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[インタビュー]「人文社会科学者たちは沈黙せず、切実な問題に生涯をかけるべき」

登録:2015-09-25 02:14 修正:2015-09-27 16:27
 ジョン・ダン教授–パク・ミョンリム教授対談
 エリートの実践的な努力を強調
 「緊急の問題から目を背けてはならない」
今月16日、延世大学東アジアの平和センターとネイバーの「開かれた演壇」が行われた国際学術会議に出席したジョン・ダン教授(左)とパク・ミョンリム教授。2人は対立の終息と平和の定着のために正しい方向の政治と市民教育が切実だと口をそろえた=聯合ニュース、延世大学東アジアの平和センター提供

 今月16日、延世大学術情報院で幕を上げた「第二次世界大戦終戦70周年記念特別国際会議―東アジアと普遍の平和」に参加するため、政治理論家であるケンブリッジ大学のジョン・ダン碩座敎授が韓国を訪れた。彼は近代政治理論と民主主義の研究に穿鑿してきた世界的な学者だ。金大中(キム・デジュン)元大統領との縁で、金大中平和財団諮問委員を務めたこともあった。今年に入って国内で著書『民主主義の謎(Setting the People Free: The Story of Democracy)』(フマニタス)、『民主主義の魔法を破る(Breaking Democracy's Spellレ)』(レディセットゴー)が出版された。17日、ダン教授と対談を行ったパク・ミョンリム延世大学地域学科教授の原稿を掲載する。

 パク・ミョンリム(以下パク) :今年は人類最大の悲劇だった第二次世界大戦終戦70周年を迎える年だ。国連も創立70周年を迎えた。長い歳月が流れたにもかかわらず、ヨーロッパにおける難民事態、ギリシャ危機、シリアの内戦、イスラム国(IS)、北朝鮮の核問題、日本の平和憲法をめぐる議論など、世界は決して安定的ではない。

 ジョン・ダン(以下ダン) :過去は現在を作った共通の体験に対する人間の記憶に基づいている。しかし、現在が必ずしも過去の遺産と一致するわけではない。世界は経済的に明らかに発展した。しかし、今日の世界は、世界的な安定要素だった資本主義経済に対する人類共通の信仰が深刻な挑戦を受けている危険な状況に置かれている。人間共同体にとって、地球がより安全になり、より寛大になったという自信はもう終わった。世界各地で不安が増大している。今が非常に危険な時期であることは明らかだ。

 パク: 東アジアもまた民族主義の高まりや領土紛争、軍事的緊張でさらに不安になっている。東アジアの平和と協力のための道はどのようにして模索できるのか?

 ダン :域内の他の国々が中国を牽制できる手段は存在しないため、現実的に東アジアの安定と平和は、中国主導で進められるしかない。中国は平和がまさしく彼らの利益となることを知っておく必要があり、周辺国の利益を認め合い、協力しなければならない。力に自らを委ねるのは望ましくない。中国の指導者たちが、平和と愛のような崇高な価値を認めると共に、歴史の中で自分たちの位置を判断することが重要だ。もう一つは、東アジアが過去の問題で深い傷を負った地域だということだ。しかし、歴史をめぐる対立から何が得られるのか、よく考えてみるべきだ。過去にとらわれるよりは未来に向けて進んでほしい。

 パク :北朝鮮問題はあまりにも長い間、交錯状態にあり、悪化されてきた、現代国際政治の最大の難題の一つだ。もはや、すべての世界が望ましい解決を諦めて、放置してしまった慢性の問題に変質したような気がする。平和と自由を熱望する韓国市民としては、このような放置は決して良い現象とは言えない。

 ダン :北朝鮮の問題は、実際より一層悪化している。これまで北朝鮮を扱う方法の中で、成功した例は見当たらない。しかし、長期的にアプローチする必要があり、北朝鮮の内的変化を導き出すための努力を続けなければならない。米国とイラン関係のように、北朝鮮体制を認めて外交関係を改善することが、北朝鮮問題の解決する通路になるかもしれない。核問題の悪化からも分かるように、外部からの圧力はあまり良い解決策にはならない。

 パク :人間は葛藤の終息と平和の定着に対する永遠の憧れを持っている。しかし、対立と戦いを繰り返してきた。人類の主要な政治思想は、例外なく、対立の代わりに妥協を、戦争の代わりに平和を定着させるために全力を傾けてきた。近代共和主義を開いた思想家たち、精緻な現代憲政体制と連邦主義を構築した政治哲学者たちは、皆善と悪、利己主義と献身という人間の本性の両面から出発して、平和な人間共同体を制度化した先駆的なデザイナーたちだった。世界的な政治哲学者としてこの問題をどのように捉えているのか?

 ダン: 対立は人間の本性そのものの問題ではない。また、戦争のように根本的な対立好む人間がいるとしても、深刻な問題ではない。私たちは、相対的であり、相互関係的であるということだ。結局、人間共同体としてどのように共存と相互尊重の領域を広げて制度化するかの問題だ。ここで最も重要なのが、政治と教育だ。経済成長で問題が解決できるという考えはナイーブで楽観的すぎる。最も根本的には、政治と権力が価値と道徳に結びつくようにしなければならない。

 パク :政治と教育の役割を強調したが、完全に同意する。だから国家の独裁や一方的教育は深刻な問題になる。

 ダン: 国家は決して自分のために動いてはならならない。現代民主主義が多くの限界に直面したのは確かだが、いかなる場合でも権力の集中は非常に危険な考えだ。人間の実存状況からして、権力の集中を合理的に正当化できる根拠はどこにもない。人間は間違った政治の方向を拒否しなければならない。また、国家や社会の主要な機関は、市民がそうするように教育すべきだ。

 パク :政治の方向や民主主義のレベルと関連して、意識のある市民を育てるための教育は、特に重要だと思う。

 ダン: 民主主義のために、今日特に切実なのは“教育者たちに対する教育”だ。この点を本当に強調したい。エリートは言わなければならないことに対して、沈黙してはならない。知識人たちは、人間社会の緊急かつ切実な問題から目を背けたり、柔らかい見方をするように仕向けようとする。私たちにとって今最も切実な問題は、何が問題なのかを明らかにすることだ。特に分散されており、断絶的な問題を集合的な全体の問題に織りなす必要がある。例えば、集団的なリスク、権威主義的な統治、環境問題などの政治的で実践的な問題について、学者たちの多くの努力と知恵、熱望が必要だ。しかし、最近は、人間の問題について生涯をかけて長いスパンで研究する社会科学者や人文学者がなかなか見当たらない。だからこそ“教育者たちに対する教育”がさらに切実である。

 パク :世界的な政治哲学者として、その点と関連して強調したい特別な原則や哲学があるのか

 ダン :二つを言いたいと思う。第一は、「何が正しいのか」だ。(しかし)ここで留まってはならない。その「正しいこと」のために「自分が何をすべきか」を考えなければならない。

 パク :世界と韓国の今日の現実からして、長らく心に留めておきたい、身の毛のよだつような言葉だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-09-24 20:43

https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/710401.html  訳H.J