日本の代表的な歴史学者であり実践的知識人である東京大学の和田春樹名誉教授は6日、東京で「日韓基本条約と(付随)協定は、1965年から現在に至るまで、両国関係の土台になったという点において意義があると言える」として、締結60年を迎えたこの条約の意義を一定程度は評価した。和田教授は「しかしながら、『1965年体制』において、日本の植民地支配の過ちを確認しなかった致命的な欠陥を、今からでも正さなければならない」と指摘した。和田教授は、1965年の韓日基本条約の締結当時、この条約には日本の侵略戦争に対する反省と責任が欠けているという理由で、日本の知識人たちとともに「日韓基本条約締結反対運動」の先頭に立ち、その後も朝鮮半島と日本の歴史的和解の道を探ってきた。
-1965年の韓日基本条約などを根拠に国交を正常化してから、ちょうど60年になった。
「韓国と日本の間における『1965年体制』そのものは評価する必要がある。それより前には事実上、両国においては国家関係というものは存在しなかった。それから60年間、様々な浮き沈みはあったが、この体制をもとに、韓国と日本の間で努力が続き、関係を進化・発展させてきた。このなかでは、1995年に村山富市首相が『戦後50周年の終戦記念日にあたって』と題する談話(村山談話)で、植民地支配と侵略戦争に対して反省し、その後の政権も談話の意向を継承している。その背景には、韓国人の努力で日本が変わってきたという点が大きい。困難にあっても、この基盤の上に新たな日韓関係を築かなければならない」
-この条約の欠陥が原因で韓日関係の悪循環が繰り返されている。
「韓国政府は基本条約に、1910年の日韓併合とその後の日帝強制支配が、軍事力を動員した不法行為であるという点を含めることができなかった。日本は『1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される』という基本条約の第2条について、韓国とは違い、日本の朝鮮植民地支配(日帝強占期)は不法な植民地支配ではなかったと解釈している。事実上、2国間に合意が存在していない条約になってしまったのだ。このため、植民地時代の被害者への賠償問題をはじめとする両国の歴史問題が解決しないという事態が続いている」
-基本条約だけでなく、韓日請求権協定は日帝強占期の被害者や遺族たちへの保障を妨げている。
「請求権協定に『植民地時代の請求権に関する問題は、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する』という内容があるのは事実だ。しかし、被害者の個人請求権の問題は終わったわけではない。日本政府が2016年の『日韓慰安婦合意』の際、『和解・癒やし財団』に10億円を出資したのがその反証になるのではないか。特に慰安婦問題は、1965年の協定当時は知られていなかったものであり、日本政府は、新たに確認された被害者に対して責任を全うしなければならない。請求権協定を完全に新たに締結することはできないが、(慰安婦や強制動員被害者などに関する)内容を一部改善することはできるはずだ」
-もつれてしまった韓日関係は、どうすれば正常化できるだろうか。
「韓国と日本の過去の歴史問題の対立は事実上、1965年に結んだ日韓基本条約について、両国の解釈が違うところから問題が生じている。今からでもこれを正す必要がある。まずは『1910年8月22日(韓日併合条約)以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効(already null and void)であることが確認される』という内容の第2条は、不法な韓国と日本の併合自体が無効だとする韓国側の解釈に従うことが適切だ。日本は、日韓併合が両国間における合法的な条約によるものではなく、占領軍の力を利用して強制されたものであるという点を認めなければならない」
-60年も経過した条約の根幹を揺るがすことは容易とは思えない。
「可能だと思う。実際、これは日本政府側にとっても新しいものではない。侵略戦争を反省した1995年の村山談話があったし、その後の政権も、その意向を継承する立場を維持している。2010年には当時の菅直人首相が日韓併合100年を迎え、『植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします』と述べている。このような認識を、日本政府が国家と国民の意思だと再確認することが必要だ」
-「大韓民国政府は、(…)朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」という基本条約の第3条についても、韓日間での意見の相違は変わっていない。
「韓国政府は大韓民国だけが『朝鮮半島の唯一の合法的な政府』だとする立場だが、日本は『朝鮮半島南側の唯一の合法的な政府』だと主張している。この点は日本側の解釈が望ましいと考える。現実的に朝鮮半島に二つの国家が存在することを認めなければならない。これを土台にして、日本も北朝鮮と国交を結ばなければならない。北朝鮮と日本の国交樹立は、韓国にとっても意味がある。過去の戦争と支配の歴史を清算してこそ、東北アジアの平和な未来を引き開く道を作ることができる。これに基づき、南北も平和に進まなければならない」
-尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権は「第三者弁済案」で過去の問題を取り繕おうとした。
「企業などから寄付金を得て強制動員の被害者に賠償するという『第三者弁済案』については、これを担当する日帝強制動員被害者支援財団の存在自体が危険だ。この案は、日本側からも自発的かつ適切に寄付されることが前提であるべきにもかかわらず、肝心の日本企業からの呼応はない。尹前大統領が頭を下げることで終わったと考えているようだ。日本も責任を感じなければならない」
-朴槿恵(パク・クネ)政権期には、慰安婦被害者支援事業で「和解・癒やし財団」が設立されたこともある。
「(2018年に財団は解散したが)基金は5億円(約47億ウォン)ほど残った。個人的には、これに韓国政府が相応の資金を出し、誰もが受け入れ可能な慰安婦問題の国際研究所を設立することを望んでいる。その建物の前に『平和の少女像』を設置すればいいだろう」
-韓国では4日に李在明政権が発足した。韓日関係は今後前進できるだろうか。
「李在明政権には期待している。韓国は6月3日の大統領選では、結果を通じて(不法な12・3内乱事態に対抗して)民主主義が勝利したことを示した。李大統領が日本の石破茂首相と会うことは、韓日間での歴史的な機会だ。李大統領が石破首相と日韓基本条約60年を迎え、首脳共同声明を出せばいいだろう」
-どのような内容を含める必要があるか。
「まずは、両首脳が『1965年体制』の問題点を評価したうえで、今後、韓国と日本が進む方向についての希望を含めなければならない。さらに、問題となっている日韓条約の解釈を一つにまとめる考えを加えるべきだ。これを通じて、韓国と日本の過去の問題の最初の糸のもつれを解きほぐせば、未来を語ることができるはずだ」