これにもう一つ、理解しがたい人事が加わった。20日から開かれる公館長会議に参加するために帰国したハン・ドクス駐米大使が15日、大統領に会った後突然辞意を表明した。そのわけは、民間人のみ立候補の資格がある貿易協会の会長に就任させるための即興劇だった。後任の大使が決まらないまま、ハン大使が全く予想しないままに沸き起こった人事であることを考えると、何か急に差し迫った事情があるかのようだ。 しかし確実なのは、李政府があれほど重要性を強調してきた対米外交を考慮した人事ではない点だ。
大統領府の関係者の幹部は李大統領が韓-米自由貿易協定発効以後、実務的に後押ししなければならない貿易協会の幹部を探して見ると結果的にこのようになったと話した。納得しがたい説明だ。貿易協会の業務が自由貿易協定を後押しすることがすべてでもなかろうし、対米外交より貿易協会長を優先的に考えるという話は、常識はずれでおかしい。
それより民主統合党が韓-米自由貿易協定に対して大々的な攻勢をかけて、この問題が4・11総選挙で争点に浮び上がることに備えて‘FTA伝導師’と呼ばれるハン大使を緊急に選任したという分析のほうがより一層説得力がある。つまり盧武鉉政権の時の総理出身である彼を前面に出して同じ盧政権の総理出身であるハン・ミョンスク代表が率いる民主統合党の反FTA攻勢を封じ込めようという‘以夷制夷(夷をもって夷を制す)’戦略だ。ハン大使は‘私は自由貿易の拡大のために終始一貫努めてきた人間’と弁解するだろうが、性格の違う政権を出入りして勤める彼の派手な変身を見る目が澄むはずがない。
最も問題なのは李大統領の浅はかな認識だ。今をどんなときと考えているのだろう。来年から中国を率いて行く習近平副主席が米国を訪問して韓半島の問題をはじめとする世界の懸案についてさかんにうかがっているところだ。大使に特命を命じて両国が韓半島問題などと関連してどんな意見交換をするか綿密に観察して分析するのに全力を傾けろといってもたりないほどの状況である。小貪大失(小を貪って大を失う)の亡国的人事だと言わざるを得ない。
原文: 訳T.W