(1からつづく)
―米国の大統領選挙は東アジアにどのような影響を及ぼすだろうか。中国はどちらが有利とみているか。
「私たちはすでに米国のドナルド・トランプ政権を経験した。政権後半になるほど、トランプ氏は経済問題において非理性的かつイデオロギー的に変わった。マイク・ポンペオ当時国務長官が台湾を訪問しようとしたし、退任した後も台湾は中国の一部だったことがないという主張を展開した。これは現実を無視したもので、より多くの対立を招き、この地域のすべての国にとって悪いニュースだ」
―トランプ氏が再び戻ってきたら、この地域で米国の同盟構造が弱まり、中国にとって有利ではないか。
「一部の人々はジョー・バイデン大統領が同盟を強化し、中国を封鎖するのにより効果的に対応してきたとみている。ところが、私は両面性があると思う。バイデン政権がさまざまなイシューで中国をさらに強く圧迫した側面もあるが、バイデンの同盟重視政策が中国に対してより攻勢的な態度を取れないよう自らを制限した側面もある。米国が中国に対してあまりにも攻勢的な態度を取るのは、同盟の利益に反することになり、バイデン政権は同盟の利益を考慮せざるを得ないためだ」
―米中競争がどのように進むと予想するのか。台湾海峡や南シナ海などで米中軍事的衝突が起こる可能性もあると思うか。
「中国と米国がこの問題に対する違いをどのように管理するかにかかっている。台湾で民進党政府が独立を図ろうとしない限り、現状は維持されると思う。しかし、民進党政権が独立を目指すなら、大きな問題になる。南シナ海で米国と中国はともに対話をしなければならない。中国の南シナ海に対する主張は昔からのものであるが、現在中国はそれを実行する手段をより多く手に入れた。他の国々も自国の主張を守るためのより多くの手段を持つようになった。そのため、さらに多くの衝突が起きている。今はこの軋轢(あつれき)をどのように管理するのかについて対話しなければならない。今、中国と米国の間の問題は、(米国に)南シナ海で軍事的行動をし、国境、境界線に近いところで偵察活動を行う権利があるのかということだ。中国側は米国に対して、あなたたちが自由に航行することはできるが、軍事行動をして中国を狙った偵察活動をする権利はないと主張している。米国側は、これは我々の義務であり、海洋法の航行の自由原則によるものだと主張している」
―中国政府が「新品質生産力」を強調し、先端製造業を支援している。米国、そして欧州連合も、これが過剰生産の問題を引き起こすと非難している。米中間でこの問題をめぐる緊張が高まっている。
「これは中国の過剰生産が問題ではなく、新たな競争において米国と欧州が非効率的だという問題だ。米国と欧州企業も国家から多くの保護を受けており、ますます非効率的になっている。米企業に競争力があるとき、彼らは自由貿易を掲げた。ところが、彼らの競争力が低下したことで、彼らは保護主義が必要になり、中国を非難している。中国は電気自動車やバッテリー、太陽光パネルなどでますます競争力を持っているが、米国はそれが国の補助金のためだという。ところが今、すべての国が電気自動車などに補助金を与えている。中国政府の補助金は米国に比べて少ない。米国が主張する『中国の過剰生産』は大げさなものだ。さらに大きな原因は、米国がますます競争力を失っていることだ。欧州も同じだ」