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[シンクタンク広場] 「平和-経済-安保が好循環する南北関係に進むべき」

原文入力:2012/07/10 22:29(4295字)

←イ・ジョンソク前統一部長官

インタビュー/イ・ジョンソク前統一部長官

 来年の新政府の対北政策はどうあるべきか。 イ・ミョンバク政府で破綻した南北関係を復元するための政策的代案はどんなものがあるだろうか。

 進歩志向の南北関係専門家たちの研究会である〔韓半島平和フォーラム〕がこの問いに答えるために、先月26日≪2013年新政府の統一・外交・安保分野のビジョンと課題≫(ビジョンと課題)を出した。 年末の大統領選挙を狙った政策的提言を盛った内容だ。 統一・外交・安保分野で国内の研究団体が集団知性を発揮し、潜在的大統領選候補が公約に参照できるような政策資料集を出したのは前例のないことだ。

 〔韓半島平和フォーラム〕はイ・ミョンバク政府スタートの翌年である2009年9月、韓半島の平和と南北共同繁栄のための政策的代案摸索を旗じるしにスタートした民間フォーラムだ。 イム・ドンウォン前統一部長官、ペク・ナクチョン ソウル大名誉教授が共同代表を受け持ちイ・ジョンソク前統一部長官、ムン・ジョンイン延世(ヨンセ)大教授などが参加している。 “国民の政府”と“参加政府”10年間の対北政策を主導した人々と進歩的学者、市民社会の活動家などが一緒になっている。 4大目標と10大課題を盛り込んだ今回の≪ビジョンと課題≫の作業には専門家20人余りが4か月間にわたり討論と議論を繰り返したという。

 今回の作業に主導的に参加したイ・ジョンソク前長官と、9日ソウルのある飲食店で会った。 イ長官は「今回の≪ビジョンと課題」は“国民の政府”と“参加政府”10年の経験、イ・ミョンバク政府4年半の失敗から得た教訓、そして最近変化した情勢などを全部反映させた作業」として「私たちの考えに同意する候補者ならば誰でも公約と政策に用いることが出来るように、内容を全部公開した」と語った。

進歩志向の南北関係専門家の集まり
〔韓半島平和フォーラム〕
「新政府のビジョンと課題」出す
「包容政策の進化、包容政策2.0だ」

-今回の作業の背景は?

「私たちが“国民の政府”“参加政府”の10年の経験から多くの蓄積をし、イ・ミョンバク政府の対北政策4年半の失敗から教訓も得たので、大統領選挙を控えてこれらを総合的に整理し判断して公共財を作り出そう、という考えだった。」

-どうやら政府の対北政策に対する批判が出発点になったようだが。

「当初フォーラムを始めたのは、この政府の統一・外交・安保分野の退行現象に直面し、このままではいけないと考えたためだ。 また、何でもうまくいかないことがありさえすれば、みな包容政策のせいにしている。 それで2009年夏フォーラムを作った。 その年はノ・ムヒョン大統領とキム・デジュン大統領が相次いで逝去した年でもある。」

-報告書の内容を紹介してほしい。

「報告書を作るにあたって、過去私たちが10年間推進した包容政策を基本的に参照した。 しかし包容政策を執行しながら不十分だったと判断された点などを補完し、また、その間の情勢変化も反映させた。 そこにイ・ミョンバク政府の退行から学んだ教訓も参照すべきことは参照した。 包容政策の進化、包容政策2.0だ。

最も重要なのが、南北がこれからは平和と経済、安保が好循環する構造に進むべきだということだ。 南北緊張が高まり世界経済が危機に陥った。 北-中国の経済協力深化で対北圧迫政策は通じなくなった。 このような状況を考慮して平和と経済、安保の好循環構造という概念に着眼した。 既存の開城(ケソン)工業団地を拡大し、金剛山(クムガンサン)を南の雪岳山(ソラクサン)など東海岸地域と連係させて国際地に作ろうということだ。 また、西海(ソヘ)平和協力地帯を設けて高速成長する中国東部海岸と結び付け、黄海経済圏を作ろうということだ。」

-南北首脳会談定例化を主張しているが。

「新政府スタート初年度である2013年首脳会談を推進し、それから1年1回と定例化するのだ。 首脳会談が定例化されればその下に各級会談が定例化される。 そんなことが南北関係を発展させ、南北連合へと進む通路になることができる。」

「首脳会談が定例化されれば
その下の各級会談も定例化される
そうしたことが南北関係発展させ
南北連合への通路となり得る」

-平和と経済、安保の好循環は以前も言っていたことではないか?

「その時とは違う。 ノ・ムヒョン政府スタート期の2002年には韓半島平和定着を掲げた。 経済と平和をこれほどまで直接連係させてはいない。 現在の話は、平和と安保と経済が直接連結されているという概念だ。」

-以前の包容政策から進化したものが他にもあるとしたら、何か?

「環境生態問題がある。 例えば漢江(ハンガン)骨材採取を推進したことがある。 南北間の軍事葛藤を防止できるという側面からそのような案を出した。 しかしこれからは持続可能な韓半島という観点で環境生態も考慮しなければならない。

北の人権問題も補完した。 私たちの考えは人権と人道主義に包括的に接近するということだ。 それで国連の北に対する人権決議案にも賛成しながら、もちろん北は内政干渉と見るから慎重にしようということであり、同時に北に対する人道的支援は情勢と関係なくやっていくということだ。」

-立場に変化が生じた理由は?

「基本的に関係が発展すれば相手方に要求できるものも多くなる。 完全に敵対関係ならば宣伝戦の観点で途方もなく要求することができる。 しかし関係を改善しなければならない鋭敏な時期には互いに気を付ける。 関係が深くなれば、今までできなかった話をすることもできるのでないか。 また、世界的に人権問題がますます重要になっていて、“国民の政府”“参加政府”でこの部分が不足していたという指摘も受けた。」

-均衡外交推進は“参加政府”の東北アジア均衡者論を連想させるが。

「過去に9・19共同声明が出てくる過程で私たちが米国も説得し北も説得し、中国とも協議した。 こういうのが均衡外交の一つの実例になり得る。 均衡外交と言えば変に見る向きもあるが、実際セヌリ党が1月に出した外交政策でも均衡外交を明らかにしている。」

-現政府の米国偏重外交に対する反省も盛られたものか?

「もちろんだ。 韓-米、韓-中両者の関係をバランスよく発展させなくてはいけない状況であり、これが均衡外交だ。 米国は同盟なのに何の均衡外交かと言うが、同盟は同盟で、同盟しながら多者協力もする。 こういうのがバランスを取ることだ。”

-国防改革には代替服務制が入っているが。

「実際、延坪島(ヨンピョンド)事態などは軍指揮部の問題であって兵力を増やして解決する問題ではない。 それから、良心的兵役拒否者に対しては代替服務制を適用しようということだ。」

「開城工業団地拡大し
金剛山を国際観光地に・・・
西海平和協力地帯設け
中国東部海岸と連結
黄海経済圏を作ろう」

-代替服務制は“参加政府”の時できなかったことではないか?

「ノ・ムヒョン大統領が実現させようと大いに悩んだ。 しかしできなかった。 今回私たちが出した案は、現役が18ヶ月服務するならば、それの2倍程度の服務期間を賦課したらどうかということだ。 そうすれば悪用するケースも減るだろう。」

-これまで統一安保問題と関連しては社会的葛藤が大きかったが?

「政策樹立段階から民間の参加を保障しなければならない。 最近起きた済州(チェジュ)の江亭基地建設もそうだし、参加政府の時議論になった平沢(ピョンテク)米軍移転も同じだ。 安保問題のために莫大な社会的葛藤を経たうえに途方もなく大きい社会的費用を支払った。 だから、国民が大きな関心を持っている事やそれと連結した安保政策は、すべて民官政策協議体を作ってそこで議論し、そこから出てきた結論には法的拘束力を付与するようにすべきだ。 そうすれば、かなりな部分のむだな葛藤を未然に防止することができる。」

-参加政府の時できなかったことだが。

「私たちが経験してみて、市民が政策決定過程に適切に参加してこそ、時間がかかっても、決定的に途方もない代価を支払うことを最小化できるということを悟るようになった。 実際、今のチェジュドの江亭基地にしても、安保利益と言うけれども、それよりずっと大きな社会的費用を支払っている。 平沢(ピョンテク)米国基地移転も、どれほど騒々しかったか。 あのとき国民の反発が起きないようにするために在韓米軍企画団まで構成したが、だめだった。 結局政策初期から、政策形成過程から民官協議体を作ってそこで問題を解いていかなければならない。」

-今回発表した内容に対して一部では「失敗した太陽政策を再び持ち出した」と批判しているが。

「基本的に事実関係の把握も違っており、包容政策を誤解した批判だ。 太陽政策は北の核問題を避けていると批判するが、これは事実でない。 参加政府の時だけでも、9・19共同声明のとき北を直接説得し米国や中国と協議するなど、重要な役割をしたというのはみな知られていることだ。 南北会談でも何回も核、ミサイル問題を取り上げて論じた。 ノ・ムヒョン大統領が平壌(ピョンヤン)を訪問した時キム・ジョンイル委員長に核問題を取り出したら、キム委員長がキム・ケグァン副首相を直接呼び出したではないか。 イ・ミョンバク政府こそ、北の核問題を解決すると口では騒いだが、北と核問題についてまともに議論でもしたことがあるか?

また、南北の西海上の軍事衝突も、太陽政策草創期に試行錯誤を体験しながら二度あったが、太陽政策が持続された参加政府に入っては一度も交戦や人命被害がなかった。 しかしイ・ミョンバク政府ではどうだったか。 延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件など緊張の高まりが日常化のような状況ではないか。 そのような論理は事実関係の巧妙な誤導だ。」

文パク・ピョンス先任記者suh@hani.co.kr
写真パク・チョンシク記者anaki@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/541900.html 訳A.K