米国がホルムズ海峡で進めていた「プロジェクト・フリーダム(解放プロジェクト)」を5日(現地時間)に一時中止したのは、イランとの交渉が進展したためだ、というのがドナルド・トランプ大統領による公式の説明だ。しかしこの措置は、米国が軍事力だけでホルムズ海峡の封鎖問題を解決するのは困難だという現実を認め、外交的な出口を模索しはじめたことを示すシグナルだとも読み取れる。マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ大統領が最終合意に先立ち、イランと了解覚書(MOU)を取り交わすことを望んでいると語った。
プロジェクト・フリーダムの中止は、ルビオ長官がホワイトハウスでのブリーフィングで「この作戦は87カ国から来たほぼ2万3000人にのぼる民間人を救出するための防衛作戦」だと述べて正当性を大々的に宣伝してから、わずか3時間あまりで決定された。このような急旋回の最大の原因は、作戦の実効性不足にあると指摘されている。ニューヨーク・タイムズによると、作戦開始後、米軍の支援を受けて海峡を抜けた商船はわずか3隻にすぎない。開戦前は一日あたり約130~140隻の商船が通過していたことと比べると、微々たる数だ。海運管理企業「アングロイースタン」のビヨン・ホイガードCEOはCNNとのインタビューで、「海峡の通行を再開するには、一方ではなく両方(米国とイラン)の同意が必要だ」と指摘した。
ルビオ長官も限界を否定していない。同長官はこの日のブリーフィングで、プロジェクト・フリーダムは「海峡問題全体を解決することはできないだろう」と述べた。米国は軍事力によって短期間で海峡を完全に開放できると考えたというより、通航支援を通じてイランに圧力をかけ、交渉力を確保しようとした、という主張だと解釈できる。
両国の交戦を招いたプロジェクト・フリーダムが急きょ中止されたことで、交渉が急速に進むかどうかが注目される。ルビオ長官はブリーフィングで、対イラン軍事作戦「壮大な怒り」は「作戦目標を達成した」として終了を宣言し、米国は今は海峡通航の回復と交渉に焦点を当てていると述べた。そして、トランプ大統領は直ちに最終合意文書を完成させるというより、今後の交渉の最重要課題とイランが交渉初期に譲歩すべき範囲を記した了解覚書(MOU)をまず実現したがっていると説明した。これは、完全な平和協定や核合意ではなく、ひとまず交渉の枠組みを作り、それを根拠に終戦宣言に向けて政治的な出口を探ろうという構想だと解釈しうる。交渉目標を大幅に引き下げたのだ。
14日から15日にかけて予定されているトランプ大統領の訪中と習近平主席との首脳会談も、変数として作用するとみられる。イランのアッバス・アラグチ外相は6日、北京を訪れ、中国の王毅外相と会談した。ブルームバーグは「トランプ大統領の訪中の約1週間前に会談が実現したことが重要だ」とし、「中国はイランの主要な友好国であり、イラン産原油の最大の購入国でもある。同時に、ホルムズ海峡の封鎖により世界の物流とエネルギー価格が動揺すると、大きな被害を受ける可能性がある輸出依存型経済」でもあると指摘した。ルビオ長官も中国に対し「イランに海峡封鎖をやめさせることこそ、中国の利益にもかなう」と述べ、役割を果たすよう求めた。
カギは、米国とイランが互いに体面を保ちうる最低限の合意の枠組みを作れるかどうかだ。米国は軍事作戦の成果を前面に掲げて「勝利」を主張しなければならず、イランはプロジェクト・フリーダムの中止などを自らの圧力の結果であると主張しなければならない。CNNは「次の段階は、トランプ大統領とイランが互いに体面を保つための出口を提供する意思があるかどうかにかかっている」との見通しを示した。