李在明(イ・ジェミョン)大統領は6日、第70回顕忠日(国を守るため犠牲になった殉国者などの追悼日)に際し、「戦争の心配なき平和な国、日常が揺らぐことのない安全な国を作ることこそ、聖なる犠牲と献身に対する最も責任ある回答」だとして、「堅固な平和の上に民主主義と繁栄の花咲く国で報いる」と述べた。前政権の3年間、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が「北朝鮮の挑発に厳正に対処する」と述べて軍事的緊張をあおってきたのとは異なり、繰り返し「平和」を強調した追悼の辞となった。
李大統領はこの日、ソウル銅雀区(トンジャック)の国立ソウル顕忠院で行われた顕忠日の追悼式で、「私たちが享受している自由と平和、豊かさと繁栄がどこからはじまったのかを忘れてはならない」とし、「国と共同体のために犠牲となった方々がいなければ、決して成し遂げられなかった目覚ましい成功」だと述べた。李大統領は「我が国民と国が危険に直面した時、自ら進んで犠牲となる方々がおられる」として、「奪われた国権を取り戻すために命をささげた独立運動家たちがいた。祖国を救うために戦場に出た軍の将兵たちと若者たちがいた。独裁の抑圧に屈することなく、民主主義のために闘った多くの方々がいた」と語った。報勲の3要素である独立、護国、民主にいずれも言及したのだ。「護国」のみを押し出していた尹錫悦前大統領の追悼の辞とは対照的だ。
■哨戒機事故の殉職者の名を呼び、「特別な補償が与えられるべき」
先月の海軍哨戒機の事故で殉職したパク・チヌ中佐、イ・テフン少佐、ユン・ドンギュ上士(先任下士官)、カン・シンウォン上士や、2023年12月の西帰浦市(ソグィポシ)のミカン倉庫火災の現場で殉職したイム・ソンチョル消防長の家族が参列する中、イ大統領は彼らの名前を一人ひとり読み上げつつ、「この場を借りて哀悼と慰めの意を表す。我が国民は故人の献身をはっきりと記憶する」と述べた。そして「すべての人のための特別な犠牲には、特別な補償が与えられるべきだ。国家有功者と遺族のみなさまが自負と誇りを感じ、品格を高めるよう、礼遇はより高く、支援はより厚くする」と述べ、有功者に対する礼遇の強化を約束した。「参戦有功者の残された配偶者が苦しい生活に陥らないよう支援を強化するとともに、国家有功者が自宅近くで直ちに便利に医療の恩恵を受けられるよう、隙のない報勲医療システムを構築する」と述べた。
李大統領は追悼の辞で、「独立運動をすれば3代が苦しみ、親日(植民地時代の日本帝国への加担、協力)をすれば3代が栄えるという言葉は、もう消えなければならない」と述べ、歪曲された歴史認識を正すことを呼びかけた。また「夜を徹して国を守る軍の将兵たち、災害現場で孤軍奮闘する消防士たち、犯罪現場で駆け回る警察官の献身のおかげで、今日も我が国民は安心して日常を送れる」として、現場の人材を激励した。
■平和、平和、平和…
この日、李大統領は「私たちが享受している自由と平和、豊かさと繁栄がどこからはじまったのかを忘れてはならない」、「戦争の心配なき平和な国を作らなければならない」、「堅固な平和の上に民主主義と繁栄が花咲く国」を作るとして、繰り返し平和を強調するメッセージを発した。昨年の12・3非常戒厳後に崩壊した日常の平和を回復させなければならないというメッセージと読み取れる。李大統領による顕忠日の追悼の辞には「北朝鮮」は一度も登場しなかったが、これも尹前大統領のメッセージとは対照的だ。
尹前大統領は2022年の就任後の最初の顕忠日の追悼式で、「我が政府は北朝鮮のいかなる挑発にも断固として厳正に対処する」と述べた。2023年には北朝鮮の核による挑発に言及しつつ、「共産勢力の侵略から自由大韓民国を守るために共に血を流した米国をはじめとする国連参戦国の勇士たち、国に呼ばれて世界の自由と平和のために献身された海外派兵勇士たちにも、感謝の言葉を申し上げる」と述べた。昨年は「今の大韓民国は世界で最も明るい国となったが、休戦ライン以北は世界で最も暗い暗黒の地となった」として、「平和は屈従ではなく力で守るもの」と主張した。