米国との関税交渉の最大の争点となっている3500億ドルの対米投資パッケージについて、韓国政府が先月11日に米国側に了解覚書(MOU)の修正案を手渡していたことを、大統領室のキム・ヨンボム政策室長が1日のインタビューで明かした。米国はこれに先立ち、現金が必要となる直接投資のかたちで3500億ドルを投資せよとするMOUを韓国に送ってきた。韓国政府は、直接投資の比率をできる限り低くする一方、貸付や保証の比率を高めることや、韓米通貨スワップ協定の締結も必要だとの立場だ。まだ米国側からの返答はないという。キム室長は「結局ハッピーエンドになるのではないか」と述べているが、両国の立場の違いが大きいため、交渉が円満に妥結されうるか、その時期がいつ頃になるのかは不透明だ。さらには、来年11月の米国の中間選挙まで交渉が長引く可能性があるという見通しまで示されている。
すでに日本と欧州連合(EU)の自動車の品目別関税は15%に引き下げられている中、韓国のみに25%が課されている状況は、企業にとって大きな負担となっていると言わざるを得ない。かといって、韓国経済が持ちこたえられない米国の要求をそのまま受け入れることもできない。政府と企業は交渉が長期化する可能性に備えつつ、態勢を整備すべきだ。
このような中で発表された9月の輸出実績は、韓国企業の進むべき方向を指し示している。9月の輸出額は昨年同月に比べ12.7%増加すると同時に、過去最大値を記録した。対米輸出が1.4%減少した一方、ASEAN(17.8%)、EU(19.3%)、中南米(34.0%)、独立国家共同体(CIS、54.3%)などのその他の主要地域への輸出は大きく増加した。強く懸念された自動車輸出も16.8%も増加しており、これは対米輸出の減少が欧州などの代替市場への輸出で相殺されたおかげだ。
これまでの韓国の輸出は、一部の国と品目に集中していることが問題点として指摘されてきた。先月の韓国貿易協会の報告書によると、韓国の輸出先の集中度と輸出品目の集中度は世界10大輸出国の中で最高となっている。もちろん、中国(19.5%)に次ぐ輸出比率2位の米国(18.7%)市場を完全に放棄することはできない。しかし、関税交渉が妥結しても、米国の保護貿易主義と高関税政策はしばらく続く可能性が高い。米国への依存度をできる限り下げるとともに輸出市場を多角化することこそ、根本的な対策だ。トランプ政権の関税戦争を、戦略的な多角化によって韓国の輸出を一段階飛躍させる契機とする。そういった覚悟が必要だ。