原文入力:2009-09-20午後09:36:32
←チョ・グク ソウル大法学専門大学院教授
韓国の代表的市民運動家パク・ウォンスン氏が国家情報院から2億ウォンの損害賠償請求訴訟を提起された。パク氏は我が国の代表的な進歩的市民団体の参加連帯をリードした人で、参加連帯を離れた後は美しい財団,美しい店,希望製作所など脱政治的市民運動の領域を切り開いている。イ・ミョンバク大統領もソウル市長時期の4年、月給全額を美しい財団に寄付した経緯がある。
国家情報院がパク氏個人と周辺を査察し後援企業を圧迫しているという査察疑惑が出てきた時、国家がまさにしなければならないことはパク氏に訴訟をかけることではなく、国家情報院法に正面から違反するこのような不法行為が本当にあったのか監察し、その真相を明らかにすることだ。大統領府と国家情報院はこういう調査をどれくらい徹底的に遂行したのか気になる。一方、パク氏が一定の根拠を持って国家情報院の査察疑惑を提起したことが、国家の名誉を傷つけた不法行為であるという主張は法理的に妥当でない。民主主義国家は市民の表現の自由行使を通じ国家の名誉が毀損されることを初めから予定している。もし政府批判を理由に市民に損害賠償を請求することが可能ならば、表現の自由は紙くず同然になってしまうためだ。この点からこのような訴訟自体が大韓民国の恥さらしを招く‘名誉毀損’であり、裁判所はこの訴えを却下するべきだと見る。
ところで、今になって‘原告大韓民国’はなぜ‘被告パク・ウォンスン’に民事訴訟という無理手を用いたのだろうか? イ・ミョンバク大統領の長年にわたる実力者側近であるウォン・セフン氏が首長である国家情報院がパク氏をターゲットに訴訟を提起する時、大統領府と相談がなかったなどということはありえないのに、イ大統領はなぜこの訴訟を黙認したのだろうか? そこには非法律的な判断があったものと推定する。
先ず、パク・ウォンスン氏が適任者不在に苦しんでいる野党圏の新しい指導者に浮上したためだ。彼は全国的・大衆的人望,政策的代案提示能力,疎通と組織能力などを兼ね備えている。彼がより大きくなる前に打っておこうという判断を下したのだろう。それでいかなる方式ででも彼の粗捜しをしたり萎縮させたりして懲らしめようと決心したのだろう。
二番目、パク氏以外でも多くの政府批判者を恐れさせ反駁するためだ。刑事処罰を受ける犯罪で拘束捜査するのとは異なり、政府批判をすれば月給も預金も家をも奪うとおどかすことだ。近ごろミネルバ判決,チョン・ヨンジュ<韓国放送>社長判決などの刑事裁判で相次ぎ無罪が出てきて、これからは民事裁判を活用するという意志表明だ。
三番目、市民社会団体の後援者、特に企業らに警告を送るためだ。今回の訴訟提起で政府はパク氏など市民社会活動家と団体は政府の‘敵’であることを天下に公表した。今や政府が企業に直接接触しなくとも企業らは政府の意思が何かを明確に知ることになった。今後、企業は政府批判指向が少しでもある団体後援を極度に敬遠することになるだろう。
こういう理由のために今回の訴訟が裁判所での審理を経て、政府が敗訴しても政府は一向に構わないだろう。むしろ所期の成果を上げたとして会心の笑みを浮かべるだろう。以上の現実はイ・ミョンバク印の法治の実体が何なのかをよく見せてくれる。民主主義国家で法治とは国家権力とその担当者らが憲法と法律の要請を守らなければならないという点を強調する原理だ。ところが、現政権の法治論は市民に実定法に対する無条件服従を要求し、市民の憲法上の基本権行使すら法で牽制・統制し実定法からのささいな逸脱も法を使って鎮圧するということだ。しかし、こういうわい曲された法治に基づく統治は、長くは続かないということが歴史の経験であり教訓だ。
チョ・グク ソウル大法学専門大学院教授
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/377761.html 訳J.S