原文入力:2012/04/25 19:25(1930字)
←クァク・ビョンチャン論説委員
ニコラ サルコジ フランス大統領の大衆をげん惑させた華麗な話術も命運が尽きた。数日前、大統領選挙1次投票でフランソワ オランド社会党候補に1位を譲り渡した。 決選投票の展望はさらに暗い。 金持ちの友人だけを集めて当選パーティーを開き、彼らのために税金を大幅に引き下げ、各種規制を解いてその餌を増やし、高所得高配当を許容し、友人が運営する民間放送に広告を集中的に与えたサルコジ。価値と理想と規範を無視する行動がどれ程になれば、黄緑がブロンドだという極右系列のマリーヌ・ル・ペンまでが背を向けたのだろうか。
彼に対して‘金持ちの大統領’というが、事実李明博大統領には及ばなかった。彼が低くした所得税最高税率(41%)は李大統領が守った35%よりはるかに高い。 財閥に路地商圏まで渡しはしなかったし、土建族の金儲けのために山川を掘り返すようなこともしなかった。 それでも彼の金持ちの友人はサルコジなき祖国を去ろうとするが、李大統領の友人にはそうするつもりが全くない。 人物さえ変われば指向が似ていても必死に支持する有権者がいて、投票率がひどく低いので、輩さえうまく取り締まれば勝利できると信じるからだ。
フランスの投票率が注目されるのはそのためだ。 1次投票率は何と79.47%であった。 韓国では15年前の15代大統領選挙の時に記録した数値だ。2007年大統領選挙の場合、フランス1次83.77%、2次83.97%であり、韓国は63.0%であった。 半月前の総選挙投票率はせいぜい54.3%に留まった。 有権者の半分余だけが投票して、有権者の30%にもならない得票で国民の代表が当選する勝負であるから、韓国の民主主義は危機だ。 それでも有権者のせいだけにすることはできない。 選択を疲れさせる制度を先に問題にしなければならない。
率直に言って19代総選挙の全過程を貫徹した野党圏連帯の動きはすばらしく乗り気だったとはいえない。もちろん政権審判論がすべての争点を取りまとめてしまった上に、1票差で勝っても1等だけが当選する現行小選挙区制下で、与党であれ野党であれ連帯・連合の努力は避け難い。しかし有権者の立場から見れば、たとえ政権審判論には同意しても望まない選択を強要される状況は嫌われる。 作家イ・ウェス氏が政権審判に同意しながらも、政見と暮らしと態度などを確かめてみて与党候補に対する支持意思を明らかにし袋叩きにあったことは今日の困った現実を象徴している。心にもない政党と候補者選択を強要される時、有権者が選択することは傍観や放棄だ。
事実、今回だけではなかった。 私たちの有権者は毎度困っていた。多様な指向性を満たす多様な路線の政党がなかった。 あったとしても院内進出の可能性が希薄だった。 このことが有権者を死票防止心理に捕縛されるようにした。 路線と政策、真正性が認められても有権者は死票防止心理のために巨大政党に手がかかった。
フランスの決選投票制が羨ましいと思うのはそのためだ。 1次投票で有権者は制約を受けずに選択できる。 これに伴い極右から極左まで多様な路線と政策の政党が競争できた。 その上、1次での得票は2次投票の時に政党間連立、すなわち政治的影響力の土台となるだけに有権者の投票意志をより一層刺激した。
民主主義は植生が多彩な庭園にも似ている。 市民は考えと志を同じくする政党を通じて自身の理想と価値の花を咲かせる。 多様な価値と理想が花が咲かせる時、民主主義の庭園はより一層豊かで美しくなる。 今や形式的民主主義が根をおろしたとは言うものの、今でも一種類の考えと、それと類似したものだけを強要する社会的抑圧は相変わらずだ。 こうして選挙制度は多様性の芽を摘んでしまう。
分断状況で社会的抑圧は一朝一夕には克服し難い。 しかし選挙制度は政界の意志により少なくとも決選投票制は導入できる。 第1党と第2党にとって有利なことで不利なことでもない。むしろ今のように全体有権者の30%余りの支持で大統領に当選して、1~2年過ぎれば国政の安定性が動揺することも防止できる。 連立と共同政権を誘導することにより、今のような独善と独走を牽制できる。 監獄の前に列をなした権力者は専制政権の必然的な副産物だ。
クァク・ビョンチャン論説委員 chankb@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/529943.html 訳J.S