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尹錫悦大統領はなぜこれほど減税にこだわるのか

登録:2024-02-13 08:35 修正:2024-02-13 12:39
尹錫悦大統領が4日、ソウル龍山の大統領室で韓国放送(KBS)の「特別対談-大統領室を訪ねる」に出演し、アンカーのパク・チャンボムさんと対談している。「録画」対談は7日夜10時から100分間放送された=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 「外国の資本家たちも国内に投資できるようにするためには、『コリアディスカウント』(韓国証券市場に対する低評価)を減らしていかなければなりません。そのためには規制、特にその中でも租税制度による規制的諸側面を除去していくことが非常に重要です」

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が7日に放映された韓国放送(KBS)の「特別対談-大統領室を訪ねる」で、金融投資所得税を廃止する考えを再度確認した際の発言だ。減税に対する尹大統領の態度は一貫しており、執着に近いという印象さえ与える。税収不足に直面し、「ポピュリズム」批判にさらされても、忘れかけたと思ったら新たな減税案を発表したり、「少数与党国会」という不利な形勢にあるにもかかわらず各種の迂回路を探し出したりしている。尹大統領は一体どうしてこれほど減税にこだわるのだろうか。

WHY(1)「太初に文在寅ありて…」

 減税基調は一貫しているが、減税を裏付ける「論理」は時期によって少しずつ異なる。任期初年に政府が推進した減税は、住宅譲渡所得税や総合不動産税などの不動産関係の税が主な対象だった。政府は発足日の2022年5月9日に、「第1号政策」として譲渡税の重課からの複数住宅所有者の一時排除を発表した。続いて総合不動産税の公正市場価額比率の引き下げ、公示価格の調整、公示価格の現実化率の調整など、任期初年には不動産税制の緩和に注力した。

 これらを推進しつつ政府が掲げた課税論理は「課税の正常化」だった。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に推進された高価住宅と複数住宅所有者に対する課税の強化は「非正常」であり、新たに発足した尹錫悦政権は不動産税制を正常に戻すというのだ。政府は不動産減税を「安定的住居のための税制の正常化」(110大国政課題の発表時に用いられた表現)と説明してもいるが、「安定的住居」はうわべに過ぎず、実際の政策推進の背景は「文在寅の政策の否定」だったという見方がある。不動産責任論で大統領選挙に敗北したと評されている文在寅政権を絶えず思い起こさせて政権運営の大義名分を強化するとともに、任期序盤の支持率上昇を引き出すことを狙った戦略だったという解釈だ。

WHY(2)「減税で経済成長」…相も変わらぬトリクルダウン神話

 不動産減税と共に任期初年に減税「ドライブ」をかけたもう一つの税金は、法人税だ。政府は2022年6月16日に発表した新政権の経済政策の方向性で、法人税の最高税率の引き下げ(25%→22%)と課税標準区間の調整(4段階→2~3段階)の方針を明らかにした。しかし法人税の最高税率の引き下げは、直ちに野党の「金持ち減税反対」にぶつかった。そのせいでその年の定期国会では政府案どおりの法人税法改正が実現しなかったため、改めて政府が掲げた方策が、批判も多く問題も多い「国家戦略技術税額控除」の強化だ。2023年12月30日、尹大統領は国務会議で「多数議席を押し立てた野党に足を引っ張られ、企業のグローバル競争力の向上と投資拡大のための法人税の最高税率引き下げは完全には反映されなかった」としつつ、「半導体などの国家戦略産業に対する税制支援を追加拡大する方策を積極的に検討せよ」と指示した。

 これに沿って、任期2年目の昨年には、国家戦略技術税額控除は対象となる産業の範囲を広げるとともに、税額控除率を繰り返し引き上げるというやり方で規模を拡大した。「国家戦略技術」という定義が曖昧で、大企業ばかりに恩恵が集中する法人税減税は不適切だとの指摘があったが、政府はゴリ押しした。その際に政府が掲げた減税論理は「トリクルダウン効果」だ。チュ・ギョンホ前副首相兼企画財政部長官が昨年10月の国会企画財政委員会で「サムスン電子は国民年金が筆頭株主に近い」と語ったのが代表的な例だ。「課税の正常化」という減税の大義名分が、任期2年目には理論だけがあって全世界的に実証のない「トリクルダウン効果」に変化したのだ。

尹錫悦大統領が1月2日午前、ソウル永登浦区の韓国取引所で開かれた2024証券・派生商品市場の大発会で祝辞を述べている/聯合ニュース

WHY(3)コリアディスカウント?…「経済運営哲学の貧困」

 課税の正常化とトリクルダウン効果を経て、任期3年目に入った尹大統領が近ごろ掲げている減税の大義名分は「コリアディスカウント」だ。7日のKBSでの対談で尹大統領は「国民の資産形成のためにコリアディスカウントを減らしていくことが重要だ」とし、「租税制度による規制的諸側面を除去していくことが非常に重要だと考える」と語った。2025年の課税実施を控えた金融投資所得税の廃止はもちろん、さらなる株式市場と関連する税制の改編を実施するとの考えを明らかにしたものと解釈される。

 突如として登場した「コリアディスカウント」論理に、多くの専門家たちは当惑している。そもそもコリアディスカウントの原因としては、主に株主に親和的でない後れた企業支配構造、企業の成長の弱まり、南北対立をはじめとする地政学的問題が指摘されていたからだ。あまりにもつじつまが合わないため、尹大統領の「コリアディスカウント」減税は総選挙を控えたポピュリズムだとする解釈も盛んだ。ある政府関係者は「通常、選挙前にはばらまきで歓心を買ったが、現政権は支出カードが使えないので、税金カードを切りつつ様々な理由を取ってつけているのではないか」と述べた。昨年の税収が56兆ウォン以上も不足しているにもかかわらず、「健全財政」という標語で自ら手足を縛ってしまっているため、減税で票集めをしているということだ。

 このような尹大統領の減税への執着は、「経済運営哲学の貧困」の結果だという厳しい指摘もある。ソウル大学のイ・ジュング名誉教授(経済学部)は先月、自身のウェブサイトで、「尹錫悦政権はいったい何を最優先にして経済政策を運営しているのか疑問だ」とし、「減税政策がまるで万能薬であるかのように、ほとんど宗教のように信奉する態度は、哲学の欠乏をひらすら減税政策神話のみで挽回しようとしているもののようにみえる」と指摘した。「掲げるものが一つもないから、減税政策でも掲げてみようという心づもり」だとの指摘だ。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1127916.html韓国語原文入力:2024-02-09 09:00
訳D.K

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