「もはや米国主導の自由主義国際秩序と大西洋同盟は終わった。欧州は自らの生きる道を模索しなければならない」。先日ミュンヘン安全保障会議に出席したドイツの知人が筆者に送ったメール内容だ。欧州全域を揺るがしたJ・D・バンス米副大統領とピート・ヘグセス国防長官のミュンヘンでの発言に対する反応だった。
今年44歳のヘグセス国防長官の発言の要旨はこうだ。2014年以前のウクライナ国境に回帰するのは非現実的であり、ウクライナのNATO加盟がロシアとウクライナ戦争終息の解決策にはなりえない。そして戦後、ウクライナの安全のために米国が軍事的に介入することはなく、NATO軍を平和維持軍として派兵してはならないという態度を明確にした。
40歳のバンス副大統領の発言はさらに衝撃的だった。バンス副大統領は安全保障会議の招請講演で、安全保障事案は取り上げず、欧州の民主主義を真っ向から批判した。移民、表現の自由、選挙制度などの問題点を列挙し、「ドナルド・トランプ政権の米国的価値を共有しない欧州国家については、安全保障を提供できない」という爆弾宣言を行った。マイク・ワルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)も6月のNATO首脳会談までにすべての加盟国がGDPの2%の防衛費を分担する約束を履行するよう求めた。
米国の高圧的な態度に対する欧州の反応はまちまちだ。世論指導層は、対話と交渉を通じて米国を説得し、大西洋同盟を復活させようと主張している。しかし多くの人々は、欧州諸国は米国の従属的な諸侯国家なのかと問い返し、これを機に欧州の安全保障をめぐる独自的協力の土台を作ることを呼びかけている。特に、トランプ大統領が中国との対決を管理するためにロシアと戦略的提携を強化することになれば、欧州が捨て札になりかねないという懸念の声もあがっている。
このような欧州型安全保障のジレンマが、韓国にもまもなく迫ってくるだろう。どのように対応すべきだろうか。第一に、「トランプの米国」に対する希望的思考偏向の愚を犯してはならない。トランプ大統領と「米国を再び偉大に(MAGA)」支持者の韓国に対する認識はかなり否定的だ。彼らの間では韓国が代表的な「安全保障ただ乗り国」として浮上しており、朝鮮半島有事の際、韓国政府が在韓米軍を米国の自動軍事介入を触発するための「(ブービートラップの)トリップワイヤー」として利用しようとしているという批判もある。特にバンス副大統領やヘグセス国防長官のように、テロとの戦い(イラク、アフガニスタン)に参戦した40代世代には、米国の若い兵士が他国の戦争で血を流してはならないという強い共感が形成されている。したがって過去のように「血盟」であることを強調するアプローチは逆効果をもたらしかねない。
第二に、正攻法で進まなければならない。韓国が主力軍になり、米軍が支援軍になる戦力構造へと移行しなければならない。また、戦時作戦統制権も早急に移管しなければならない。「韓国の防衛は韓国が主導的に行い、同盟の枠組みの中で互いにやりとりする」という前提があってこそトランプ政権と取引主義的な「ディール」が可能になり、韓米同盟も守ることができる。韓国政府次第だが、在韓米軍がなくても米国は「域外の均衡者」として韓国に対する海空軍支援と拡大抑止を引き続き提供できるだろう。この場合、自然に防衛費分担の圧力も和らぐだろう。
第三に、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の会談を含む朝米間の直接取引に反対する必要はない。そして「完全かつ検証可能な不可逆的な非核化」(CVID)を目標とする一方、それが対話と交渉の絶対的前提条件になる理由はない。直ちに急がれるのは、朝米首脳外交を通じて朝鮮半島の緊張を緩和し、戦争の危機を防ぐ「予防外交」だ。 これを通じて北朝鮮の核活動を中断させ、核物質と弾頭を減らしていく一方、中長期的な観点から漸進的に核を廃棄していけばいい。むろん、この過程で韓国が疎外されてはならず、朝米非核化交渉が朝鮮半島平和体制の構築と緊密に連携されなければならない。
最後に、米中対立への関与の危険を避けながら、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定を作っていける創意的外交が求められる。韓米日協力を続ける一方、硬直した陣営外交の枠組みから抜け出し、南北関係を改善し、韓中日3カ国協力体制を活性化すると同時に、朝中ロ3カ国との関係を慎重に調整し、新たな北東アジア安全保障構図作りに向けた外交的努力が求められる。
第2次トランプ政権の米国は、私たちが従来知っていた米国の姿ではない。このような現実を直視して、賢く堂々とこれから迫ってくる難関を乗り越えていくべきだ。そのためには、国内の政治的危機の早期妥結と国家の大戦略に対する国民的合意の構築が先に行われなければならない。