<「時間はないけど、関心がないわけではない」。日々に追われて忙しく、ニュースを見る時間もないあなたのために用意しました。ニュースが教えてくれないニュース、見れば見るほど気になるニュースを5つの質問に盛り込みました。The 5が質問し、記者が答えます>
今月9~10日、北朝鮮が韓国に向けて「汚物風船」を飛ばしました。今回で4回目です。先月28日から北朝鮮は韓国の脱北者団体が散布する「ビラ」(北朝鮮向けビラ)に対抗するとして、汚物風船を飛ばしています。今月9日には韓国軍が北朝鮮向け拡声器放送を6年ぶりに再開し、強硬姿勢で対応しました。なぜビラのために北朝鮮は数千個もの汚物風船を飛ばしたのでしょうか。韓国政府は脱北者団体の敵対的行動を手をこまねいて眺めているだけでいいのでしょうか。南北間の緊張関係はいつまで続くのでしょうか。国防部を取材してきたクォン・ヒョクチョル記者に聞いてみました。
[The 1] 北朝鮮は韓国の「ビラ風船」に対抗して汚物風船を飛ばしたと主張しています。本当にそうですか。
クォン・ヒョクチョル記者:南北が今互いに「目には目を、歯には歯を」の態度で臨んでいます。北朝鮮の論理は、脱北者団体がビラを送るのだから、自分たちは汚物で対抗する、つまりやられた分だけやり返しているということです。これに対し、韓国は北朝鮮が汚物を送ったのだから、我々も拡声器で放送を流して対応するということです。すると、北朝鮮は再び汚物風船を送る。互いにやりあっているところです。
1950年の朝鮮戦争以来、南北は政府レベルで互いにビラを送ってきました。戦争当時は軍事作戦によって飛行機でばら撒き、その後は風を利用して風船で飛ばしてきました。2004年6月の南北軍事会談で敵対的行為をしないことで合意し、公式的に(ビラ散布が)中断されたこともありました。その後20年間、政府レベルのビラ散布は断続的に行われただけです。だけど、現在は一部の脱北者団体を中心にビラ散布が続いています。北朝鮮体制の問題点を北朝鮮の人々に知らせるためだと言いますが、そのような行為によって南北関係全体が揺らぎ、国民生活の安定性が深刻に脅かされているのは大きな問題だと思います。
[The 2] 韓国は拡声器の放送を2時間に限定しました。北朝鮮は3回目、4回目の風船散布の際には糞尿肥料は入れませんでした。互いに自粛しているのでしょうか。
クォン記者:相手の出方を見て自分の出方を決めようとしているのでしょう。今、互いに正当性を確保するやり方で(対応)しているのに、あえて一度に自分の札を全部見せたくはないはずです。両方ともブレーキをかけています。もし韓国で風船のせいで誰かが怪我をしたりすると問題が深刻になりますが、まだそれほど深刻な被害が発生したわけではないですし、その状況で韓国が強く対応するはっきりした名目がないということでしょう。対応には比例性が重要です。一日二日で終わる問題でもないですから。
[The 3] 韓国政府はなぜビラ風船を積極的に止めないのでしょうか。昨年9月の「対北朝鮮ビラ散布禁止法」が違憲だという憲法裁判所の決定があったからでしょうか。
クォン記者:憲法裁の決定の趣旨は、(政府が)北朝鮮へのビラ散布を阻止すること自体が問題ということではありません。ビラ入り風船を飛ばすことを処罰するのが行き過ぎだということです。「対北朝鮮ビラ散布=表現の自由」という判断は示していません。結局、警察がビラ散布を止めること自体には問題がない状況です。
過去、対北朝鮮ビラ禁止法がなかった頃も、政府がビラ散布を制止したことがあります。風船にガスを入れるのを高圧ガス安全管理法違反で阻止したこともありました。また、北朝鮮に物を搬出する際に統一部長官の許可を受けなければならないのに、そのような過程なしに送ったとして、南北交流協力法違反だとして止めたこともありました。止めるつもりがあるなら、いくらでも方法はあります。ところが今、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はビラ散布を制止しない方針です。
[The 4] このまま行って大変なことが起きたら、どうするつもりでしょうか。
クォン記者:実際、前例があります。2014年10月、脱北者団体が飛ばした風船に対し、北朝鮮が銃撃を加えました。これに対し、韓国軍は北朝鮮の監視警戒所に向かって機関銃を撃ち、非常事態になりました。2015年には北朝鮮の木箱地雷で韓国軍の2人が大怪我をしたことを受け、政府が北朝鮮向け拡声器放送を再開し、北朝鮮は拡声器に大砲を撃って対抗しました。2020年6月の南北共同連絡事務所の爆破もありましたね。北朝鮮が連絡所を爆破したのはとんでもない行為ですが、その口実を与えたのは韓国の脱北者団体でした。ビラや拡声器を利用した心理戦が一瞬にして武力衝突へと発展する可能性があることを示す事例です。
今、南北が休戦ラインで機関銃を装てんして互いの監視警戒所の方向に照準を合わせています。時々、銃が誤って発射されることが数年に一度ありますが、それを受けた側が飛んできた弾が誤射かどうか分からない場合は、相手に向かって銃を撃つ可能性もあります。砲弾が飛び交うこともあり得ます。
[The 5] 緊張はいつまで続くのでしょうか。
クォン記者:当分の間、南北関係は改善しないでしょう。互いに対する不信感と脅威を減らさなければならないのに、今は互いに脅かしてばかりですからね。意思疎通のチャンネルもないので、何か起きたら、あっという間に大事になる可能性も高いです。非常に危ういです。
分断後、南北は知らず知らずのうちに互いを映し出す鏡のような関係を維持してきました。相手のせいにするだけではいけません。脅威の減少は相互的でなければなりませんから。今、私たちにできる最も簡単な方法は、政府が脱北者団体のビラ散布を制御することです。一部の突出した信念が南北関係全体を左右できないよう、積極的に管理する責任が政府にはあります。