与党「国民の力」が来年4月の総選挙を前に打ち出した「メガソウル」構想に対して、与党所属の地方自治体の首長が相次いで反対の意思を表明している。与党内部での十分な事前協議やコンセンサス形成すらなしに、首都圏の民意の獲得を狙った総選挙用政策として拙速に推進しているため、随所で乱脈ぶりがあらわになっている。
国民の力に所属する仁川市(インチョンシ)のユ・ジョンボク市長は6日、仁川市庁で記者会見を行い、「京畿道金浦市(キンポシ)のソウル市編入構想は実現不可能な虚像」だとし、「国民の対立と混乱ばかりを引き起こす政治工学的なアプローチであり、政治ショー」だと強く批判した。ユ市長は1994年からの金浦郡守を経て1998~2002年には金浦市長を務め、第17~19代総選挙で金浦から出馬し、国会議員を3期務めている。
ユ市長は、金浦市のソウル編入は現実的に考えて実現しえないと主張した。ユ市長は「金浦市をソウル市に編入するためには、1年以上かかる行政および立法手続きが必要だ。国会での議員立法によって法律を改正することも、少数与党が単独で貫徹させる可能性は現実的にみて、ない」とし、「金浦市のソウル市編入は実現不可能な話であり、金浦市民に期待させ、後に混乱と失望を招くだけ」だと述べた。国民の力は金浦市のソウル編入に向けて特別法案の国会提出を準備中だが、現在の議席構造では、院内第一党(168議席)である野党「共に民主党」の協力なくして、国民の力(111議席)のみで法を成立させるのは困難であることを指摘したもの。
ユ市長は「選挙が約5カ月後に迫る中、慎重な検討や公論化なしに『できなければそれでかまわない』というやり方で課題化することは、国民の混乱ばかりを招く無責任な行為」だとし「無知、無能、無責任を隠そうという政治『票ピュリズム』(票集めのためのポピュリズム)から脱し、真に国と国民を考えた政治をしてほしい」と述べた。
同じく国民の力に所属する忠清南道のキム・テフム知事もこの日、道庁で記者会見を行い、「メガシティーソウル」反対の立場を表明した。キム知事は「(首都圏の)行政、教育、財政や権限をどのように地方に移譲するのか、首都圏の大企業や大学をどのように地方に移転するのか、首都圏と非首都圏の不均衡をどのように解消するのかの下書きがまず提示されたうえで、首都圏の行政区域の整備が必要ならば議論されるべきだと考える」、「地方メガシティー造成が優先」だと述べた。大邱市(テグシ)のホン・ジュンピョ市長も1日にフェイスブックで「大統領も地方化時代の国土の均衡ある発展を最も重要な政策とし、連日会議を開いているところに、すでにメガシティーとなっているソウルをよりいっそう肥大化させ、首都圏への集中の深化ばかりを招くソウル拡大政策」だとし「時代に逆行する政策ではないか」と批判している。
ユ市長らの態度は、自治体の長として地元の利益を優先しなければならないという立場が反映されたものでもある。しかし与党としては、首都圏の民意をつかもうとして逆に「ソウル対地方」という対決構図が注目されてしまうと、政治的逆風を浴びることにもなりうる。キム・ギヒョン代表はこの日、国会で行われた最高委員会議で「運動場に引かれた線を消して改めて線を引いたとしても運動場全体の面積は同じであるように、金浦市のソウル編入問題は首都圏の肥大化とは何の関係もない」と主張した。国民の力はこの日、チョ・ギョンテ議員を委員長とする「ニューシティープロジェクト特別委員会」を発足させたが、これは当初検討していた名である「首都圏住民便益改善特別委員会」から変更されたもの。これも「首都圏の肥大化を深化させる」との指摘を意識したものと読み取れる。チョ委員長は韓国放送(KBS)ラジオの番組で「ソウル、釜山(プサン)、光州(クァンジュ)をつなぐ3軸メガシティーは、遅れているが今からでも早急に推進すべきだ」と語った。