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緊急措置違憲、新軍部断罪…尹前大統領の罷免を導いた諸判例

登録:2025-04-08 01:37 修正:2025-04-08 07:24
尹錫悦大統領の弾劾審判の決定言い渡しを翌日に控えた3日の、ソウル鍾路区の憲法裁判所の大審判廷=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 4日に罷免された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は最終陳述で、「1993年の金泳三(キム・ヨンサム)元大統領による緊急財政経済命令も憲法裁判所は合憲と決定した」として、当時の憲法裁の決定によれば自身の12・3非常戒厳宣布も違法ではないと抗弁した。しかし尹前大統領の弾劾決定文では、この判例は逆に尹前大統領の罷免を決定する根拠として用いられた。

 7日に尹前大統領の弾劾決定文の17ページを確認したところ、憲法裁は「非常戒厳は危機状況が発生する恐れがあるという理由のみで事前に、予防的に宣布することはできず、公共の福利の増進のような積極的目的のために宣布することもできない」と指摘している。国家緊急権は厳格な要件の下で行使されなければならない、との趣旨だ。この一文は、金元大統領による緊急財政経済命令を合憲とした憲法裁の1996年の決定文から引用したものだ。憲法裁は当時、緊急財政経済命令は合憲だとしながらも、大統領による国家緊急権の行使は司法審査の対象になりうるため、その行使の要件を厳格に適用して判断しなければならないと判示している。

 尹前大統領の弾劾決定文には、この他にも過去の独裁政権による国家緊急権の行使、乱用の歴史を断罪した判決が引用されている。憲法裁は決定文の冒頭で、「憲法の定める国家緊急権の発動要件と事後統制、および国家緊急権に内在する本質的限界は、厳格に順守されなければならない」と述べている。この前提は、1971年に朴正熙(パク・チョンヒ)が制定した国家保衛に関する特別措置法(国家保衛法)の一部条項を2015年に違憲とした憲法裁の決定文から引用したものだ。

 憲法裁は、尹前大統領が12・3非常戒厳の布告令で集会・デモを禁止したことに対する違法判断でも、過去の判例を引用している。2013年の「緊急措置1・2号違憲決定文」がそれだ。憲法裁は「批判そのものを源泉から排除するための公権力の行使や規範の制定は、大韓民国憲法が予定している自由民主的な基本秩序に合致しないため、その正当性を与えることはできない」と判断している。

 尹大統領の弾劾決定文の結論部分では、朴正熙、全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)と続いた独裁政権の歴史を説明しつつ、彼らを処罰した最高裁判決から多くを引用している。全斗煥、盧泰愚らが12・12軍事反乱で軍の指揮権と国の情報機関を掌握し、その後、政権を奪取するために1980年5月17日に当時の崔圭夏(チェ・ギュハ)大統領らに迫って非常戒厳の全国への拡大を宣布させたことなどだ。

 国会の弾劾訴追手続きに対する尹前大統領側の問題提起についても、憲法裁は過去の判例で答えている。尹前大統領側は、昨年末に国会が弾劾訴追した際に法制司法委員会の調査手続きを経ていない、「内乱罪」撤回は訴追事由の変更に当たるとして、手続き的な欠陥を指摘していた。これに対し憲法裁は、似たような指摘が盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾審判でもあったと指摘しつつ、判例は手続き的問題はないとしていると述べている。

 国会による大統領の弾劾訴追は「弾劾訴追権の乱用」だとする尹前大統領側の主張は、「イ・ジンスク判例」によって棄却された。憲法裁判所は今年1月のイ・ジンスク放送通信委員長の弾劾事件で、イ委員長側の「弾劾乱用」主張に対して「たとえ弾劾訴追の議決に一部政治的な目的や動機があったとしても、そのような事情だけで弾劾訴追権が乱用されたとはみなせない」と述べている。

オ・ヨンソ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1191178.html韓国語原文入力:2025-04-07 18:00
訳D.K

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