ウクライナのロシア本土のクルスクへの進攻後、ロシアがウクライナの従来の戦線で攻撃を強めている。東部戦線の主戦場であるドネツクで、ロシア軍が主要な要衝地であるニューヨークを占領したと発表するなど、ドネツク全域がロシア軍の占領にさらされる可能性が高くなった。
ロシア国防省は20日、ロシア軍中央戦闘軍団がニューヨーク(ロシア名ノブゴロドスケ)を陥落したと発表した。ニューヨークはドネツクの人口密集地であるトレツクの主要な街であり兵站の中心地だ。
国防省は「中央戦闘軍団の部隊が積極的な作戦の結果、敵の大部隊を粉砕し、トレツクの主要な街でありドネツク人民共和国の戦略的に重要な兵站の中心地であるノブゴロドスケを解放した」と発表した。ニューヨークはドネツクの炭鉱都市であるトレツクの南に接している。ロシア軍は前日、トレツク東南部のザリズネも占領したことを明らかにした。また、この日のロシア軍の中央戦闘軍団による攻撃で、ウクライナ軍で死傷者585人が発生したと主張した。
ウクライナ独立後、米国のニューヨークに従って改名されたこの街は、規模は小さいがロシア軍がここを占領した場合ドネツクの主要な拠点都市であるトレツクとポクロフスクに進める大きな進展となる。ロシア軍は現在、ポクロフスク郊外の10キロメートルまで進攻した。ウクライナ当局は前日、ポクロフスクの住民たちに疎開令を再発令するなど、先週半ばから住民たちを避難させている。
ロシア軍がポクロフスクとトレツクを占領すれば、ドネツクで人口が密集する地域のほとんどを占領することになる。この両都市の西側は人口が少なく、自然や人工的な防衛施設はなく、ドネツク全域がロシア軍の占領にさらされる。
ウクライナ軍は、ロシア軍がニューヨークとその近隣を攻撃しているとだけ明らかにし、ロシア軍のニューヨーク占領を認めなかった。英国BBCによると、ウクライナ軍はザリズネを奪還する戦闘を引き続き行っており、地域の消息筋はニューヨークの20%を今でも統制していると伝えている。
ロシア国防省はこの日さらに、北部、西部、南部の戦闘軍団も過去24時間にそれぞれウクライナ軍数百人に被害を与え、各種兵器を破壊し進攻したと主張。ウクライナ戦線でロシアの進攻は、6日のウクライナによるロシア本土のクルスクへの進攻後、激しくなった。ドネツクなどから精鋭の兵力を引き抜いてクルスク戦線に投じ、従来の戦線で防衛力が弱まったためと西側の軍事分析家は指摘する。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官はこの日、クルスク作戦が現在国境内部の28~35キロメートルまで進展し、93の集落を含む1263平方キロメートルを占領したと主張。一方、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相は、クルスクとベルゴロド、ブリャンスクの国境地帯で、ウクライナ軍の作戦を防ぐ3つの新たな部隊が編成され、反撃作戦が進んでいると反論した。
クルスクでの戦闘に投入されたチェチェンのアフマト特殊部隊のアプティ・アラウディノフ司令官はロシアメディアに、クルスクでウクライナ軍が非常に深刻な損失を被ったと主張した。アラウディノフ司令官はまた、ウクライナがクルスクで破壊した橋梁は「何の意味もない」として、その戦術的価値を一蹴した。前日にロシア国防省は、クルスクに侵攻したウクライナ軍3800人が戦死したと主張した。