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[社説]脱北者とその家族の安全が最優先だ

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/522615.html原文入力:2012/03/08 19:09 (1319字)

 国内にいるある脱北者が数日前 "(脱北者の北への強制送還に反対する)中国大使館前のデモは私たちが望むものではない"と話した。彼はまた"捕まった人々や韓国にいる家族についての情報公開は捕まった人々を北へ送還して処罰しろというのと同じだ"と付け加えた。自身の家族が中国当局に抑留されているというこの脱北者の主張が全面的に正しいとは限らない。しかし脱北者のために乗り出した人々の軽率な言動が逆に脱北者をより大きな危険に陥れているならば、これは必ず改めなくてはならない。
 何よりまず脱北者やその家族の個人情報が公開される場合、彼らは公には話がしにくいという、経験に基づいた脱北者の憂慮に耳を傾ける必要がある。デモがたとえ脱北者問題に対するさらに大きな関心を呼び起こして長期的に問題の根本的解決に役立つとしても、それによって被害にあうかも知れない当事者にとってそれは取り返しのつかない致命的な問題になり得る。だから彼らの声は切実だ。死線を越えてやってきたはずの彼らに、大義のために犠牲になれと求める権利は誰にもない。万一、政治的な思惑が含まれるとすれば、より一層容認できない。
 最近の中国大使館前のデモやハンガーストライキなどで脱北者問題に対する関心を国内外に呼び起こした一連の努力は評価されるべきだ。しかし脱北者が話すように、その潜在的な被害についても十分に考慮する必要がある。脱北者とその家族の個人情報の公開が、事態の具体性と深刻さをより一層高めたりする効果を呼ぶことも可能だろうが、より優先すべきは当事者の安全だ。生死までかかった、はなはだしい不利益が予想される問題の当事者の名前や年齢、出身地、家族関係、脱北の時期などは公開しないのが常識だ。いかなる目的のためでもその常識まで犯すのは無責任だ。仮名を使う時にも関連する状況を具体的に取り上げて説明するのはその危険性を事前に確認しなければならない。
 合わせて "韓国政府がもう少し早く乗り出していれば今回のことが騒がれずに捕えられている脱北者が解放されることもありえた"と言う脱北者の希望が込められた思いを外交通商部は心して聞くことを望む。韓-中および南北関係が脱北者問題の処理に大きな影響を及ぼすのが現実である以上、外交当局の主導的で積極的な対処が望まれる。代案もなしに声だけ張り上げるのは世論に便乗して自己責任をまぬがれようとする無責任な処置に映る。

原文: 訳T.W