北朝鮮の言葉と行動には二面性があります。国外に向けたものであると同時に、北朝鮮住民に向けた国内用でもあります。北朝鮮の言葉や行動に一喜一憂する必要はありません。
とはいえ、北朝鮮当局者たちの粗野な言葉を聞いていると、思わずムッとしてしまいます。「気性が荒く貧しい兄弟の虚勢」と片付けるには、あまりにも荒々しい物言いです。米国には対話を懇願する一方、韓国に対しては冷淡さを貫いています。李在明(イ・ジェミョン)政権が発足してからもまったく変わっていません。
北朝鮮は一体なぜこのような行動を取るのでしょうか。数多くの理由があるでしょうが、筆者は韓国にも非があると思います。紛れもない主権国家であるにもかかわらず、韓国には戦時作戦統制権がありません。戦時作戦統制権は事実上、米国が持っています。戦争が勃発すると、韓国軍は米国に統制されます。これが北朝鮮が韓国を軽視し、米国のみを相手として認める理由です。なぜこうなってしまったのでしょうか。
1950年、北朝鮮が南侵してきた際、韓国は国力が弱く、戦うことができませんでした。李承晩(イ・スンマン)当時大統領はマッカーサー国連軍司令官に手紙を送り、「現在の敵対状態が続く間、一切の指揮権を移譲する」意向を示しました。軍事主権を手放したのです。マッカーサー司令官は「一切の指揮権」を「作戦指揮権」に修正して受け入れました。
1953年に休戦が成立しましたが、軍事主権は戻ってきませんでした。作戦指揮権は1954年に作戦統制権に縮小されました。国連軍司令部と韓米連合司令部が作戦統制権を行使しました。韓国の軍事主権を米国に委ねたわけです。
1961年のクーデターで政権を握った朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は、自主国防と作戦統制権の移管(返還)を推進しました。北朝鮮の武装スパイが侵入するなど、南北間の武力衝突が頻発していたためです。しかし、米国は作戦統制権を引き渡そうとしませんでした。
1987年の大統領選挙を控え、盧泰愚(ノ・テウ)候補は作戦権の移管を公約に掲げました。ちょうどその時、米国も1989年に議会で「ナン・ワーナー修正案(1989年に米上院のサミュエル・ナンとジョン・ワーナーによって提出された、在韓米軍を段階的に削減・再編する国防予算授権法の修正案)」を可決し、海外駐留米軍の削減に着手しました。冷戦終結の流れに乗り、作戦権の移管を進める絶好のチャンスでした。
ところが、米国は平時の作戦統制権のみ移管し、戦時の作戦統制権は移管しませんでした。作戦統制権を平時と戦時で分けることが果たして可能でしょうか。常識からかけ離れた話にもかかわらず、米国はこれを無理やり引き離しました。なぜなら、韓国軍首脳部と在韓米軍が反対したからです。
盧泰愚大統領は2011年に出版した回顧録で、戦時作戦統制権の移管が実現できなかったことについて、「これまでうまく機能してきたし、効果的だった韓米連合抑止防衛体制を揺るがす必要はないと判断した」など、あれこれと弁明を並べました。平時の作戦統制権は、金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の1994年12月1日に返還されました。
その後、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が再び戦時作戦権の移管に積極的に乗り出しました。盧大統領は2005年の国軍の日、「韓国軍は戦時作戦権の行使を通じて、名実ともに自主的な軍隊として生まれ変わるだろう」と述べました。そして米国に戦時作戦権の移管に関する協議を提案し、強く推し進めました。
韓米は2007年2月の国防相会談で、2012年4月17日に戦時作戦権を移管することで合意しました。快挙でした。民主党がもう一度政権を握っていたなら、戦時作戦権は予定通り移管されていたことでしょう。
しかし、李明博(イ・ミョンバク)大統領は大統領選挙前から、戦時作戦権の移管を見直す立場を示しました。米国が反対したにもかかわらず、李明博大統領は戦時作戦権の移管の延期を強行しました。結局、2010年6月の韓米首脳会談で、戦時作戦権の移管時期を2015年12月1日に延期しました。
朴槿恵(パク・クネ)大統領はさらに一歩踏み込みました。2014年10月の韓米年次安保協議会で、韓国軍が北朝鮮の核兵器および長距離ミサイルの脅威に対応できる能力を備えない限り、戦時作戦権を移管しないことを決めました。移管の「時期」が消え、「条件」だけが残ったのです。これにより、戦時作戦権の移管は事実上無期限に延期されました。
李明博・朴槿恵両大統領が戦時作戦権の移管に反対したのには、二つの理由がありました。一つ目は、必死になって移管に反対する国内の分断既得権勢力の圧力があったからです。二つ目は、米国の立場が変わったからです。冷戦終結期には戦時作戦権を韓国に移管しようとしましたが、時が経ち在韓米軍の性格が中国抑止へと変化するにつれ、戦時作戦権の移管を渋るようになったのです。いずれにせよ、李明博・朴槿恵大統領は、大韓民国の軍統帥権者でありながら戦時作戦権を取り戻すことを拒否した「奇妙な大統領」として歴史に名を残しました。
その後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は移管を推進しましたが、目立った成果は上げられませんでした。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領時代には、韓米同盟強化の気流に乗って、議論そのものが消えてしまいました。
李在明大統領はどうでしょうか。李在明大統領は、可能な限り早期に戦時作戦権を取り戻すべきという確固たる見解を持っています。2017年に民主党の大統領候補として出馬した際、『李在明、大韓民国よ革命せよ』という本を書いたことがあります。最近、出版社メディチメディアから改訂版が出ました。その中に、次のような内容があります。
「世界的に見ても、韓国より小さな国々でさえ作戦統制権を外国に委ねていない。作戦統制権の移管準備を迅速に終え、早期に返還手続きを進め、独立自主国家としての最低限の体裁を整えなければならない」
李在明大統領は2022年の大統領選挙で、「強固な韓米同盟を基盤に、戦時作戦統制権を任期内に取り戻す」という公約を掲げました。2025年の大統領選挙でも、「韓米同盟を基盤に全方位的な抑止能力を確保し、戦時作戦統制権の移管を推進する」と約束しました。
しかし、李在明大統領はまだ戦時作戦権の早期移管を米国に公式に提案していません。国家安保会議で数回、この問題を議論したにすぎません。李在明大統領は3月27日の全国主要指揮官会議で、「戦時作戦統制権の回復に向けて共に取り組む」よう指示しました。そして4月2日の米国上院議員と面会した際、次のように述べました。
「これまでの長い間、大韓民国も経済的、政治的に成長し発展しており、現在米国政府が計画している通り、朝鮮半島の防衛は韓国の力で自力で行うのが当然だと判断している。したがって、軍事費の増額だけでなく、戦時作戦権の移管を通じて米国の負担を軽減し、少なくとも朝鮮半島周辺においては、韓国が独自に北東アジア地域の安全と平和を守り抜くべきという考えを持っている」
李在明大統領の相次ぐ発言は、米国に戦時作戦権の早期移管を公式に提案する前の一種の「布石」とみられます。
李在明大統領は、約束は必ず守る人物です。KOSPI(韓国総合株価指数)5000を達成しました。ソウルのマンション価格を落ち着かせました。戦時作戦権も移管できるでしょうか。戦時作戦権を取り戻すためにはどうすればよいのでしょうか。専門家に助言を求めました。
「自主国防のために戦時作戦権の移管を急ぐべきだが、二つの難点がある。第一に、韓国軍が消極的だ。李在明大統領が軍を説得している。第二に、米国の立場が変わった。脱冷戦時代には『戦時作戦権を返す』と言っていたが、在韓米軍の性格が変わり、戦時作戦権をそのまま保持しようとしている。
韓国と米国が合意した戦時作戦権返還の『条件』というものがあまりにも包括的だ。それを満たそうとすれば、戦時作戦権の移管が大幅に遅れてしまう。戦時作戦権を早期に取り戻してこそ、北朝鮮との交渉力を確保できる。李在明大統領は『条件』に基づく方式よりも、改めて『時期』を定めて推進しようとしている。今年中に米国に公式に提案する計画だと聞いている。
韓国政府もしっかり準備しなければならない。尹錫悦前大統領の外患容疑を確実に片づけなければならない。偵察、監視、情報などの自立体制を構築すべきだ。移管費用も必要だ。国防改革も進めなければならない」 (キム・ヨンチョル元統一部長官)
「『条件』に基づく戦時作戦権移管の枠組みはかなり厄介だ。軍事的、実務的に任せておくのは望ましくない。戦時作戦権の移管は政治的決定であることを明確にしなければならない。米上院議員たちに伝える程度では不十分だ。
韓米首脳会談など、トップレベルで解決すべきだ。ワシントンを説得する必要がある。政治的なレベルで、大きな枠組みでの合意を米国から引き出さなければならない。米国のシンクタンクでは、戦時作戦権の移管が本当に李在明政権の優先課題なのかと質問する人たちもいる。李在明大統領は公に強く推進しなければならない。」(キム・ジョンソプ世宗研究所首席研究委員)
「李在明大統領の任期内に移管される可能性は非常に高い。国際情勢の激動や米国の略奪的な大国化は、自強を陣営やイデオロギーを超越した時代精神に据えている。戦時作戦権の移管に対する国民的な支持も非常に高い。盧武鉉政権時代とは異なり、保守派も強く反対することはできない。韓米間で戦時作戦権の移管をめぐる共通認識が生まれているのは、盧武鉉・ブッシュ政権以来初めてのことだ。
ただし、戦時作戦権の移管が即座に自主国防の実現を意味するわけではない。むしろ、韓国と朝鮮の軍拡競争を激化させ、敵対関係の固定化を招く可能性に警戒しなければならない。」(チョン・ウクシク平和ネットワーク代表)
まとめたいと思います。李在明大統領は2017年の大統領選に出馬した際、『李在明はやる』という本を出版しました。本のタイトル通り、李在明大統領は何かを成し遂げる人物です。今のように支持率が高い時に、重要な国政課題を推進すべきです。
戦時作戦権の移管はイデオロギーではありません。自主国防という大韓民国の国益を守るための実用主義です。李在明大統領が朴正煕・盧武鉉大統領の夢を実現しなければなりません。できるはずです。皆さんはどうお考えですか。