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学術・政策研究の分業が必要…教授でなく研究所が中心になるべき

原文入力:2012/05/08 16:21(3815字)

←3月21日夕、ソウル、龍山区(ヨンサング)、孝昌洞(ヒョチャンドン)の白凡記念館で講演しているチョ・グク ソウル大法学大学院教授. タク・キヒョン先任記者 khtak@hani.co.kr

[HERI レビュー] 国内大学 研究所の現住所

 韓国の大学教授は忙しい。 国内外の学術誌に絶えず論文を載せなければならず、講義と行政業務による負担も侮れない。 政府の各種委員会に参加したり言論寄稿を通じて政策決定に影響を及ぼす。 受託研究も少なくない。 政府部署の責任者になったり、国会議員に挑戦したりもする。 独裁政権を助ける‘御用教授’を非難した声は、最近では‘ポリフェッサー’(polifessor)に対する論議につながっている。 選挙には出馬しなくとも、有力政治家を助けるシンクタンクや諮問グループに属する教授が少なくない。

 政策を媒介とした大学教授の社会参加は政治参加に限定されない。 韓国市民運動の高い政策力量は教授と研究者の献身的な努力なしには不可能だった。 法学、政治学、経済学、社会学、社会福祉学、行政学などの分野の教授が優れた政策代案を作り出した。 市民団体を媒介として学科の障壁を跳び越える激しい討論、教授と弁護士、活動家の躍動的協力が行われた。

 チョン・イルジュン高麗(コリョ)大教授は「IMF経済危機以後、教授も狭い専攻領域に埋没した専門家にすぎないという認識が広がった」と話した。総体的知識人に対する期待が無くなった状況で、大学は公的談論の疎通が成り立つ空間にはならず、市民団体やインターネットがその役割の一部を遂行した。 参与政府当時には教授が主導する委員会が多数作られて、政策生産に直接関与するケースが増えた。

大学が公的談論疎通空間の役割を果たせない

 だが、問題はより複雑だ。‘学術研究’と‘政策研究’の間の間隔がもともと大きいためだ。 そのために優れた研究業績をあげた学者が優れた政策代案も提示できるというわけではない。 米国の政治理論家チャールズ リンドブロムとデビッド コーエンは 「教授は相手が自身の話に耳を傾けないために失望し、意思決定者らは彼らが願う言葉を聞けないために失望する」と両者の不満を描写した。 事実、教授は学界同僚が使う言語と文法で文を書き、彼らから高い評価を受けることを願う。

 対外政策の決定過程で‘理論’と‘実践’の関係を研究したアレクサンダー  ジョージもやはり「多くの学術研究は、悪い結果を避け望む目標を成就できる決定を下すことに格別な助けを与えることはできない」という政策決定者の不満を伝えている。 とはいえ学術研究と政策研究の間の協力を個人の献身に寄り添ってばかりもいられない。 ハーバート ケンス米国コロンビア大教授は「学界と大学当局、政策決定者すべての努力が必要で、業績評価方法改革などの制度補完が重要だ」と主張する。

業績評価から政策研究は事実上除外

 韓国も例外ではない。 教授に対する業績評価が学術研究中心になされ、政策研究は評価と報償体系から事実上除外されている。 参与政府当時、大統領府政策室長を務めたキム・ビョンジュン国民大教授は「中央部署官僚らの中には高い学歴、豊富な資料と人的ネットワークを備えた人々が多い。 教授との論争でも押されない」と語った。 さらに現在の学界の構造と慣行は学術研究すらまともにできなくさせている。 キム教授は特に、大学研究所の実態を問題にした。「大学研究所は学校の支援や個人の後援が殆どなく、短期政策受託に依存することになる。 学術研究でも政策研究でもない注文者のための‘オーダーメード型生産’がなされている」と語った。

 研究所が専任研究員を置けない現実も問題だ。 研究所組織に対する発展戦略を持続的に追求できる人がいない。 教授個人でなく研究所を基盤に学術および政策研究がなされる必要があるとは言っても、人的・物的資源と戦略的追求、全てが足りない状況だ。

専任研究員がいない社会科学研究所

 実際、韓国研究財団が2011年11月に発表した‘2011年大学研究活動実態調査分析報告書’を見れば、2010年一年間の全国411大学が遂行した課題数は8万4776件で、研究費は4兆5744億ウォンだ。 この内87.6%が理工系列で、社会科学分野は研究費全体の7.2%である3282億ウォン(1万3576件)に過ぎなかった。 最近5年間に大学付設研究所は2728ヶ所から3421ヶ所に25.4%増えたが、専任研究員数は5964人から2145人に反対に減った。社会科学分野の研究所が894ヶ所で最も多かったが専任研究員は419人で、まだ一人の専任研究員も置けずにいる。

 キム・ビョンジュン教授は「大学研究所に対する学校の投資がなされなければならず、客員教授や研究教授制度を内実伴う形で運営することが重要だ」と提案した。 大学外での変化も必要だ。 批判社会学会長を務めているチョ・ヒョンジェ蔚山(ウルサン)大教授は "政策研究を主導し支援できる政党(研究所)の役割強化、学界とシンクタンクの協力と競争関係構築が共に成り立たなければならない」と話した。 結局、大学とシンクタンク、学術研究と政策研究を共に発展させるための努力と戦略が必要だ。 両者間の不均衡は問題の結果であるだけでなく原因でもあるためだ。

ホン・イルピョ ハンギョレ経済研究所研究委員 iphong1732@hani.co.kr

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海外の大学研究所は

 大学とシンクタンクはそれぞれ異なる聴衆と規則、文化を持っている。 各自の競技場で最高の成果を上げようと努力している。 だが、学術研究と政策研究は排除的であるより補完的であり‘バランスの取れた分化’が重要だ。 大学とシンクタンク、政策生産メカニズムを研究する専門家たちと電話・電子メールでインタビューを行った。 整理ホン・イルピョ ハンギョレ経済研究所研究委員

米国、研究所を通じて教授-外部を連結

 米国の大学研究所は知識生産の完結組織というより教授と大学外部資源を連結するネットワーク ハブの役割をするケースが多い。大学研究所は政策知識の生産者とは一定の距離をおいて、社会的分業を形成している。

 まず大学外部にも組織と人材が豊富だ。シンクタンクと言論が代表的であり、学術的成果を政策知識に翻訳する(Malcolm Gladwell、David Brooksなどの作家、Freaknomics等のブログも良い例となる。 研究所を含む大学とシンクタンクはそれぞれ異なる聴衆を相手に、別のルールにより別のゲームをする他の‘場’(field)を形成している。 教授は学術誌に論文を掲載することが重要だが、シンクタンクの研究者は<ニューヨーク タイムズ>寄稿の方にさらに意味がある。

 ハーバード大ケネディスクールのような政策大学院もやはり、教授と大学外部シンクタンクを連結する制度的通路であり、インターネットの影響で両者に重なる部分が増加している傾向だ。 米国/イム・チェユン ウィスコンシン大社会学科教授

ドイツ、長期間かけて高級談論を生産

 ドイツには非大学研究機関の数が多く、地位も高い。 これら研究機関は講義に対する負担がなく、学術研究や政策研究をしている。 政府は彼らに十分な資源を支援するものの、自律性を最大限に保障する。 大学と非大学研究所機関は競争と協力の関係を形成し、大学は政策知識の直接生産という負担を大幅に減らすことが出来る。 政党と労働組合もまた優れた政策力量を備えていて、より広い範囲の社会的分業もできている。

 大学が遂行する政策研究プロジェクトも規模が大きく期間も長い。 通常3年であり、1年なら最短期間研究と言える。 これをベースに研究の質を高め、高級な政策談論を作り出す。 学者としての権威と尊厳を守るための研究者の努力とそれを配慮する制度と文化があいまって作った結果だ。 ドイツ/パク・ミョンジュン ベルリン自由大韓国学科専任研究員

英国、学術・政策コンサルティング 分離の伝統

 英国の学界と政策コンサルティング系は分離している。 英国の官僚たちは相当な政策能力を有している。 職務循環をせず一生同じ分野にいるためだ。 政治家もまた、政策訓練を受けて成長する。 官僚と政治家が主導する比較的安定した政策生産構造が80年代のサッチャー政権を経て動揺した。 政策理念が急変しシンクタンクが政策過程に深く介入し始めた。

 韓国研究財団のように大学に研究費を提供する研究会(ESRC,EPSRCなど)が政策的含意を非常に強調しているが、教授にとって重要なのはやはり学術論文だ。 他のヨーロッパ国家と比較するならば、英国の教授は作られた政策に論理的土台を提供する役割が大きい。 英国/ソン・ジョンウォン ロンドン大都市計画学科教授

原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/heri_review/531814.html 訳J.S