在宅起訴の状態で内乱首謀容疑などで裁判中の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が、不正選挙を主張する映画を見に映画館に現れた。内乱事態で息を潜めていた「隠れ保守」が結集し、与党「国民の力」から大統領選に出馬しているキム・ムンス候補の支持率が上昇する兆しが見える中、大統領選挙を13日後に控えたキム候補の立場からすれば非常に大きな悪材料が発生したかたちだ。離党で「手綱」が緩んだ尹前大統領が、むしろ与党の足を引っ張りはじめたのだ。
■尹前大統領、露骨な内乱正当化行為
尹前大統領は21日午前、不正選挙を主張する映画『不正選挙、神の作品か』が上映されるソウル東大門(トンデムン)の複合映画館「メガボックス」に警護員を引き連れて現れた。尹前大統領は極右ユーチューバーのチョン・ハンギル氏、この映画の監督を務めたイ・ヨンドン氏と共に観覧した。尹前大統領は「公正な選挙に役立つなら快く出席する」とし、チョン氏の招きに応じたという。
不正選挙の主張は、尹前大統領が非常戒厳を宣布した直接の動機の一つだ。内乱事件裁判の裁判長を務めるチ・グィヨン部長判事による拘束取り消しで釈放された尹前大統領が、自身の犯罪を露骨に正当化しているのだ。尹前大統領は2日前の19日、内乱裁判の第4回公判に出廷した。「非常戒厳について謝罪するつもりはあるか」と取材陣に問われた際には、何も答えなかった。
■国民の力、尹前大統領と一線を引いたものの…
与党「国民の力」は困惑している。同等のシン・ドンウク首席報道担当は尹前大統領の映画観覧について、「尹前大統領はすでに我が党を離党した『自然人』だ。尹前大統領の日程について我々にコメントすべきことはない」と述べた。「尹前大統領が離党しても選挙の助けにはならないだろうという指摘がある」と問われると、「そのような評価もしない。私たちのすべきことを頑張ればよいこと」と語った。しかし、キム・ムンス候補は尹前大統領の不正選挙擁護について立場を問われるとみられる。キム候補も不正選挙主張に対してはあいまいな態度を続けている。事前投票制を廃止するという公約も掲げている。
尹前大統領が大っぴらに不正選挙を擁護する行動を開始したことで、刑事訴訟法の制定から71年で唯一、尹前大統領だけのために拘束期間の計算法を変更して釈放したチ・グィヨン部長判事の「原罪論」が改めて強まるとみられる。野党「共に民主党」はチ・グィヨン部長判事の高級クラブでの接待疑惑を提起し、辞任を要求している。刑事事件を専門とする弁護士は「拘束取り消し状態で自身の犯罪動機を正当化する行為をしても、今のところチ・グィヨン判事が裁判長を務める裁判で尹前大統領を再拘束する方法がない。捜査機関が別の容疑で尹錫悦を拘束する方法を探らなければならない」と語った。