閉鎖された動物園に放置された野生動物240頭あまりが、先日別の2つの動物園に移送された。狭苦しく劣悪な室内飼育場から出られたという安堵の声が出ているが、動物保護団体は虐待されている動物を救助できない制度的限界は今も変わっていないと指摘した。
大邱市(テグシ)および動物保護団体「釜山動物虐待防止連合」などの説明を総合すると、慶尚南道金海市(キムヘシ)の「釜慶動物園」と大邱のある総合ショッピングモールに入居した室内テーマパーク動物園で過ごしていた動物たちが、それぞれ江原道江陵市(カンヌンシ)の私設動物園と大邱の別の私設動物園に移されている。
釜慶動物園は昨年7月、肋骨が浮き出るほどやせ細ったライオンの「パラミ」が救助され、公営動物園である忠清北道清州市(チョンジュシ)の「清州動物園」に移されたことで、劣悪な状況が明らかになった。当時の釜慶動物園は経営難のため営業が中断された状態だった。しかし、動物たちは狭く汚い展示場に放置されており、虐待論争が起きた。さらに、同じ事業主が運営している大邱の室内テーマパーク動物園も似たような状況にあることが知られ、動物たちの救助と隔離措置が急がれるという指摘がなされた。しかし、政府と地方自治体は、動物園で飼育されている動物は「私有財産」に該当するため、積極的な措置は難しいという立場を固守してきた。しかも動物たちは、これらの動物園の事業主が賃貸料などの運営費用をきちんと納付できなかったことから、負債の代わりに裁判所に押収された状態にあった。
大邱市の気候環境政策課の関係者は31日、ハンギョレに「移動先の動物園は、ショッピングモールの地下にあったテーマパーク動物園よりは良い環境だとみられる。野外の放し飼いの場所を備えており、新たに移動してくる動物のための新築の施設も作っている」と述べた。
動物自由連帯などの動物保護団体は、これらの動物園の状況は、不十分な行政と不備のある動物園関連法の限界を示した事例だと評した。動物自由連帯は30日、「動物を放置・虐待した動物園の閉鎖後、展示動物の福祉の実現に向けて残された課題」と題する論評を発表し、現行法の限界について指摘した。動物自由連帯は論評で「2013年の開園から今年まで、釜慶動物園で死んでいった絶滅危惧種の動物だけで113頭に達する」として、「閉鎖された釜慶動物園とテーマパーク動物園のなかで、数百頭の動物が飢え、放置され死んでいったが、(当時私たちが)彼らを救う手段はなかった」と主張した。
政府は昨年12月から、動物園の許可制と動物に餌を与えたり触ったりするなどの体験の禁止などを含んだ「動物園および水族館の管理に関する法律」(動物園水族館法)や、「野生生物の保護および管理に関する法律」(野生生物法)などを施行しているが、動物が放置されたり虐待されたりしても、現行法上は物(私有財産)に該当する動物を積極的に救助するには制度的な限界があるということだ。これを補完するため、法務部は2021年10月、動物が「私有財産」として押収される状況を防ぐために「動物は物ではない」という内容の民法改正案を発議したが、第21回国会の任期が終了し廃棄された。
動物福祉問題研究所「アウェア」のイ・ヒョンジュ代表はこの日、ハンギョレに「(閉鎖された施設の)動物が移送される施設の良し悪しは別にして、動物が物のように入札を通じて取り引きされる過程は、動物の福祉が十分に考慮されていない」と指摘した。イ代表は「既存の動物園は、強化された動物福祉と施設の基準適用を2028年まで猶予されているが、今後は閉鎖された動物園のように基準を満たさない施設が増えるだろう」とし、「政府はこれに備え、動物を没収できる制度を整備し、新たに施行中の『検査官制度』を活用し、徹底した管理・監督を続けなければならない」と強調した。昨年、動物園水族館法に新たに加えられた検査官制度は、獣医師や動物専門家などを検査官に指定し、動物の飼育環境、病気の有無、福祉水準などを定期的に点検する制度だ。