サムスン電子労組の組合員たちが8日に争議行為を決議した理由は、大きく2つにまとめられる。会社側が算定した賃金引き上げ率と労組の要求した引き上げ率との格差が大きいこと、そして賃金引き上げ率の決定過程からも労組が排除されたことだ。
サムスン電子は先月29日の労使協議会での賃金調整協議を通じて、今年の賃金の平均引き上げ率を昨年(4.1%)に比べ1.0ポイント上昇の5.1%と決定した。経営実績などを考慮した引き上げ率だというのが会社側の説明だ。半導体業況の低迷により、昨年のサムスン電子の年間営業利益(連結)は6兆ウォン台にとどまり、ここ15年で最悪の経営成績となった。
労組は6.5%の引き上げを要求している。物価上昇率(3.6%)などを考慮すると、今年は昨年より少なくとも2.4ポイント上昇すべき、との主張だ。労組は成果給制度の改善と再充電休暇の新設も要求しているが、会社側は認めていない。
労組員は、賃金引き上げを労組との団体交渉を通じて決めるのではなく、労使協議会を通じて決めていることに、特に大きな不満を示している。全国サムスン電子労組のソン・ウモク委員長はこの日、ハンギョレの電話取材に対し、「労使協議会の8人の社員代表がサムスン電子の12万人あまりの社員の賃金引き上げを決めている」とし、「社員は労使協議会に賃金交渉権を委任したことはない。労使協議会は決定された事案について構成員の同意も求めていないため、社員たちの怒りは強い」と語った。
業況の不振により、半導体事業を担うDS部門の昨年の超過利益成果給(OPI)が0%と策定されたことも、労組員の反発を招いた要因としてあげられる。昨年末には1万人だった全国サムスン電子労組の組合員数が、最近では2万5千人にまで急増しているのも、こうした不満などが複合的に作用した結果だとする分析も示されている。
いっぽうサムスン電子は、現在の労組加入率は20%に過ぎないため、残りの80%の賃金引き上げ率は労使協議会で決めざるを得ない、との立場だ。サムスン電子の関係者は、「労組に加入している構成員が半数を超えていない場合は、労組との賃金交渉は労組員だけに適用される」とし、「サムスン電子の構成員は労組非加入者が大多数であるため、彼らの賃金引き上げ率は労組ではなく労使協議会を通じて定めた。これは法的に問題がない」と述べた。現行法によると、全社員の過半数からなる労組が存在しない場合、会社は労使協議会で成果の配分や賃金体系などを協議できる。
サムスン電子の内外では、この日、ストライキやサボタージュなどの戦術を取りうる争議行為が労組によって決議されたものの、ストにまでは至らないとの観測が優勢だ。サムスン電子では1969年の創業以来、ストの前例がなく、労組も2022年と2023年に賃金交渉の決裂を受けて争議調停を申請して争議権を確保しているが、ストに打って出てはいない。労組はまず今月17日に、京畿道華城(ファソン)のサムスン電子の部品研究棟(DSR)ロビーで集会を行う計画だ。サムスン電子の関係者は「労組と対話を継続する計画」だと語った。