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「北朝鮮、韓国の戦車の北侵を懸念して防護壁構築」…李大統領の発言は本当か

登録:2025-12-20 10:27 修正:2025-12-20 10:42
昨年、北朝鮮軍が軍事境界線2キロメートル以北の北方限界線に沿って4カ所で高さ4~5メートルの対戦車防護壁を設置した。写真は南北をつなぐ江原道の東海線鉄道の脇に設置されている対戦車防護壁=合同参謀本部提供//ハンギョレ新聞社

 「北朝鮮は、もしかしたら南側が北侵してくるのではないか、という懸念のために三重の鉄柵を張っているという。戦車が攻め込むのではないかと懸念して平原地域に防護壁を築き、橋や道路を遮断しているという」

 李在明(イ・ジェミョン)大統領は19日、政府ソウル庁舎で開かれた外交部・統一部の業務報告でこう述べた。

 朝鮮戦争開戦初期、北朝鮮軍は「T34」戦車を先頭に侵攻し、韓国軍は為す術もなく押し込まれた。この時の経験は韓国社会に北朝鮮の戦車トラウマを深く刻んだ。「北朝鮮が虎視眈々と南侵の機会をうかがっている」と認識している人々にとって、「北朝鮮が韓国の北侵に備えて対戦車壁を築いている」というのは聞き慣れない話だ。

 北朝鮮はいつから、なぜ対戦車壁を築いているのか。合同参謀本部(合参)の説明によれば、北朝鮮は昨年4月から非武装地帯の北部地域で、対戦車障害物と推定される壁と有刺鉄線を設置し、地雷埋設に取り組んでいる。警戒視界確保のために樹木を除去する不毛地帯作業なども同時に進めている。

 合参関係者は昨年6月、「毎年春・秋には北朝鮮軍が非武装地帯で地雷埋設、不毛地作業を行ってきたが、今年は例年より作業の規模と投入兵力が拡大した」とし、「対戦車防護壁と推定される建造物の設置などは(これまでになかった)新たな動き」だと述べた。

 合参は、当時北朝鮮軍が軍事境界線の2キロメートル以北の北方限界線に沿って、4カ所で高さ4~5メートルの対戦車防護壁を設置していると説明した。戦車の移動を阻む防護壁の長さは数十メートルから数百メートルに及ぶという。

 昨年10月、国会の国防委員会所属のユ・ヨンウォン議員(国民の力)は、合参の説明と欧州の衛星企業「ICEYE(アイスアイ)」から入手した衛星写真を分析した結果、北朝鮮は軍事境界線の北側2キロメートル地点の4カ所に計10キロメートルの対戦車防護壁を築いたことが確認されたと述べた。

 防護壁の高さは約4~5メートルで、南側の面は幅2メートルのコンクリート壁の形態。コンクリート壁の後ろの北側は土を厚く積み上げて支える形態だと、ユ議員は説明した。

北朝鮮が築いた対戦車防護壁の現状=「国民の力」ユ・ヨンウォン議員室提供//ハンギョレ新聞社

 防護壁が設置された場所は、黄海道開城市(ケソンシ)の板門店(パンムンジョム)付近と京畿道の坡州市積城(パジュシ・チョクソン)の北側、江原道の平康(ピョンガン)と高城(コソン)の北側で、主に平野地帯や山が険しくない地域だ。朝鮮戦争当時、北朝鮮の南侵ルートであった開城-文山(ムンサン)の軸線、鉄原(チョルウォン)-議政府(ウィジョンブ)の軸線、高城(東海岸)の軸線と一致する。この3軸線は現在も朝鮮半島の戦争ルートだ。

 山が多い朝鮮半島の地形上、戦車部隊の機動は平地の多い開城-文山軸線、鉄原-議政府軸線で可能であり、開城-文山軸線がソウルに最も近い。朝鮮半島有事の際に戦車部隊が機動するルートとなる開城-文山軸線などに北朝鮮が対戦車壁を築いたことで、「北朝鮮は自縄自縛するようなものだが、南侵を断念したのではないか」との分析が出ていた。

 北朝鮮が軍事境界線以北の道路と橋を断絶したことも、こうした分析を後押ししている。北朝鮮が戦車を先頭に立てて南侵するなら、軍事境界線以北の橋を事前に補強しなければならない。北朝鮮の戦車1台の重量は30~50トン規模であるため、有事の際に円滑に戦車を機動させるには道路や河川を補修する必要があるからだ。朝鮮戦争の記録を見ると、北朝鮮は南侵開始前に38度線一帯の橋と道路の補強工事を行っている。

 北朝鮮の対戦車防護壁の建設、橋と道路の断絶は、「戦車を先頭に立てた北朝鮮の南侵」状況とは一致しない。

昨年、北朝鮮軍が東部戦線の鉄柵を補修している様子=合同参謀本部提供//ハンギョレ新聞社

 こうした流れの中で、「北朝鮮はむしろ南側の北侵の可能性を懸念しているのではないか」という話が出ているということだ。特に、北朝鮮が「南側の北進を阻止する戦車防護壁を築いている」という話が出る背景には、韓国の戦車戦力の成長と攻撃的な軍事作戦が挙げられる。2022年韓国国防白書によると、戦車保有台数は北朝鮮(約4300台)が韓国(約2200台)を上回るが、質的な戦力は韓国の方が高い。

 北朝鮮の主力の戦車は、大半が第2世代戦車(1940~1960年代に開発)に属し、あまつさえ第二次大戦時に開発された第1世代戦車までが含まれている。現在、北朝鮮の主力戦車とみなされているのは、1961年に生産されたソ連製「T62」系列の「天馬号」だ。韓国は第3世代(1960~1980年代開発)以降の戦車が戦車戦力全体の約80%を占める。

 韓国軍の戦車部隊の作戦も、北進を掲げるほどに攻撃的だ。特に陸軍第7軍団は、敬礼の掛け声が「北進」であり、防衛よりも攻撃に特化した機動軍団だ。軍内でも第7軍団は有事の際に最も強力な力で北朝鮮を制圧しうる「攻勢機動の北進先鋒」部隊と呼ばれる。

 第7軍団には約1000台の戦車、K-9自走砲、装甲車があり、軍団級としては世界最強の戦力を有すると評価されている。有事の際、担当の地域を防衛する歩兵部隊とは異なり、第7軍団は軍事境界線を突破し北朝鮮の中心部へと迅速に前進する任務を担う。第7軍団は有事の際に戦車、装甲車、自走砲で平壌などの北朝鮮の主要地域へ進撃する。

 ただし、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権当時の合参は「北朝鮮の壁は必要ならすぐに破壊できる構造で築かれているため、北朝鮮の対戦車壁を南侵の放棄だと軽率には断定できない」と説明していた。

 また、北朝鮮の防護壁については、韓国の戦車の北侵阻止よりも、北朝鮮の「敵対的二国家論」に基づく南北永久断絶や北朝鮮の住民・軍人の脱北封鎖に焦点を当てて説明していた。北朝鮮は2023年末から南北関係を「敵対的二国家関係」と規定している。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1235586.html韓国語原文入力:2025-12-1922:57
訳C.M

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