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[朴露子ハンギョレブログより] 階級政党の大衆性

http://blog.hani.co.kr/gategateparagate/37551

原文入力:2011/09/08 22:16(3432字)

朴露子(バク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学


2011年9月4日に開かれた進歩新党の第3次臨時代議員大会は民主労働党との統合案を否決させました。否決はされたものの、賛成票が54%に達したことからすると、この問題で党はほぼ半々に分かれているようです。事実、短期的な政治工学(?)のレベル、すなわち差し迫ってきた様々な選挙への対応というレベルにおいては統合が有意義かもしれませんが、中長期的に見れば統合には潜在的な利点に劣らず色々と憂慮すべき部分も出てくるのではないか、と心配せざるをえませんでした。階級的に覚醒した進歩新党の熱誠党員たちが民労党員たちのあらゆる「民主大連合」論の虚像・錯覚などの実体を熱い議論を交わす中で明らかにし、民労党を「左へ」牽引することが期待できる利点であるとすれば、やや時代遅れの「民族的」感受性とブルジョア主流政治と区別の付きにくい「民主大連合」、「野圏団結」言説に安住してしまった民労党の中で進歩新党出身の階級論者たちが単なる -マイノリティ- に転落し、主要事項の決定に影響を与え得ない危険も厳然として存在しています。また、民労党員の多数が労働者や学生、周辺的なインテリなどである点に注目し、その党員たちを左派の階級的な立場に引き入れるためにも統合を推進する必要があるという論理にかなりの真実性は含まれているものの、民労党の指導部が遂に国民参与党などの新自由主義的な勢力との野合への夢を断固として捨てることのできない状況では、階級的な本質に基づいた原則ある統合を推進することは客観的に極めて難しくなります。とにかく、党の下した決定は決定であるだけに、おそらくしばらくは難しい独自的な生存への道を歩みながら、場合によっては民労党などと選挙連帯ないし選挙協力などをすることになるでしょう。その独自的な生存への道中で、再び統合の論議が起き民労党と窮極的に一つになるか否かに関わらず、韓国的な条件下で階級的な左派政党を建設する過程で起きうる様々な問題について一度考えてみた方がいいのではないかと思います。

一般に原理原則で言えば、階級的な左派政党にとって最も危険なのは、一面においては過度の議会主義など(昔風にいえば)右寄りの日和見主義であり、他面においては小児病的な極左主義、すなわち自閉的な「地下サークル」の雰囲気です。勉強サークルなどが不必要だということでは決してなく(当然必要です!特に大学で)大衆政党と「サークル」は少し異ならなければならないということです。これは原則論的な話になりますが、現今の国内情勢においては私は率直に言って後者の可能性、すなわち大衆的でなければならなかった政党が間違って「運動圏時代の後継者たちのサークル」に転落してしまう可能性を本気で警戒したいと思います。これを特に警戒する理由は、韓国的な環境で左派の階級政党はまだ大衆化しにくく、大衆化できない以上、過度の議会主義などといった右寄りの日和見主義に堕してしまう恐れもほとんどないと予想するからです。それなら、左派政党の大衆化はどうして難しいのでしょうか。この部分を理解するためには、韓国型資本主義の現在的な特徴を少し確かめなければなりません。


はたから見れば、大韓民国は単なる一つの大きな搾取型輸出工場に見えます。資産でいえば、国内総生産の約75%を占める三星・現代などの輸出本位の10大財閥たちが彼らの傀儡に近い政府の財政的な支援を勝手に利(悪)用し、非正規雇用や外注、下請企業などの労働者たちの汗と血を悪質的に絞り、世界貿易構図に常に柔軟に自分たちをはめ込めることが韓国資本主義の生存と成長の秘訣です。現状は、彼らが一面においてはITの波にうまく乗った側面もあり、また一面においては「中国復興」という巨大な世界史的な流れにそれなりにうまく便乗した側面もあります。いま韓国の成長率における対中国貿易の寄与度は約52%、すなわち成長率の半分くらいは中間材を中心とする中国への輸出の増加のおかげです。もちろん、「携帯電話」と「中国」による韓国資本主義の生存戦略はその限界が明らかです。IT部門で中国の企業に追い抜かれるのは時間の問題であり、輸出中心の中国の急成長も永遠ではまったくないからです。しかし、今後対外的な悪材により躓く確率は極めて高いとはいうものの、まだ(株)韓国は国家債務比率35%などで「健全なマクロ経済数値」を誇っています(参考までにアメリカの国家債務比率は94%くらいです)。


もちろん知る人は皆知っていますが、韓国という搾取工場の「巡航」の対価は雇用不安に震えながら相対的な低賃金で2交代制のような殺人的な長時間・高強度の労働をしなければならない多くの労働者たちの想像以上の苦痛です。国家の立場からは「成功」に見えるかもしれませんが、労働者の立場からは大韓民国という搾取工場は単なる無間地獄にすぎません。しかし、問題はその殺人的な搾取の効果で未だに韓国の貿易黒字幅が拡大し成長率が欧米圏の平均より2~3倍高く、国家債務比率が欧米圏平均より3倍低いなど「良好な成長」がしばらく続く限り、この搾取工場の支配人たちには「下々の者ども」に僅かな譲歩をする余裕がそれでも残っているのです。お世辞のレベルではありますが、朴槿惠(パク・クネ)姫様さえも「福祉増進計画」を語り、鄭斗彦(チョン・ドゥオン)などの一部ハンナラ党議員たちが「普遍的な福祉」を真剣に議論するという現象を、まさに以上のような観点から捉えることができます。もちろん、「福祉国家」まで取り上げる一部の盧武鉉追従勢力などや ハンナラ党の少壮派議員たちにも真の意味での「普遍的な福祉」を実現する意志も底力もありません。本当にヨーロッパ式の普遍的な福祉になればこの搾取工場の利潤率が落ちるため、絶対にできないのです。しかし「普遍的な福祉」まで行かなくても、彼らが例えば大学生の授業料支援に投入する金額を増やしたり基礎生活保護対象者に支給される金額を増やしたり出産奨励金を増やすなど、「ご機嫌取り福祉政策」をある程度推進する可能性は高いです。そのようになれば、結局多くの大衆 ―特に地域主義の枠組みにまだ捕らわれている幾多の嶺南、湖南の人々― は、ハンナラ党や民主党、国民参与党の示す様々な色の「にんじん」に現を抜かし、「民生、庶民、福祉」レトリックの捕虜に陥る確率も高くなります。そうなれば、左翼的な階級政党が入り込む余地は少なくなります。


簡単にいえば、まだ輸出本位の経済が最終の危機に差し掛かっておらず、それなりに(無惨な搾取をしながら)「巡航」するうちは支配者たちの主流政党などが様々な「にんじん」を差し出し、多くの労働者、学生をも成功的に捕らえる可能性が高く、そのような状況では左翼政党の大衆化は難しいかもしれません。大衆からはいつも隔離されているため、自閉的な「サークル」のような形態に戻りたい誘惑も大きいでしょう。にもかかわらず、その誘惑に負けずに常に大衆に出会うために骨の折れる努力を重ねることは唯一の正しい道だと思います。特に非正規雇用闘争には常に介入し、賃金未払いや人身支配式の殺人的な搾取に苦しんでいる「バイト」、青年労働者たちの味方になり、大型マートの商圏侵害でつぶれたり自殺の危機に追いやられている零細商人たちのそばにいることは最も重要でしょう。既に階級的に覚醒した少数ではなく広範な被害大衆たちが左翼政党に集まらなければその政党に未来はありません。


この搾取工場の勝利の栄光は永遠でもなければ安定的でもありません。世界規模の長期的な大恐慌の避けられない論理に従い、(株)韓国も明らかにそう遠くない未来に大きな危機にぶつかるはずですが、その時に大々的な階級的覚醒と抵抗が起こりうるでしょう。こうした「革命的な契機」に遭遇するために、左翼政党が既に用意されていなければその抵抗はうまく組職されませんし、結局は韓国の支配者たちによるすべての被害者たちに良い結実をもたらすこともできないでしょう。


原文: 訳J.S