原文入力:2009-03-04午後07:12:28
イ・ウォンジェ記者
←イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長
2008年4分期に1億2千万ドル(約1800億ウォン)の営業利益を出した企業がある。リーマンブラザーズの破産に始まり金融市場が動揺し市場参加者の皆が恐慌状態に陥っていた時期だった。そのような点を考慮すれば真に経営が上手だったとほめてあげたくなるほどだ。ところが、その企業が先日、職員7千人を減員すると発表した。売り場も300ヶも閉鎖するという。スターバックスの話だ。
なぜ利益を出している企業でこうした大規模構造調整を発表したのだろうか? それはまさに株価で経営者を評価するウォールストリートの報奨システムのためだ。
スターバックスが提示した構造調整理由は常識人が聞くとよく理解できない。4分期の純利益が前年同期の70%に達し得なかったとのことだ。何よりも証券会社アナリストらの予測より低い利益を記録したことが致命的だったという。
しかしスターバックスの経営者の立場からは非常に合理的だ。人々は企業を株価で評価する。株価は市場が予測する利益に基づいてすでに形成されている。だからいくら経営が上手で利益を多く出しても、その利益の大きさが市場の期待値に達し得ないならば株価は下がる。株価を下げた経営者に対して投資家と言論は無能だと非難する。これが積もれば経営者交替の理由となる。当然経営者は市場期待値より利益が出ない時、減員と費用節減計画案を発表する。ある社会の企業評価尺度はこのように重要だ。
昨年4分期韓国の主要企業が相変らず大きい利益を出したという消息を聞き、私の心がむしろひやりとした理由がここにある。彼らの中の一部はすでにスターバックスのように大規模構造調整を計画している。難しい地域の失業給与申請件数が昨年の10倍に跳ね上がり、中小企業と中産層は崩れていきつつある。ところが彼らは株主のために大規模利益を出した。そのような成果のおかげなのか、三星電子とLG電子の今年の株主総会には役員報酬限度引上げ案が上程されるという。私たちの社会はそのような企業に歓呼する。私たちの社会も企業もすでに世界経済を危機に追い詰めたウォールストリート式評価報奨システムに適応してしまったように見える。
企業が腕をまくりあげた‘ワークシェアリング’が心配になるのはこういう理由からだ。新入社員の賃金削減は利益を増やすことだから株主らは両手を挙げて歓迎する。しかしそうして生まれた資金を働き口創出に投じようとすれば、その株主は目をむくだろう。経営者がその株主を説得するのに要する努力を評価するシステムはまだ私たちにはない。誰も働き口創出個数を企業評価尺度にしていないという話だ。‘ワークシェアリング’はただの‘人減らし’になってしまうかもしれない。
ついでに富裕層の所得を大幅に増やしてでも達成できる国内総生産(GDP)成長率を政府経済政策評価尺度とする慣行も当分忘れよう。今は難しい人々がさらに難しくならないように努力しなければならない時だ。富裕層の所得を更に増やしても達成できる国内総生産の代わりに、所得5分位倍率や1人当り国民所得中央値のように相対的に分配状態を反映する指標を尺度としよう。
失業者が急増している国で、利益出している企業が人を切って社会貢献を減らしている状況はブラックコメディだ。経済危機の陰が濃厚に垂れこめた現在からただ1年だけでも私たち皆の胸中にある企業評価基準を変えてみよう。純利益を忘れ働き口個数と社会責任経営成果を企業と経営者の評価基準として見なそう。
イ・ウォンジェ ハンギョレ経済研究所長timelast@hani.co.kr