世界の基軸が揺り動く中で、朝鮮半島をめぐる周辺強国を始め、南と北も権力の交代期に入った。北では金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の突然の死亡以後、29才の青年、金正恩(キム・ジョンウン)を前面にした新しい体制が始まったし、われわれも4月の総選挙と12月の大統領選挙を控えている。世界全体が不安定に揺れ動く中で朝鮮半島はいっそう不安定な局面に陥った形だ。
しかし踏み出しもせず、おじけづく必要はない。古い秩序を廃止して新しい希望を作り出そうとする大きな歴史の流れが国内外ですでに始まっている。外ではジャスミン革命で火がついた中東の民主化の流れが厳しく続き、資本の貪欲と無分別な市場万能主義が産んだ1対99の社会を拒否する99%の怒りの叫び声が全世界に鳴り響いている。内でも2008年のろうそくデモから、市民候補をソウル市長に当選させる力を見せつけたアン・チョルス現象に至るまで、パラダイムの転換を求める民衆の動きがわき起こっている。絶対多数の民衆の暮らしに目をそむけ彼らの望みに耳をふさいだ既成権力に対抗して、民衆自らが歴史の進む方向を提示しているのだ。
99%に象徴される民衆の要求は分かりやすい。1%の資産家だけでなく持たなざる99%も主人として扱われる世の中に向かって進もうというものだ。死ぬほど働いても未来が約束されない不安な世の中、人間性を抹殺する極端な競争にせき立てられて疲れ果てる社会ではなく、最小限の安ぎが保障され、仲間と互いに痛みを癒し合える暖かい世の中を作ろうということだ。
そのような社会は民主化を完全に実現することだけでも近づいていける。李明博政府になって退行してきた政治的な民主主義を本来の姿に戻し、社会経済的な民主主義にまで成し遂げた時はじめて民主化は完成される。私たちの憲法も個人と企業の自由な経済活動を保障しながらも適正な所得分配を維持して、市場支配と経済力の乱用を防止して、経済主体間の調和を通した経済民主化を目標に掲げている。
経済民主化の条件は公正な競争と敗者復活を可能にする丈夫な社会安全網、そして労働者の権利の認定だ。しかし李明博政府は各種の便宜と不公正を許して経済の財閥集中と富の偏重を強め、労働の正当な代価、公正な分配および福祉拡充の要求はポピュリズムとして追いやった。
経済民主化など私たちの社会の全般的な民主化を遮る口実として使われてきたのが分断の現実だ。南側の既得階層は正当な憲法の権利の主張ですら誤った理念のものさしで判断して抑圧してきた。北が極端な抑圧体制を維持できることも、やはり分断に寄るところが大きい。まさにここに、南と北の民衆の犠牲を代価として保ってきた分断体制をやめ、朝鮮半島の平和を強く訴えなければならない理由がある。
だからこそ、金正恩体制の登場は分断にたよって歪曲してきた体制を変えるきっかけにしなければならない。北朝鮮が年末に李明博政府とは共生しないという声明を発表したと言って、性急にあきらめる必要はない。北の態度は、対北朝鮮和解政策を廃棄したまま北の自滅だけを待ってきた南側の政権のせいによるところが大きいが、過渡期にある北の体制の虚弱性のためでもある。今こそ忍耐を持って、北が互恵的な民族共栄の道に出てくることができる条件を用意しなければならない。状況悪化を防いで対話の糸口を作る責任は、北よりは成熟した南側にある。
99%が主人なる世の中はその99%が主人として責任を全うする時はじめて開かれる。2大選挙がある今年こそ新しい世の中の礎を築く好機だ。したがって今年主人なった者の重要な課題は冷静で理性で新しい世の中を作る政治勢力を見い出し、投票を通じて彼らに力を与えることでなければならない。これと共に新しく直接民主主義の道具として登場したソーシャルネットワークサービス(SNS)やその他の意思表現の手段を用いて私たちの社会と政治を平和と連帯の新しい時代に導くことが主人になった者の責務だ。99%の民衆の目覚めて参加することこそ新しい時代を開く力だ。
原文: 訳:T.W