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[イ・ジョンソク コラム] 開城(ケソン)工業団地と踏十里(タプシムニ)の縫製工場

原文入力:2011-01-31午後06:47:56(1985字)
イ・ジョンソク

私には、一生昼と夜が反対の生活をしながら南大門(ナムデムン)市場で服の商売をしてきた姉がいる。 南大門市場の売り場はどこも狭くて窮屈だが、かつては香港やドイツからもバイヤーが集まってきて「輸出の担い手」としての役割をしっかりと果たしていた時期もある。 その当時は多くの衣料品店が縫製工場を所有して自分の服を作っていた。 しかし時代が変わり、低賃金に依存していた大部分の縫製工場は収支を合わせることができなくなって止めた。 義兄がやっていた工場も結局廃業した。

しかし今でも、優秀なデザインの腕と手先の器用さを持った多くの経営者が、成功を夢見て高賃金の中でも自分の品物を作りながら悪戦苦闘している。 私は統一部長官時代、東大門(トンデムン)市場に店を持つ人が運営する踏十里(タプシムニ)の縫製工場を訪ねたことがある。 住宅街の2階建ての家を借り切ったその工場は資材と完成品と人でごった返していたが、一回り見て出てきた私に、彼は高賃金問題の解決と十分な空間を備えた工場がどうしても必要だと訴えた。 こういう切迫した悩みは大邱(テグ)を中心地とする染色産業やメガネ製造業でも、釜山(プサン)を代表する履き物産業でも全く同じだった。

開城(ケソン)工業団地は南北関係の発展や休戦ラインを事実上後退させるという安保効果だけを狙ったものではなく、南側の限界に達した労働集約的産業の活路として開発された。 北のためでなく我々の国家と企業の利益を増大させるために北を説得して作ったのだ。 しかしこの工団が天安号事件以後「国民保護」なる名目で当局の強い統制を受け、深刻な危機に直面している。

先日開城工業団地に勤める関係者に会った。十分わかってはいたけれども、入居企業の状況はどうかと尋ねてみた。すると意外にも、困難な中でも大部分が利益を上げているという返答だった。 新規投資は中断されたが、122の企業が稼動中で4万6000人余りの北の労働者が普段と同じく働いているという。 踏十里の縫製工場の主人があれほど願っていた300~400坪のアパート型工場も完工して31の業者が入居しており、大部分が「けっこううまくいっている」 と言った。 2007年末に稼動企業が65、北の労働者が2万3000人であったから、工団拡大を抑制してきた現政権3年の間に、驚いたことには規模が2倍に拡大されたのだ。 開城工業団地が韓国企業にとって挑戦してみるだけの価値があることを示していると言えよう。

開城工業団地が韓国経済に良い影響を及ぼしたという実証調査結果も出ている。 産業立地研究所が知識経済部に提出した委託研究報告書を見れば、2005年から2010年9月まで開城工業団地が韓国経済に及ぼした生産誘発効果が5兆2668億ウォンであり、付加価値誘発効果も1兆5275億ウォンだったという。 2万7000名余りの就業も誘発したという。 実情がこうであるにも拘わらず、“ビジネス フレンドリー”を掲げる政府が統制政策でもって開城(ケソン)工業団地を苦しめているということは実に逆説的だ。
開城工業団地進出企業が政府に望むことはただ一つ。 常駐人員を従来レベルに増やし、物資と人の通行を以前のように自由にしてくれということだ。 彼らは戦争寸前のところまで行った昨年も北側からの脅威を受けたことはないと言い、常駐人員を900人から500人に減らせばなぜ“国民保護”になるのか、理解できずにいる。 国民の安全が本当に心配な状況ならばいっそのこと、その根拠を提示して工団を撤収する方がましだ。 そうでないならば、何かにつけ「北の人質になる可能性」を云々しては不安をあおり挑発を誘導するような発言をして、開城工業団地の首を締めてはならない。 よっぽどでなければ、入居企業家の口から「政府が開城工業団地に関して、良くない方向に追い込んでいきたがっているようだ」といった憂慮が公けに吐露されなどしないはずだ。

政府は開城(ケソン)工業団地の企業が北の企業でなく大韓民国の企業である事実を忘れているのではないだろうか。 今すぐ開城工業団地を拡大して新規投資を許容しろと要求しているわけでもない。工場が正常に稼動できるように統制だけでも解除してくれというのだ。 もうすぐ旧正月だ。 新年には開城工業団地が持つ現在的価値がまともに認識されて、国民の力でまた息を吹き返し入居企業家が明るく笑える日が来ることを願う。

前統一部長官

原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/461525.html 訳A.K