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ろうそくが出会った6月「あの日がなかったなら、私たちは…」

登録:2017-06-09 03:48 修正:2017-06-13 11:55
KBS、6・10抗争30周年ドキュメンタリーを公募 
10代20代が直接カメラを持って 
1987年当時の参加者の証言を採録した 
民主化運動史記録プロジェクト 
当選作4本を10日夜に放送
6月抗争30周年を迎え、KBSが民主化運動記念事業会とともに実施した公募プロジェクト「6月物語」に参加したオ・スンイルさんとチョン・イドゥンさん=KBS提供//ハンギョレ新聞社

 大学生チョン・イドゥンさん(21)は1987年に起きた6・10民主抗争(以下6月抗争)についてあまり知らなかった。「中学高校の教科書で現代史は最後の部分に1段落程度出ます。それも期末テストが終わった時点で習います。試験に出ないから、(勉強に)力を入れることもありません」。発生した理由と結果だけを知っていた彼女は「これからは毎年6月になると、6月抗争を思い出し、その意味をもっと深く考えるようになりそうだ」と語った。

 そのきっかけとなったのが、KBS(韓国放送)が6月抗争30周年を迎え、民主化運動記念事業会とともに実施した公募プロジェクト「6月物語」だ。ろうそく世代が6月抗争を経験した人たちに直接会い、当時の話を聞いて、これを60分の採録ドキュメンタリーにして提出するものだった。3月末から5月初めまで、チョン・イドゥンさんを含め、合わせて70チームが参加した。チョンさんは、社会人映画同好会で会ったオ・スンイルさん(50)をインタビューして採録ドキュメンタリーを作った。オさんは1987年当時、延世大学の学生として6月抗争を経験し、延世大学の新村セブランス病院で李韓烈(イ・ハンヨル)烈士の遺体を守るため開かれた座り込みデモにも参加した。チョンさんは「映画やドキュメンタリーを作ることに関心があり、軽い気持ちで参加したが、準備して勉強するうちに、民主化運動の深い意味とこれを記録して残すことの重要性に気づいた」と話した。彼女はこのドキュメンタリーでグランプリの「国会議長賞」を受賞した。

6月抗争30周年を迎え、KBSが民主化運動記念事業会とともに実施した公募プロジェクト「6月物語」に参加したシン・エジャさんとイ・インジさん=KBS提供//ハンギョレ新聞社

 17歳のキム・ミジさんは光州(クァンジュ)で6月抗争に参加したソン・ドゥクヨンさん(53)の話を当時の資料とともに詳細に採録し、「韓国放送社長賞」を受賞した。イ・インジさん(19)は、江原道原州(ウォンジュ)基督病院で看護士として働いていたシン・エジャさん(51)がその地域で行った抗争の話を描き、「民主化運動記念事業会理事長賞」を受賞した。「特別賞」を受けたカン・ギョンシクさん(26)のほか6人(キム・ドヨン、パク・サンヒョン、イ・ヨンドン、イ・ジヒョン、ユン・ヒェジュン、キム・スンヒョン)は日本人留学生として87年8月に韓国に来て、6月抗争後の韓国社会を1年間現場で見守った元朝日新聞記者の植村隆さんの経験をドキュメンタリーに盛り込んだ。このプロジェクトを担当したKBSのイ・ドギョンプロデューサーは「共同体の歴史を継承して記録することの重要性を知らせたかった。啓蒙主義的な見方より市民らが主体的に参加し、自ら気付いていく過程に意味があると考えた」と話した。参加者たちのほとんどがデジタルカメラやスマートフォンなどで直接撮影・編集し、短くは数日、長くは2週間かけて完成した。

 今年は6月10日は、昨年10月から始まったろうそく集会を通じて私たちの手で大統領弾劾と政権交代を実現させた後、初めて迎える6月抗争30周年という点で、特に意義深い。直接選挙制改憲を勝ち取ったものの、民主政府の樹立まで突き進んでいくことができなかった30年前の「未完の課題」を、当時の主役だった先輩たちと今日の後輩たちが手を取り合って一緒に成し遂げた。このプロジェクトが、ろうそく世代の視線で6月抗争を見つめ直すことを目指し、企画されたのもそのためだ。キム・ミジさんが採録した当時朝鮮大学学生として6月抗争に参加したソン・ドゥクヨンさんは、ドキュメンタリーで「昨年の朴槿恵退陣のためのろうそく(集会)もまた、全国民的な闘争だったという点で、6月抗争が昨年と今年を貫く弾劾政局の源泉だと言える」と語った。イ・インジさんは「このプロジェクトを進めながら、6・10民主抗争を繰り広げなかったら、あの時の民主化が行われなかったら、昨年のろうそく集会が起きただろうかと考えるようになった」と話した。

6月抗争30周年を迎え、KBSが民主化運動記念事業会とともに実施した公募プロジェクト「6月物語」に参加した植村隆さんとカン・ギョンシクさん=KBS提供//ハンギョレ新聞社

 ろうそく世代も、6月抗争世代も皆“平凡な”人だという点で、ドキュメンタリーはむしろ生々しい。李韓烈烈士に比べ、自分は肉体的に苦痛を受けたことはないという申し訳ない思いから、毎年文化行事を開くシン・エジャさんや、催涙弾に当たるかもしれないと怯えていたと語るソン・ドゥクヨンさんなどの経験談には、私たちに似ているからこそ、人々を引き込む力がある。特に、マスコミが注目しなかった日常の話も発掘された。慶尚南道馬山(マサン)に住むホ・ジンスさん(62)は、息子のホ・ユンさん(23)に6月10日当時、馬山(マサン)で開かれた大統領杯サッカー大会でエジプト対韓国の試合がデモでどのように中断されたかを聞かせながら、競技場の観衆がデモ隊に加わり、当初1500人のデモ隊が3万人に増えたと伝えた。チョン・イドゥンさんは「催涙弾の話や白骨団などデモの状況を具体的に知らなかったが、細かく知ることができて良かった」と話した。

6月抗争30周年を迎え、KBSが民主化運動記念事業会とともに実施した公募プロジェクト「6月物語」に参加したソン・ドゥクヨンさんとキム・ミジさん=KBS提供//ハンギョレ新聞社

 先輩たちに会って、当時の話を聞くだけで後輩たちは変わる。チョン・イドゥンさんは「弘益大学の李韓烈記念館前をよく通り過ぎながらも、一度も入ったことがなかったが、今回の機会に記念館も訪問し、写真資料も見て、(彼について)深く知ることができた。忘れさられる前に残すことも重要だと思う」と話した。カン・ギョンシクさんは「連帯意識は持っているものの、社会問題に積極的に行動したことはなかった。しかし、今回のプロジェクトに参加し、ろうそく集会の延長線上で市民として地道に声を出さなければならないと考えるようになった」と語った。イ・インジさんは「歴史に関心を持ってより深く知っていくほど、現代社会で私がどんな存在なのかに気づかされる」と話した。KBSは4本の作品を編集し、10日午後10時30分に第1テレビで放送する。

ナム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/entertainment/797947.html 韓国語原文入力:2017-06-08 10:36
訳H.J(2923字)

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