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イスラエル・イラン戦争と朝鮮半島の平和の回復【寄稿】

登録:2025-06-24 14:14 修正:2025-06-25 10:36
22日、米国による核施設空爆に対する報復としてイランが発射したミサイルがイスラエルのテルアビブを襲った直後、救助隊員が被害現場を見て回っている/ロイター・聯合ニュース

 イスラエルのテルアビブとイランのテヘランとの直線距離は1628キロ。国境を接していない両国がミサイルを打ち合って戦争に突入した。世界は仰天した。今月21日(現地時間)に米国がフォルドなどのイランの核施設に突如として攻撃を加えたことで、新たな局面が繰り広げられた。世界はまたも衝撃を受けた。

 専門家たちは当初、米国が実際にB-2爆撃機にバンカーバスターGBU-57を搭載し、フォルドの地下核施設などを攻撃する可能性は低いと考えていた。米国共和党内では「対外軍事介入自制」の立場が強いうえ、空爆の効果も限定的でありうる。過去のアフガン(2001年)、イラク(2003年)への侵攻のように、長期にわたる泥沼のような進むことも退くこともできない状況に陥る可能性もあるからだ。米国内の世論も賛成16%、反対60%で否定的だった。しかしトランプは、限定的でただ一度で終わる、いわゆる「爆撃ラン(bombing run)」を選択した。核兵器の開発能力を除去する一方で、戦争拡大の口実を与えない戦略だ。

 イランは報復としてイスラエルにミサイルを発射した。ホルムズ海峡の封鎖も最終的に検討している。果たしてイランが攻撃を強め、バーレーンにある米海軍第5艦隊基地を含む域内19カ所の軍施設などの、米国の利益を攻撃するかが注目される。イエメン内のフーシ派、イラク内のシーア派民兵組織のような代理勢力も動員しうる。しかしイランは、軍事的にイスラエルの連続攻撃にさらされたのに続き、米国に決定打を浴びたかたちだ。1979年のイスラム革命以来、最大の危機を迎えているのだ。弱り目にたたり目で、イランには味方がいない。常にイスラエルを苦しめてきたハマスとヒズボラは、すでに無力化されている。シリアでは長きにわたる内戦の末、親イランのアサド政権が倒れている。イスラム諸国の支持は格好だけだ。ロシアは自分のことで手一杯だ。そのため、イスラム革命防衛隊が好戦的レトリックで威嚇してはいるものの、イランは徐々に対応を自制していくとみられる。内部の結束を固めつつ、不利な条件であっても交渉を模索すべき立場なのだ。

 イスラエルは国境も接していないため、メルカバ戦車を駆ってイランを占領することはできない。米国がバンダルアッバースに海兵隊を上陸させたり、テヘランやイスファハンに空輸旅団を送ったるするのは不可能に近い。明らかにしたように、米国とイスラエルはイランの体制の転覆や最高指導者の爆殺のような終局的なレッドラインを越えることはないだろう。遠からず外交の場が持たれるだろう。

 イランの体制交代はありうるだろうか。イランは深刻な被害を受けたが、外科的空爆によってすぐに神政体制が崩壊すると予想するのは無理がある。反政府勢力も破片化して隠れており、勢力が弱い。もちろんイラン国民は暴政に抵抗して2009年の「緑の運動」から2022年の「女性、生命、自由運動」に至るまで、何度も蜂起してきた。しかし、自身のアパートにミサイルを打ち込み、国中を荒廃させたイスラエルと米国に対する怒りの方が勝る。自然とイラン国旗の周りに結集する(rallying round the flag)のだ。すでにテヘランをはじめとする全国で反米、反イスラエルデモが相次いでいる。内部変革の声があがり、たとえ高齢(86歳)の最高指導者ハメネイ師が退いたとしても、イスラム革命防衛隊、民兵組織バシジ、情報省が持ちこたえる限り、神聖政権は生き残るだろう。

 最後に、イスラエルとイランとの戦争が朝鮮半島にどのような影響を及ぼすか。ここで国内の課題をみてみよう。内乱特検が捜査して解明するだろうが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は何度も北朝鮮の挑発を触発しようとしていたことは明らかなようにみえる。振り返ってみると、「軍事的衝突」が起きえた、背筋の寒くなることが何度もあった。北朝鮮は昨年10月15日、南北を結ぶ道路と鉄道を切断し、防衛のための堀を掘るにとどまった。イランはミサイル開発などの軍事協力において北朝鮮の厚い友好国だった。金正恩は、イランの壊滅的な敗北を見て恐れを抱くだろう。北朝鮮は短期的には「核保有国」だとより強く主張するだろうし、時としてミサイルを発射して健在ぶりを誇示するだろう。カギをしっかりかけて「敵対的な2つの国の関係」を固く守る恐れがある。しかし、何かにつけて「原点打撃」を公言した前政権とは異なり、国民主権政権は北朝鮮との平和、和解、協力政策を明確にしている。北朝鮮は、李在明(イ・ジェミョン)新政権が発足したことに内心安どしていることだろう。落ち着いて緊張緩和措置を取っていけば、北朝鮮も韓国との意思疎通の扉を開き、ひいては9・19軍事合意などの平和体制の回復が生存戦略に合致するかを検討するはずだ。

//ハンギョレ新聞社

クァク・ソンギュ|元駐パキスタン大使 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1204241.html韓国語原文入力:2025-06-23 17:11
訳D.K

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