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【社説】「イ・ジェミョンだけはだめだ」と読み取れるイ候補の上告審判決

登録:2025-05-03 02:25 修正:2025-05-03 06:44
チョ・ヒデ最高裁長官が1日午後、共に民主党から大統領選に出馬するイ・ジェミョン候補の公職選挙法事件の判決を言い渡すため、ソウル瑞草区の最高裁大法廷に入場し、場内の整頓を宣言している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 チョ・ヒデ最高裁長官の主導した「イ・ジェミョンは有罪」を趣旨とする最高裁全員合議体(全合)の判決は、手続き的にも内容的にも納得しがたい。最高裁判所の判例をあげて無罪判決を下した原審(二審)判決を破棄して高裁に差し戻しておきながら、肝心の新たな判例は示さなかった。政治的表現の自由を最大限保障するという判例のすう勢に逆行しながら、なぜそうすべきなのかはきちんと説明しなかったのだ。全合に回付されてからわずか9日後に判決を下すという前例のない速攻は、わずか1カ月しか時間が残されていない大統領選挙に影響を及ぼそうという意図があると疑われる。最高裁全合の判決が、権威と信頼を守るどころか、政治的混乱と不信ばかりをあおっている。

 多数意見に加担した10人の最高裁判事は、検察の起訴事実をすべて排斥した二審判決は「公職選挙法の法理を誤解している」と判断した。虚偽事実だったかどうかは「候補者や裁判所ではなく、一般選挙人の視点から見なければならない」というのだ。有権者に誤った印象を与えるとしたら、そのような表現の自由は制限しなければならないという趣旨だ。このかん最高裁は、公職選挙法違反事件の判例を通じて政治的表現の自由を広げてきた。昨年10月31日には、共に民主党から大統領選に出馬するイ・ジェミョン候補と類似の疑いで一審、二審ともに有罪が言い渡された事件について、無罪であるとの趣旨で破棄し、差し戻している。最高裁は「『疑わしきは被告人に有利に』という刑事法の基本原則にもとづき、選挙運動の自由と表現の自由を保障するとともに、代議制民主主義を選んだ憲法の精神に則った判決」だとする報道資料すら発表している。ところが、イ候補の事件では突如このような判例に逆行する判断を下したのだ。事実上「破棄自判」水準の断定的な表現で原審を覆した。なぜそうしたのかの説明が必要であるにもかかわらず、多数意見にそのような内容は見あたらない。

 政治的表現の自由を厳格に制限する裁判所の態度が検察の「標的捜査」と結び付けば、その弊害は大きい。選挙運動の過程で起きた政治的攻防に対する検察の「選択的」捜査を裁判所がフィルタリングしなければ、代議制民主主義を歪曲する結果を招く。イ・フング判事、オ・ギョンミ判事の「(多数意見のような)解釈の方向性が検事の起訴便宜主義と結び付くと、民主主義政治と裁判所の政治的中立に加わる危険性は深刻になりうる」という少数意見が説得力を帯びて聞こえる理由はここにある。

 裁判は内容だけでなく、外観も公正に見えるようにしなければならない。今回の判決は通常の全合判決とは異なる型破りなかたちで下された。最高裁は「異例の速攻」について、「選挙法の趣旨に則って集中審理を行い、適時処理を図ったもの」だと説明している。選挙法に規定された6・3・3原則を守ったに過ぎないというのだ。なぜ、よりによって大統領選挙を1カ月後に控えた時に、最も有力な大統領候補であるイ候補の事件で、それを絶対に守られなければならないのかを、最高裁は説明すべきだ。でなければ、最高裁が大統領選挙に影響を及ぼそうという意図を持っているという疑いは解消できないだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1195600.html韓国語原文入力:2025-05-02 18:31
訳D.K

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