「70年以上前の朝鮮戦争も、ある日突然起きたことではありません。休戦ラインで互いに数回にわたって大小の軍事的衝突を繰り返し、事前に長い時間、様々な兆候が積み重なりました。最近、地域を行き来する軍の車両や移動兵力を見ると、以前と違ってどんな軍事作戦が始まるのかと不安な気持ちで眺めてしまいます」
南北の境界地域の江原道鉄原郡(チョルウォングン)で農業を営んでいるキム・ヨンビンさん(58)はこのように語った。ソウル鍾路区(チョンノグ)の弁護士会館で「平和と連帯のための(南北)境界地域住民、宗教、市民社会連席会議」の主催で開かれた記者懇談会で、キムさんをはじめとする境界地域の住民と市民社会の活動家たちは、9・19南北軍事合意の無効化をはじめ、日増しに高まっている軍事的緊張について懸念を示した。彼らは25日、「戦争を招くすべての敵対行為と軍事行動を直ちに中断し、武力衝突の防止と対話チャンネルの復元のために努力しなければならない」とし、口を揃えて「戦争に勝つのではなく、戦争を防ぐために最善を尽くす政府を望む」と訴えた。
これに先立ち、5日には北朝鮮が西海(ソヘ)延坪島(ヨンピョンド)と白ニョン島(ペンニョンド)付近の海で海岸砲射撃を行ったことを受け、韓国海兵隊も延坪島などでK9自走砲を撃って対抗した。当時、合同参謀本部は、北朝鮮の砲射撃訓練後の午後12時頃、軍の海上射撃訓練を控え、2回にわたり延坪島住民に避難命令を下した。
延坪島で漁業を営んでいるパク・テウォンさんは当時の状況に触れ、「重要なのは、2010年の延坪島砲撃以来、再び西海5島の住民の生存が脅かされていること」だとし、住民の安全のための対策を求めた。パクさんは砲撃から1週間後の12日、イ・サンミン行政安全部長官が延坪島を訪問したことについて「(イ長官は)『住民保護態勢を強化する』と述べた。ところが、行安部には西海5島の有事の際の住民避難マニュアルがないことが確認された」とし、「延坪島砲撃から13年が過ぎた今もマニュアルさえないという現実に、西海5島の住民たちは暗澹たる思いだ」と語った。さらに「西海5島をはじめとする境界地域の住民にとって最高の住民保護態勢は朝鮮半島の平和」だと付け加えた。
これと関連して行安部の関係者はハンギョレに「関係機関の公務員の任務と役割を盛り込んだ『局地挑発状況時の西海5島住民保護指針』を運営している」とし、「全国民を対象にする非常時の国民行動要領も(住民たちに)知らせている」と説明した。
境界地域の住民たちは3月から本格化する可能性がある対北朝鮮ビラ散布についても強い懸念を示した。境界地域の京畿道坡州市(パジュシ)に住むのイ・ジェヒ「キョレハナ」坡州支会代表は「もし北朝鮮が休戦ラインを越えてくる対北朝鮮ビラ散布用バルーンに向かって対空射撃をした場合、南北間で交戦がいつでも起こりうる状況」だと話した。
この日の懇談会に参加した北韓大学院大学校のキム・ドンヨプ教授は「9・19南北軍事合意がなくなり、緩衝区域が消えたことで、意図しない偶発的衝突の可能性がはるかに高まった」とし、「現在の危機には北朝鮮の責任があるが、韓国も韓米、韓米日軍事訓練を実施し、軍事的脅威を加えている。(韓国軍の)『即時に、強力に、最後まで』の原則は国民のためなのか問いたい」と批判した。