25日に憲法裁判所で行われた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の最終弁論は、彼がなぜ罷免されなければならないのかを自ら証明した場となった。1時間以上にわたった最終陳述は、時代遅れのイデオロギー的レッテル貼りや実体なき不正選挙主張など、妄想と詭弁(きべん)で満ちていた。いまだに「復帰後」を期待して支持者のみに頭を下げた彼を見て、国民として恥と情けなさを抱いた人は少なくないだろう。
彼は最終陳述でも、12・3非常戒厳は「国が亡国的危機状況に直面していることを宣言するものであり、国民に共に立ち上がってほしいという切迫した訴え」だとの主張を繰り返した。そして、発言のかなりの部分を野党非難に割いた。市民社会団体の主催した退陣要求集会で野党議員が発言に立ったとして、それを「北朝鮮の指令」に従ったものだと規定した。共に民主党による予算削減については「いったい誰の指示を受けて、核心予算案だけをきっちり選んで削減したのか知りたいほど」だと述べ、イ・サンミン前行政安全部長官の弾劾については「北朝鮮の指令を受けたスパイ団と事実上同じことをおこなったもの」だと主張した。北朝鮮の指令を受けた野党のせいで戒厳を宣布せざるを得なかった、現在内乱罪で裁かれているのも野党の「工作フレーム」のせいだというのだ。被害者意識と妄想にとらわれて理性を失っているようだ。
当事者たちの証言で全容が明らかになりつつある国会と中央選挙管理委員会の侵奪の状況については、自ら「再構成」した。「わずか280人の実武装もしていない兵力のみを(国会に)投入」、「戒厳解除決議後、すべての兵力を撤収」など、全国民が目撃した現場すらもためらうことなく歪曲した。最高裁に実体がないと判断された不正選挙陰謀論も繰り返した。
弾劾審判の過程で非常戒厳の違憲性、違法性が明確になったにもかかわらず、彼はいまだに弾劾棄却への期待と国政復帰の意志を表明してもいる。「残りの任期にこだわらない」と述べて任期短縮改憲の意思を表明したが、憲法秩序を破壊した大統領が復帰を前提として改憲を約束するということそのものが荒唐無稽だ。改憲の必要性は否定できないが、尹大統領が危機打開のための小細工として利用すべき事案では断じてない。にもかかわらず、与党は「誠意をもって議論」(国民の力)、「改憲の意志が実現されてこそ」(大統領室)などと言って調子を合わせているのだから、あきれるばかりだ。
尹大統領の最終陳述は、非理性的な妄想にとらわれて憲法秩序まで破壊した内乱犯の実体を再確認する契機となった。憲法裁の迅速な罷免決定がいっそう切実に求められている。