イ・ウォンソク検察総長がキム・ゴンヒ女史の「ブランドバッグ受け取り」疑惑の迅速な捜査を指示したことで、キム女史が刑事処罰される可能性に関心が集まっている。
この事件を捜査中のソウル中央地検刑事1部(キム・スンホ部長)は、特別捜査を担当する第4次長検事傘下の反腐敗捜査3部、犯罪収益還収部、公正取引調査部から各1人、計3人の検事の派遣を受けた。イ総長が2日にソウル中央地検のソン・ギョンホ地検長から報告を受けた際、「迅速かつ徹底的に捜査せよ」と指示したことに伴う措置だ。捜査チームを補強した検察は、告発人を調査するなど、捜査を急ぐ方針だ。
キム女史は、2022年9月に在米韓国人統一運動家のチェ・ジェヨン牧師(62)から300万ウォン(約34万円)相当のクリスチャン・ディオールのバッグを受け取った疑いが持たれている。インターネットメディア「ソウルの声」は昨年11月27日、チェ牧師がカバンを渡す過程を撮影した動画を公開。続いて昨年12月に尹大統領夫妻を請託禁止法違反と収賄で検察に告発した。
キム女史が請託禁止法違反で処罰される可能性は低い。請託禁止法は、公職者の配偶者が公職者の職務と関連して一度に100万ウォンを超えるか、年間300万ウォンを超える金品を受け取ってはならないと規定しているが、配偶者を処罰する規定は特にないからだ。ただし尹大統領は退任後に処罰される可能性がある。公職者が配偶者の金品受け取りを認知し、所属機関長に届け出なかった場合は、3年以下の懲役または3000万ウォンの罰金の対象となるからだ。しかし、機関長を尹大統領本人と解釈する余地もある。
告発人は、夫婦は法的に経済共同体の関係であるため、大統領夫人は収賄の共犯者となりうると主張する。最高裁は2019年に、朴槿恵(パク・クネ)元大統領をチェ・スンシル氏の収賄の共犯者とみなしつつ、2人がいわゆる「経済的共同体」だと考えうるほど家族と変わらない間柄であるとの検察の主張を認めている。
残された問題は、渡された金品が大統領の職務と関連があるかどうかだ。最高裁の判例は、大統領の収賄罪の場合はいわゆる「包括的贈収賄罪」を認めている。最高裁判所は1997年、全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)の両元大統領の収賄事件で、「賄賂は大統領の職務に関して供与されたり受け取ったりしたものであれば十分で、個々の職務行為と対価的関係にある必要はない」と述べている。
しかし法曹界では、職務との関連性が認められるためには、キム女史とチェ牧師との間に対価性のある請託があったかどうかも立証しなければならないと考えられている。過去に部長判事を務めた弁護士は、「大統領の人事権の範囲は広いが、実際に2人の間でどんな対話が交わされたのかが重要だ。職務に関する不正な請託があったかどうかが捜査で糾明されなければならない」と指摘した。かつて高位公務員団に所属する公務員だった弁護士は、「キム女史とチェ牧師にどんな利害関係があるのか、具体的にどんな請託イシューがあったのかを明らかにしなければならない」と述べた。贈収賄の捜査の経験が豊富な検察の関係者は、「大統領の職務権限は包括的だと言えど、(朴元大統領の収賄罪が認められた)サムスン事件程度の対価性は立証されなければならない。チェ牧師の業務が具体的ではないため、受け取る立場からしても賄賂と認知することは容易ではないように思える」と語った。
ただ、事実関係や職務との関連性などを明らかにするために、検察によるキム女史の取り調べは避けられないとみられる。検察は、キム女史を呼んで取り調べることになれば、ドイツモーターズ株価操作への関与疑惑も同時に取り調べることも検討中だという。