12・3内乱事態における「民間人の黒幕」とされるノ・サンウォン元情報司令官が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の検察総長時代から大統領当選計画を立てたことが確認された。尹前大統領とノ元司令官はいずれも捜査・裁判の過程で「(互いについて)知らず、会ったこともない」と否定したが、ノ元司令官が「尹大統領を陰で助けている」と述べた事実も確認された。二人の密接な関係を示す情況が相次いで明らかになり、ノ元司令官が尹錫悦政権で密かに国政に関与し、内乱以降の状況まで企画したのか、捜査を通じて明らかにしなければならない必要性がさらに高まっている。
ハンギョレは20日、ノ元司令官が2020~2021年に作成したものと推定される、文書作成ソフト「ハングル」で作成した「植樹の日行事計画」「YP(尹錫悦大統領と推定される)作戦計画」、「YR計画」という題の文書を入手した。警察庁国家捜査本部の非常戒厳特別捜査団(特捜団)が押収したノ氏のUSBにあった文書で、「尹錫悦大統領作り」が主な内容だ。
2020年に作成されたと推定される「植樹の日行事計画」のファイルには、「怒りと正義」という見出しの下に、(検察総長)退任時の行動▽退任後の動力維持(例)▽退任後の政界入り(2~3カ月間の休止期後)△大統領選挙カードの準備などの内容が含まれている。ノ元司令官は尹氏の(検察総長職の)退任時期について「自分の意思で退任する際は、今の存在感を最大限維持し、来年4月のソウル市長選挙直前が有利、記者会見は『これ以上職務遂行が不可能になり退任します』と簡潔かつ明確にする」と書いた。2021年4月に行われたソウル市長補欠選挙の前に尹前大統領が検察総長を辞任すべきという意味だが、尹前大統領は実際にソウル市長選挙の約1カ月前の3月4日に検察総長職から退いた。当時、尹前大統領は辞任に関する立場を短く発表し、「検察で私にできることはここまで」だと述べた。
退任後の歩みと関連し、ノ元前司令官は文書で「国民と疎通しながら自然に現時局の状況に対する懸念と認識を共有し、指導者クラスとしてのイメージを印象付け」、「伝統市場、清渓川(チョンゲチョン)、南大門(ナムデムン)、地下鉄などで『ドッキリ映像』のようなかたちで(突然登場し)、素朴で人間的な魅力を国民が感じられるような行動」を取るべきという意見を示した。また、「現政治体制と一定期間距離を置いてから、来年9月をめどに『国民の力』が担ぐ形で迎え入れる」、「AN(アン・チョルスと推定される)など、その他の候補群をすべて参加させて予備選挙を行い、その他の候補群が全員予備選挙に参加しなければならないように事前に地ならし作業」などの内容も含まれている。実際、尹前大統領は検察総長を辞任してから4カ月後の2021年7月、与党『国民の力』の提案を受け入れて入党した。
「YP作戦計画」の文書には「正義の法曹人」という「Yの現在の姿」をもとに「芸能人、中道左派も引き入れる果敢な人材スカウト」を通じて「後援支持グループの構成」をする案が含まれている。さらに「親朴(槿恵)、非朴を包容する蕩平策」を使い、「左派重量級(人物)をスカウト」、「党権掌握」をした後、「大統領選挙で成功」する段階を順序図の形で描いた。また「左派政権が推進した経済政策を左派の積弊清算として廃止」し、「韓米日安保軸を基本にして韓日関係を積弊清算と国民的人気迎合のレベルだけで取り上げるのではなく、未来指向的な戦略的観点」で取り上げるという政策的内容も多数あった。
「YR計画」には「国立墓地参拝、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、金大中(キム・デジュン)、金泳三(キム・ヨンサム)、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領に参拝」するなどの内容が書かれている。実際、尹前大統領は2021年10月26日、国立ソウル顕忠院を訪れ、朴正煕、金大中、李承晩、金泳三元大統領の順で墓参りをした。さらに同年11月11日には慶尚南道金海(キムヘ)の烽下(ポンハ)村を訪れ、盧武鉉元大統領の墓を訪れた。ノ氏が作成した文書の内容と尹前大統領の行動は、相当部分で重なる。
ノ氏は捜査機関でこの文書を自分が作成したと認めながらも、作成した理由と目的については陳述を拒否した。また、「キム・ヨンヒョン(元国防部)長官が何度か(尹大統領に自分のことを)紹介しようとしたが、私には性関連犯行に対するくびきがあるため、(尹前大統領には)会わないと言った」と述べた。だが、警察の捜査過程ではノ氏が非常戒厳宣布前日の昨年12月2日、「尹大統領を陰で助けている」と語った知人との通話内容も確認され、ノ元司令官がキム・ヨンヒョン前長官を通じて尹前大統領とつながった後、非常戒厳宣布までかなりの影響力を行使した可能性が高いものとみられる。