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「北朝鮮、米軍兵士関連連絡に応答なし」…悩み深まる米国

登録:2023-07-21 06:39 修正:2023-07-21 08:07
トラビス・キング二等兵//ハンギョレ新聞社

 米政府が18日に北朝鮮に亡命した在韓米軍兵士の送還のため接触を試みたが、北朝鮮から応答がなく、彼の所在もまだ把握できていないと明らかにした。関係が悪化した北朝鮮との対話の扉が開かれない中で発生した越北(北朝鮮に渡ること)事件をめぐり、米政府が頭を抱えている。

 米国務省のマシュー・ミラー報道官は19日(現地時間)の記者会見で、板門店(パンムンジョム)見学中に北朝鮮に渡った米陸軍のトラビス・キング二等兵について、「昨日、国防総省が朝鮮人民軍側のカウンターパートに連絡を試みた」とし、「応答がなかったと聞いている」と述べた。米国は国連軍司令部を通じて北朝鮮との接触を試みており、韓国政府にも協力を要請した。平壌(ピョンヤン)に米国の利益代表部の役割も兼ねる大使館を設置しているスウェーデンを通じても北朝鮮との接触も図っている。ミラー報道官は「我々はキング(二等兵)の行方に関する情報収集に努めている」とし、「米政府は彼の安全と帰還のため積極的な努力を続ける」と語った。

 ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官も記者会見で「我々はあらゆる情報を収集しようと試みている」としたうえで、「それらを全部確認するためには少し時間がかかると思われる」と述べた。また「国防総省が北朝鮮のカウンターパートの朝鮮人民軍と連絡している」という前日の説明を繰り返した。

 国務省とホワイトハウスの説明によると、米国はキング二等兵の所在を把握し送還の可能性を打診するために、多角的に接触を試みているが、北朝鮮はそれに反応していないものとみられる。敵国に抑留されている自国市民の送還を非常に重要視する米政府にとって、北朝鮮との関係が大きく悪化した中、キング二等兵の所在と送還に関する北朝鮮の反応を待つしかない立場だ。米国メディアは1982年以来初めて発生した在韓米軍兵士の越北事件を大きく取り上げている。このような困難な事情のためか、ジョー・バイデン大統領は同日のある行事で演説する前、越北事件について記者団から質問を受けたが、何も答えなかった。

 これに先立ち、キング二等兵は韓国でクラブの従業員を暴行し、パトカーを破損した疑いで起訴され、罰金刑を言い渡された前歴があり、47日間の拘禁の末、今月10日に釈放されたことが明らかになった。彼は越北当日、本国への送還とさらなる懲戒のため、仁川(インチョン)空港に護送されたが、飛行機に乗らず板門店(パンムンジョム)見学団に紛れ込み、軍事境界線を越えた。彼がどのような経緯で板門店見学団に紛れ込んだのかは依然として不明だ。

 ウィスコンシン州に住むキング二等兵の母親はABC放送とのインタビューで、息子が越北数日前、電話で話した時、テキサス州の基地に復帰すると言っていたとして、「トラビスがそんなことをしたなんて信じられない」と語った。息子が家に帰ってくることだけを望んでいるとも付け加えた。

 しかし、北朝鮮に渡った米軍兵士6人のうち北朝鮮を抜け出した事例は、越北から39年後の2004年に日本人妻のもとに戻ってきたチャールズ・ジェンキンズ氏のみ。ジェンキンズ氏は朝日交渉が本格化する中、拉致被害者だった妻が先に日本に帰還したことを受け、家族と再会するという名目で北朝鮮を離れた。自ら越北したキング二等兵が米国に送還されるのは難しいだろうとみられるのもそのためだ。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1100973.html韓国語原文入力:2023-07-2012:05
訳H.J

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