尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史のブランドバッグ受け取り事件を調査した国民権益委員会(権益委)腐敗防止局のK局長が遺体で発見され、衝撃を与えている。K局長がこの事件の処理過程で、激しい自責の念と自己嫌悪を訴えたという証言と情況も続々と出ている。調査と終結に至る全過程にわたってどのようなことがあったのか、不当な外圧や業務指示があったのかなどを徹底的に究明しなければならない。
9日付のハンギョレの報道によると、K局長はキム女史のブランドバッグ受け取り事件が「終結」処理されたことに関し、「良心に背くことをしてつらい」という趣旨で知人たちに訴えたという。K局長は「事件を終結せず、捜査機関に移牒すべき」という意見を示し、上役のチョン・スンユン副委員長と対立したという話もある。
これに先立ち、権益委は6月10日、ブランドバッグ事件に対して「請託禁止法上、公職者の配偶者に対する制裁規定がない」として終結処理した。この日は、ブランドバッグ事件による世論悪化で昨年12月のオランダ国賓訪問以来国外出張を控えていた尹錫悦大統領夫妻が、6カ月ぶりに外国訪問を再開した日だった。権益委のチェ・ジョンムク非常任委員が事件の終結処理に反発して辞任するなど、内部で激しい反発もあり、国民権益委ではなく「女史権益委」という批判が相次いだ。権益委は過去、公職者の配偶者の金品授受について特定犯罪加重処罰法上の斡旋収賄と弁護士法違反などで処罰できるという解釈を示したことがあった。
K局長の死は、法と常識に反する決定で政治的偏りをめぐる論議を自ら招いている権益委の行動と深い関連があると疑わざるを得ない。K局長は野党「共に民主党」のイ・ジェミョン前代表の応急ヘリコプター移送関連事件を調査した実務責任者でもあった。当時、権益委はイ前代表らの請託禁止法の違反有無については立証する資料が足りないとする一方、ヘリコプター移送に関与した医療スタッフと消防署関係者たちが行動綱領に違反したと当該機関に通知するなど、無理な調査で物議を醸した。
K局長の死亡について、与党「国民の力」の中でも「公職者が法と原則、良心と常識によって業務を処理できず、誤った決定に対して死で抗弁するしかないなら、正義のためにこの問題は必ず正さなければならない」(ユ・スンミン元議員)という声があがっている。権益委を政治の道具に転落させた人たちが、K局長死亡の真の黒幕だ。誰がK局長に「良心に背くこと」を強いたのかを明らかにしなければならない。