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[社説]大きな足跡残して発たれた我らが時代の巨人

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/371944.html原文入力:2009-08-18午後08:55:59
金大中前大統領がとうとう私たちのそばを去られた。彼が病魔とかろうじて戦っている時から、いつかはこういう日が来るものと覚悟はしていたが、その日はあまりに早くきた。病床から早く回復されこの混迷している時代の灯として残って欲しいという切実な祈願ももうかなわぬこととなった。いまだこの国と民族は、彼を切実に必要としているのに、彼は帰ってはこられない道に永遠に発たれてしまった。盧武鉉前大統領に続き、わずか何ヶ月間に前職大統領を二人までなくし、残っている私たちの悲痛な心は形容しようもない。

故人は私たちの現代史にそびえ立った巨人だった。彼の生涯はこの土地の民主主義と人権,平和と統一に向けた不退転の精進だった。時には民主化闘士として、時には野党代表として、時には大統領として、故人の名前の前についた修飾語は随時変わったが、彼が指向した価値と精神は終始一貫していた。この過程で成功もあったし失敗もあった。自ら試行錯誤を体験することもした。だが数多くの歴史の屈曲と渦,苦難と光栄の中でも彼は揺れることなく同じ道を歩いた稀有な政治家だった。

彼は当代の時流を越え歴史を幅広く眺望できる指導者だった。時代に一歩先立って、民族の未来と進む道を絶えず研究した指導者でもあった。在野あるいは野党時期から彼は忍苦の歳月に耐え、自身の政策構想を整えた。そして大統領になった後、これを実現しようと努めた。彼によって私たちの社会の民主主義はより成熟したし、人権と福祉の地平は一層広くなった。半世紀の間凍りついていた南北間の氷塊は彼の時代になって初めて溶け始めた。2000年平壌で故人と金正日国防委員長が手を取り合い韓民族の平和な未来を約した場面は、私たちの脳裏から永遠に忘れられない感動の瞬間だった。それは対決ではない和解,反目でない協力のみが民族の生きる道という彼の一貫した意志と信念がおさめた貴重な結実だった。南北はこの首脳会談を基点に韓半島の新しい歴史を書き始めた。

彼は誰よりも社会の低辺、無念で恨がこびりついた人々に向けて深い関心と愛情を注いだ。私たちの社会が疎外された隣人をより一層配慮する法と制度を発展させていくことになったのも彼に力づけられた面が大きい。疑問史真相究明委員会と国家人権委員会の設置、民主化運動関連者の名誉回復および補償などに関する法律制定、国民基礎生活保障法制定、女性部設置など変化する時代の要求に応じる政策は私たちの貴重な資産として記録されるだろう。

彼の熱い情熱は人生が終わる瞬間までも冷める気配を見せなかった。むしろ最後のロウソクの炎のようにより一層強い光を放った。一生を献身したこの土地の民主主義が再び脅威を受け、南北関係が前例ない危機に駆け上がり、彼は老いて病魔におかされたからだをおして再度大衆の前に立った。そして丁寧に訴えた。民主主義を回復し、庶民経済を興し南北関係を改善しようと。“行動しない良心は悪の側”とまでして市民たちの覚醒を促した。他界する直前に準備した最後の演説の主題も南北関係の平和的解決問題だった。彼はヨーロッパ連合商工会議所招請演説文で「バラク・オバマ米国大統領は北韓との敵対関係を終息させる勇気ある決断を下さなければならない」と促した。病魔に苦しめられながらも民主主義の回復,南北関係の復元のために最も激しく戦った人は他でもない故人だった。

彼とてももちろん完全な人間でも傷がない政治家でもない。彼の長い間の政治経歴には多くの暗い影も垂れこめている。彼は私たちの社会の慢性的地域主義の犠牲者でもあるが、同時に原因提供者という批判から自由にもなれない。派閥政治,ボス政治,帝王的政党運営で政治文化の発展を遅滞させたという指摘も避けられない。大統領任期末には二人の子息と側近らの不正で道徳性に打撃を受けた。生前、故人は称賛に劣らず各種批判に苦しめられた。彼は守旧 保守勢力の共通した標的だった。これらの執拗な攻撃は彼の病状が重くなる直前までも続いた。米国時事週刊誌<ニューズウイーク>東京特派員を務めた言論人バーナード クリシャーはこのように話した。「金大中氏が亡くなったら韓国人はその時になって彼に本当に大きな借金をしているという事実を悟ることになるだろう。」彼の人生と業績に対する真の評価はもう歴史の持分となった。

彼はもう旅立たれた。民主主義がより一層咲き誇り、南北間に平和が川の水のように流れる姿を見届けられないまま永遠に去られた。彼が成し遂げられずに残して逝かれた夢と希望を実現することは残った人々に渡された。彼は病院に移される前このように尋ねた。「この国の民主主義と庶民経済,南北関係が全て危機です。もう私は老いたし、力もありません。どうしたらいいですか?」今やこの問いに答えなければならないのはまさに我ら自らだ。

金大中前大統領の逝去を今一度心の底から深く哀悼し故人の冥福を手を合わせて祈る。

原文: 訳J.S