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韓国にAI発の失業ショック迫る…代替職務、適応教育を急げ

登録:2025-12-10 01:28 修正:2025-12-10 08:51
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が昨年3月、米カリフォルニア州サンノゼで開催された同社の開発者カンファレンスで、ロボット工学について説明している/AFP・聯合ニュース

 韓国が2030年までに米国エヌビディア(NVIDIA)から供給されることになっている人工知能(AI)の要となる26万枚のチップ(グラフィック処理装置:GPU)のうち、最初の供給量の一部(1万3千枚)が最近韓国に到着した。AI転換の動きに拍車がかかるだろうとの見通しが示されている中、AIによる失業ショックが近いうちに現実化する恐れがあるとの懸念が高まっている。専門家は、AI転換期に際して教育システムと職務教育を根本的に変えるとともに、大量失職などに備えた普遍的な基本所得(ベーシックインカム)の導入などを検討すべきだと指摘している。

 KAISTムンスル未来戦略大学院のソ・ヨンソク教授は、8日に企画財政部が主催した「第6回未来戦略カンファレンス」での「AIがけん引する脱労働社会」をテーマとする発表で、AIが雇用の70%以上を代替しうると警告した。ソ教授は「初期には若者層、女性が打撃を受けるだろうが、ショックが拡大して男性中心の製造業や専門職までもが影響を受けることになるだろう」との見通しを示した。

 韓国銀行が10月に発表した「AIの拡大と青年雇用の萎縮」と題する報告書にも、同様の危機感が表れている。韓国銀行はオープンAIのチャットGPTのサービスが始まった2022年7月から今年7月にかけての3年間の雇用の推移を分析。若年層(15~29歳)の雇用は同期間に減っていた。3年間で若者層の雇用は21万1千件減少しており、その98.6%(20万8千件)はAIに代替される可能性(AI露出度)が高い上位50%の仕事だった。韓銀は「ジュニア(若い世代)はAIに代替されやすい定型化した知識業務を主に担うため」だと分析している。一方、50代の雇用は20万9千件増加。彼ら「シニア」は対人関係、組織管理などAIに代替されにくい暗黙的知識と社会的技術を必要とする業務を担っているからだと韓銀は指摘している。

 問題は、GPUが大量に流入して「フィジカルAI」時代が本格的に到来すると、失業ショックが社会全般に広がらざるを得ないことだ。フィジカルAIとは、現実の物理法則、物事、視覚情報などを総合して人や物事と相互作用しつつ、能動的に行動するAIのこと。とりわけ、これまでAIに代替されにくい分野とみなされていた保健業や運送業などの分野にヒューマノイドのようなフィジカルAIが投入されれば、世代や職種の違いを越えて労働市場の構造そのものが変わりうる。

 そのため、一日も早く政府レベルでAI教育と代わりの職に就くための職務転換教育を強化すべきだとの声が高まっている。ソウル女子大学のキム・ミョンジュ教授(韓国電子通信研究院AI安全研究所長)は、「労働者がAIに適応するためには再教育が必要不可欠だが、結局のところ大きなコストがかからざるを得ない」として、「中央政府や自治体などが直に財政を投入してAI教育を積極的に支援すべきだ」と述べた。政府も今年8月の「新政権の経済政策の方向性」で、「AI大転換」と共に国民に対するAI教育の強化方針を打ち出している。

 一部からは、長期的にはデジタル税やロボット税などを導入してベーシックインカムの財源としようとの声もあがっている。人間の仕事を代替したAIとロボットが企業の生産性を高めるなら、それらの技術をどれほど活用しているかに応じて企業にこれらの税を課し、それを社会的に配分しようとの主張だ。

クォン・ヒョジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1233700.html韓国語原文入力:2025-12-09 18:34
訳D.K

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