が左右に分かれて座った。舞台と観客席の距離はわずか3メートルで、観客たちは演奏者140人の表情をそのまま見ることができた。

北朝鮮の三池淵管弦楽団が今月8日午後、江原道江陵アートセンター師任堂ホールで、平昌冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する特別公演を行っている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 舞台は華やかだった。女性8重唱団が「白い雪よ、舞い降りて」という曲を歌う時は、冬松の上の残雪が落ちる映像と共に、天井からも銀色の粉が舞い落ちて舞台を飾った。北朝鮮芸術団は特別公演の観客の南側の人たちに合わせて、「ソルヌン」という言葉を「白い雪」に替えて歌った。5人の歌手は「駆けつけよう、未来に向けて」という早いテンポの北朝鮮の曲を歌いながら、韓国のアイドルグループを連想させる軽快なダンスで、公演会場を盛り上げた。北朝鮮のヒット曲メーカーと呼ばれる作曲家、リ・ジョンオ氏の作品「平和の歌」も登場した。同曲の原題は「鳩よ、高く翔べ」だ。南北文化企画者のイ・チョルジュ氏は「平和五輪という行事に合わせてタイトルを『平和の歌』に変えたようだ」と話した。

 「アリラン」を始め、「モーツァルト交響曲40番」や「白鳥の湖」、「You Raise Me Up」、「輝く祖国」まで、合わせて25曲の西洋のクラシックや海外の曲メドレーが続くと、立ち上がって拍手を送るなど、観客の反応も盛り上がった。「オペラの幽霊」を「歌劇劇場の幽霊」と、「オールド・ブラック・ジョー」を「黒人お爺さんのジョー」と表記するなど、北朝鮮の固有の語法で曲を紹介した点も興味深かった。

北朝鮮の三池淵管弦楽団が今月8日午後、江原道江陵アートセンター師任堂ホールで、平昌冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する特別公演を行っている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 2002年8月、ソウルで開かれた8・15民族統一大会以後、16年ぶりに行われた北側芸術団の公演だったが、南北はレパートリーをめぐり公演直前まで調整を重ねた。問題になった曲は「牡丹峰(モランボン)」と「白頭(ペクトゥ)と漢拏(ハンナ)は我が祖国」だ。民謡風の「牡丹峰」は「社会主義革命が良くとも」という部分が、「白頭と漢拏は我が祖国」は3番の「太陽朝鮮一つになる統一」というくだりが問題になったという。議論の末に、北朝鮮芸術団は「牡丹峰」は歌わず、「太陽朝鮮」を「檀君朝鮮」に変えて歌った。最後のステージは離散家族再会の映像を背景に「我々の願い」と「また会いましょう」が飾った。公演中、客席中央に座っていたヒョン・ソンウォル三池淵管弦楽団長は、公演が終わると舞台に上がってあいさつをした。

 北朝鮮公演専門家であるパク・ヨンチョン韓国文化観光研究院芸術基盤政策研究室長は「北朝鮮芸術団が今回、韓国の歌を披露する水準に留まらず、アレンジして自分たちの情緒に合わせて歌った」とし、「公の場で歌っただけに、もう秘密裏に聴く韓流ではなく、韓流のタブーが破れたことを示している」と話した。また、「分断以降の曲を選んで歌ったのは、異例のことだ。歌詞の内容は韓国の1980年代の雰囲気に、韓国歌謡の『太陽が昇る日』のように、苦難を乗り越えようという意味を込めて、北朝鮮流に変えた」と説明した。さらに、「五輪を狙って世界の名曲をメドレーで演奏し、米国やロシアなど(様々な国の曲を選ぶなど)、多様性自体が意味があった。普段北朝鮮でも演奏する曲であることが注目すべき点」だとしたうえで、「歌う方法や技法、舞台マナーなどは、現在の北朝鮮の公演の様子をほとんどそのまま見せてくれた」と分析した。ソウル演劇協会のソン・ヒョンジョン会長は「北朝鮮芸術団が最善を尽くして盛り上げた舞台だった。今回の公演を政治的観点で解釈しようとする人もいて、不安な面もあったが、すべての懸念をすっかり吹き飛ばした最高の舞台」だったと評価した。30年間アリランを研究してきたハンギョレアリラン連合会のキム・ヨンガプ理事長は「民族の同質性を回復するためには、頻繁に会う方法しかないが、スポーツや文化、応援など、様々な形で(南北が)会うのはいい機会」と、「北朝鮮の“音楽政治”をまた別の多様性の面で理解し、韓国のものを北朝鮮流で表現するのに期待を示すことが文化交流を強化する上で役立つだろう」と話した。江原道の招請で公演を観覧した小説家のイ・ウェス氏は、「これまで北朝鮮の音楽が体制を宣伝するためのものという考えから、多少不満を抱いており、あまり期待せず来たが、とても良かった」とし、「北朝鮮側が韓国側と雰囲気を合わせるため努力する意志が伝わった」と話した。

北朝鮮の三池淵管弦楽団が今月8日午後、江原道江陵アートセンター師任堂ホールで、平昌冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する特別公演を行っている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 今回の公演を観覧した北朝鮮公演芸術研究者たちは、今回の舞台を、三池淵楽団を中心に青峰楽団と牡丹峰楽団が主軸になったと分析した。同日、指揮はチャン・リョンシク三池淵楽団指揮者とユン・ボムジュ人民功勲合唱団の指揮者が担当しており、作曲家であるアン・チョンホ牡丹峰楽団創作室副室長が舞台監督を務めて公演を総指揮した。歌手はキム・オクチュ、キム・チュヒャン、ソン・ヨンなど青峰楽団を中心に、ユ・ボンミなどの牡丹峰楽団所属の歌手2人が加わった。文化企画者のイ・チョルジュ氏は「チャン指揮者は最高の作曲者でもあり、主な音楽行事や事業で指導者を遂行する音楽教師」だとし、「最高司令部傘下の功勲合唱団所属の責任作曲家であり、三池淵管弦楽団の(北朝鮮内での)地位と共に北朝鮮が今回の公演をどれほど重視したのかを示すもの」と話した。

 客席では、秋美愛(チュ・ミエ)共に民主党代表やチェ・ムンスン江原道知事、チェ・ミョンヒ江陵市長、ユ・ウンヘ議員、カン・スジン国立バレー団芸術監督など、政界と文化界の中心人物の姿も見えた。140対1の競争率を勝ち抜いて当選した一般応募観客560人と招待観客252人など、合わせて812人が同日の公演を楽しんだ。

共に民主党の秋美愛代表(右から3番目)と三池淵管弦楽団のヒョン・ソンウォル団長らが今月8日午後、江原道江陵アートセンター師任堂ホールで開かれた平昌冬季五輪・パラリンピックの成功を祈願する三池淵管弦楽団特別公演を観覧している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 同日、江陵アートセンター周辺では共同応援団や保守団体会員らが集まり、衝突する場面もあった。6・15共同宣言実践南側委員会で立ち上げた共同応援団約50人は、同日午後から公演が開かれる江陵アートセンターの入り口で統一旗を掲げて「我々は一つだ」や「我々の願いは統一」などのスローガンを叫びながら、北朝鮮の芸術団を歓迎した。共同応援団の活動のため釜山(プサン)から来たというファン・ソクジェさん(28)は「平昌五輪が平和五輪になり、南北交流の出発点になってほしいという気持ちで江陵まできた」と話した。 一方、彼らの前には保守団体のメンバー約100人が集まり、「平壌(ピョンヤン)五輪に反対する」などのスローガンを叫んだ。江陵アートセンター周辺には昼から1000人以上の警察が配置され、万が一の衝突に備えた。

 三池淵管弦楽団は今回、江陵公演後にソウルに移動し、11日午後7時から国立中央劇場ヘオルム劇場で2回目の公演を行ってから陸路で帰る予定だ。

キム・ミヨン記者、江陵/ファン・グムビ記者、共同取材団(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/831542.html韓国語原文入力:2018-02-09 00:03
訳H.J

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