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[なぜならば] 彼らの未来、私たちの未来:NAFTAと韓-米FTA

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/509467.html

原文入力:2011/12/09 19:33(2463字)


チェ・ヨンヒョク全国電力労働組合対外協力室長


米国とのFTAは最大限後回しにして
一番遅く締結するのが賢明だという判断が
13年間のナフタ体制の下で
カナダが得た教訓だと言われた


  去る11月22日ハンナラ党の韓-米自由貿易協定(FTA)批准案抜き打ち採決を見ながら、2004年からの10年近い歳月 我が国を揺るがせたその韓-米FTAが、このような結末に終るのかという虚しい思いと共に、ふと5年前のことが脳裏をよぎった。

  韓-米FTAの熱い論争が真っ最中だった2006年の春、<ハンギョレ>の記者数人と共に米国・カナダ・メキシコを見て回る機会があった。 米国が主導したFTAの最初のものとも言える北米自由協定(NAFTA・ナフタ)が発効10年が過ぎた状態で、これらの国の現実を見て韓-米FTA締結後の私たちの未来を予測してみようという考えからであった。


  カナダ西部のバンクーバーで、平凡な教師だったレリー・クンに会って意外な話を聞かされた。彼はブリティッシュコロンビア州の教育主権は米国に奪われてしまったと言った。 2000年からバンクーバーの属するブリティッシュコロンビア州の公教育評価システムをトーフルで有名な米国のETSが設計していると言い、教育において核心は試験制度だがその試験の出題を米国人がすることになってブリティッシュコロンビア州の教育のすべての内容は米国人の出題傾向に合わせて組むようになっていると、教育主権喪失を嘆いた。 これがカナダ人が分かっていなかったナフタの落とし穴の一つだと言いながら。


  トロントに移動して会ったカナダ弁護士協会のケン・トレーナーは、当時私たちにはなじみの薄かった米国宅配会社UPSとカナダ連邦政府との間の訴訟の話を聞かせてくれた。 UPSが1990年代末からナフタによりカナダで宅配小売業を始めたが、100年の伝統を持つカナダ連邦郵便局の子会社だった宅配会社との競争に勝つには力不足だった。 そうと分かるやUPSはかの有名な投資家-国家訴訟制(ISD)を持ち出して、カナダ連邦政府が米国企業の営業を妨害しているという名目で訴訟を提起したとのことだった。 そして当時カナダ連邦政府を代弁した弁護士スチーブン・シュリブモンとの電話をつないでくれた。


  受話器の向こう側でシュリブモン弁護士は、今回の訴訟でカナダが必ず負けるだろうと予測した。 自分が代理する依頼人、それも自国政府が必ず負けるという彼の予想は明快だった。 この訴訟の裁判所はワシントンにあり裁判官は皆米国人で、当時まで米国いや米国企業がこういう法律紛争で負けたケースは殆どなかったというのが彼の説明だった。


  結局UPSはその年9月カナダ政府に勝訴し、カナダは莫大な賠償金を支払う一方、カナダ連邦郵便局から宅配事業を独立させた。


  オタワで会った市民団体活動家スチーブン・ベネディクトは、当時まで米国とFTAを結んだ7つの国は主にアメリカ大陸に位置し、もともと米国の影響圏下に置かれた植民地レベルの国家なので、FTAを締結しようがすまいが米国に対する従属は結局同じだと言った。そして、韓国が急いで米国とFTAを締結しようとする動きは自分としては理解できないと言い、あたかも絶壁に身を投げる列の中で、なぜあえて割り込みをしてまで先に死のうとするのか、その理由が本当に分からないと話した。 彼は結論的に言って、米国とのFTA締結は最大限あっちこっち逃げ回って先送りし、全世界すべての国が締結した後に一番遅く締結する人が最も賢明な人だという判断が、13年間のナフタ体制の下でカナダが得た教訓だと語った。


  米国ワシントンでは、市民団体でFTAを長く研究してきたテドゥ・ターカーに会った。 彼は米国が韓国とのFTAを望む真の理由は、将来ある時点で米国を凌駕する中国に対する政治的包囲のための布石であって、絶対韓国のための決定ではないと主張し、韓-米FTA締結後米国は韓国を完全に隷属させた後、また日本をFTAで縛ることによって東アジアで中国の浮上を阻む決定的な防波堤をたてることになると話した。 そして彼は、結局投票権を持つ韓国国民が、米国の植民地化を通じて中国との対決構図で犠牲になるのか、それとも米国と中国の間で適切な均衡を維持して利益を得るのかを、自ら決めなければなければならないと強調した。


  最後に会った米国労総(AFL-CIO)の国際局長シア・リーは、米国の労働者にはプラスになる韓-米FTAになぜ反対するのかという愚かな質問に対し、米国労総はすべてのFTAに反対すると断固とした声で答えた。 すなわちFTAはすべて、ごく少数の支配層にのみ利益になるだけで民衆の生活は破壊するものであるから、どんな労働組合でもすべてのFTAに反対するのが労組本来の立場とならなければならないと強調した。


  5年前を振り返ってみて、ふと1993年にナフタが締結された当時、米国のある講義室で聞いた内容が思い出された。 人が良いことで有名だったそのマクロ経済学教授はこのように力説した。 「世界のすべての国が不公正な関税の壁を積んでいる。 ナフタは世界最高の米国の競争力をありのままに見せることになろう。今後米国はすべての国とFTAを締結しなければならない。 そうなれば皆さんの働き口は無尽蔵に増えるだろう。 これが米国の力だ。」


  私にもAの成績をくれ平素から称賛も惜しまなかった彼は、その大事な弟子とその子孫が植民地韓国でどんな苦痛を味わうことになるかについてまでは、考えが及ばなかったのだろう。人の良い彼でもだ。


チェ・ヨンヒョク全国電力労働組合対外協力室長


原文: 訳A.K