韓国経済の運命を決めるかもしれない韓米関税交渉の最終交渉が行われている中、現在議論中の様々な交渉案をめぐりあらゆる情報が飛び交っている。韓国経済の規模に比べて過度な3500億ドルの投資を約束するためには、外国為替市場の安定性を担保する装置(通貨スワップ協定など)はもちろん、韓国自らが事業の商業的合理性を確認しながら意思決定に参加できるチャンネルが必要だ。交渉団は慶州(キョンジュ)アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が開かれる「今月末」という期限に縛られず、最後まで慎重を期すべきだ。
米国との交渉のために16日(現地時間)、現地に到着したキム・ヨンボム大統領室政策室長は、「これまでに比べ両国は最も真剣で建設的な雰囲気で交渉している」とし、「APEC首脳会議を機に開かれる韓米首脳会談が非常に重要だと(米国側に)強調しており、(それによって米国がある程度譲歩する可能性があると)期待している」と述べた。これまでの交渉の流れを振り返ると、米国が8月6日に韓国側に投資金を「全額」現金で支給することを要求し、韓国側は先月中旬頃に英文で書かれた5ページほどの「建設的修正代案」を送ったことが確認される。これに対し、米国が再び反応を見せる中、韓米通貨スワップ協定▽投資額の分割納付▽ウォン建て投資▽韓国が投資決定の主導権を握るMASGA(米国造船業を再び偉大に)事業の分離など、実務当局の間で様々な案が議論されているものと推察できる。
しかし、客観的な状況は容易ではなさそうだ。ク・ユンチョル副首相兼企画財政部長官の16日の発言どおり、「3500億ドルを現金で投資せよ」という米国の強硬な要求が完全に撤回されたわけでもなく、ウィ・ソンラク大統領室安保室長の説明どおり、韓国が要求してきた韓米通貨スワップ協定に明確な進展があるわけでもない状況だ。自らすべてを決めるドナルド・トランプ大統領の交渉スタイルを考えると、当局の間で隔たりが埋められたとしても、これが最後まで維持されるという保障もない。
さらに心配なのは、韓国国民の血税が使われる投資事業の「商業的合理性」を韓国側が自ら検証できる案がほとんど議論されていないという点だ。米日が先月4日に署名した了解覚書(MOU)によると、投資先を最終決定するのはトランプ大統領であり(第1項)、トランプ大統領に事業を推薦する主体はハワード・ラトニック商務長官が委員長を務める予定の「投資委員会」(第4項)となっている。投資金を提供する日本は、投資委員会に意見を提示する「協議委員会」に参加し、間接的に意思を伝えられるだけ(第5項)だ。また、投資がうまくいかなかったとしても、誰も責任を負わない(第17項)。
了解覚書内のこのような「毒素条項」を修正しながら、韓国の国益を守るためにあらゆる努力を傾けなければならない。ここで一歩間違えれば、プラザ合意(1985)当時の誤った判断で「失われた30年」という長期低迷に陥った日本と似たような境遇になりかねない。期限に追われず、これまで考えられず見落としたことはないか、綿密に点検しながら慎重に交渉に臨んでほしい。