内乱容疑者の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案が国会で可決されたことで、希望の光が見えたかのように思われた大韓民国の運命が、再び一寸先も見えない暗闇に閉じ込められた。内乱容疑者の尹大統領は、捜査機関の4度にわたる出頭要請に応じず、ハン・ドクス大統領権限代行は憲法裁判官の任命を拒否した。「内乱」を起こし、それを防げなかったことについて、国民の前にひざまずいて謝罪するどころか、むしろ反撃に出る格好だ。
12・3内乱以降の状況を眺めている国民は呆気に取られている。内乱を起こした容疑者は、捜査機関の出頭要請を一方的に無視し「厳然たる現職の大統領」だと開き直っており、内乱の主導者であるキム・ヨンヒョン前国防部長官は、26日に弁護団の記者会見を通じて「今回の戒厳は国会の反憲法的行動に対して警鐘を鳴らすのが目的であり、大統領の適法かつ正当な非常戒厳宣布は内乱になりえない」と述べ、事実上国民を叱りつけている。
内乱勢力を積極的に擁護し、弾劾審判を遅延させるためにあらゆる努力をしている与党「国民の力」のクォン・ソンドン代表権限代行兼院内代表が、24日の議員総会で行ったという発言は、12・3内乱に対する与党議員らの本音を代弁する。クォン院内代表はこの日、「ハン権限代行は憲法裁判官3人を任命することはできない」と主張し、「選挙区に行けば批判されるだろうが、覚悟して面の皮を厚くしていかなければならない」と述べたという。憲法裁6人体制を維持し、捜査日程を遅延させるなど「法の網をくぐる」戦略で状況をひっくり返そうという意図を明確にしたのだ。
ハン代行は26日、「与野党合意」を掲げ、憲法裁判官の任命を保留した。24日には「内乱特検法」と「(尹大統領夫人)キム・ゴンヒ特検法」に対しても拒否権の行使を示唆した。非常戒厳令で崩れた憲政秩序を急いで建て直すどころか、遅延させたり、霧散させようとする尹大統領および与党と足並みをそろえているとしか考えられない。
与党「国民の力」の議員108人のうち、戒厳解除投票に参加した議員は18人(17%)のみで、弾劾には85人(79%)が反対した。弾劾案可決直後には弾劾に賛成したハン・ドンフン代表を事実上追い出したのに続き、賛成した議員を「あぶり出そう」とまで主張した。それ以降も「憲法裁判官任命」に反対し、「内乱特検法」には権限代行の拒否権を要求している。さらに「内乱」当日、党本部で座ってテレビを見るだけで何の立場表明もしなかった「重鎮たち」が今になって「事態を収拾する」として乗り出している姿は、文字通り厚顔無恥だ。
合わせて14日の弾劾訴追案可決以後、2次戒厳のために騒擾事態を計画したという情報提供や報道が相次いでおり、国民の不安は消えない。内乱に動員された情報司令部の「ブラック要員」の一部と持ち出された武器が戻ってきていない状態だというし、国軍情報司令部所属の工作要員が非常戒厳直前にモンゴルの北朝鮮大使館に接触しようとしたとか、国家情報院が白ニョン島(ペンニョンド)で北朝鮮が飛ばしたゴミ風船をドローンで何度も撃墜したのは北朝鮮との軍事的衝突を引き起こそうとしたのではないかなど、いろいろな疑惑が絶えず持ち上がっている。
このような内乱関連の情報が事実であるかどうかを確認し、国民の不安を解消するためには、迅速な特検の導入と捜査が必要だが、「内乱勢力」がこれを妨げている。内乱は依然として進行中である。