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[コラム]訪米を控えた大統領に教えたい「外交秘策」

登録:2023-04-25 04:35 修正:2023-04-25 08:11
尹錫悦大統領が18日、ソウル龍山の大統領室でロイター通信の記者の質問を聞いている/ロイター・聯合ニュース

 まもなく「新冷戦」時代の大韓民国の針路を決めることになる韓米首脳会談が行われる。会う前にすでにうなり声を上げている中国・ロシアと、自らの利益を得るのに忙しい米国に挟まれて、大韓民国全体がぼろぼろになっているように感じる。国はこのありさまだが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のみを批判すればそれで済む「のんきな状況」ではないように思われるので、何か役に立つ言葉はないかと迷った末に本稿を書いている。

 冷静に言えば、尹大統領が取っている外交路線がすべて間違っているとは思わない。2019年2月末の「ハノイ破局」以降、北朝鮮の核問題の解決は事実上遠のき、昨年2月末のロシアによるウクライナ侵攻と米中間の激しい戦略競争によって世界は荒々しい陣営対決の時代へと回帰してしまった。そのため、冷戦終結後、韓国の繁栄を可能にした米中「バランス外交」の幅は次第に狭まりつつある。それと同時に、韓国の経済規模も世界10位ほどに膨らんでいるため、ウクライナ戦争や台湾危機などの主要懸案に関して立場を表明したうえで、耐えなければならないことは耐えざるを得ない状況になっている。

 しかし、尹大統領が主導した対日「屈辱外交」や19日のロイター通信とのインタビューでの「舌禍」などをみれば、心配事は一つや二つでは済まない。現在の政府の考えとはまったく異なる話を長々としたところで互いに疲れるだけなので、これならば受け入れられるであろうと思われる、簡単で有用なヒントをひとつお教えしようと思う。

 韓国と似たような外交・安保的苦悩を抱えている日本の動きを注視されよ。そして「絶対に」日本より先に立とうとせず、時には半歩、また時には2歩遅れて歩くことをお願いしたい。そうすれば米国に強く悪口を言われることもなく、中ロと疲れる口げんかをしなければならない困った状況も避けることができる。

 このような基準で、先のロイターのインタビューを見てみよう。尹大統領はロシア軍による民間人大量虐殺などの前提条件を掲げつつ、ウクライナに軍事支援しうるとの考えをほのめかした。記者たちは意地悪な存在なので、質問の機会が生じれば「このような状況が生じた場合、どうするのか」と聞いてくる。そのような質問には100%オウムのように「仮定にもとづいた質問には答えない」と言わなければならない。しかし、尹大統領はロイターとのインタビューで、聞かれてもいない状況を自ら想定し、きわどい話を大放出した。絶対に避けなければならない。26日の韓米首脳会談後の記者会見で困った質問をされても、どうか機械的に答えてほしい!

 ロイターのインタビューを読んであまりにあきれたので、先月21日にウクライナのキーウを訪問した日本の岸田文雄首相の記者会見映像を見てみた。今年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で日本は議長国を務めるとして、あらゆる華々しい話をしつつも、絶対に「一定の線」は越えなかった。すると質問が飛び出した。NHKの記者だった。

 「ウクライナが求めている武器支援についてどう思われますか」

 「日本ができる分野でウクライナを様々なかたちで支援しようと思います」(武器支援はしないという意味)

 そして中国。尹大統領はインタビューで、北朝鮮問題と同様に台湾問題は国際問題だと述べたが、これは韓国が「一つの中国」を無視しているという印象を与えうる非常に危険な発言だ。中国にとって不快な話をするには、その前に必ず「『一つの中国』政策に変化はないが…」と付け加えなければならない。岸田首相だけでなく、米国のジョー・バイデン大統領も中国の習近平国家主席に会う際にはそう述べてから、中国にとって耳の痛い話をしている。

 さらに、米国にとって台湾問題は戦後70年あまり続いてきた覇権の維持に関する問題であり、日本も台湾で戦争が起きれば自分たちも巻き込まれざるをえないと考えている。韓米あるいは韓米日の枠組みで台湾問題に言及することはできようが、尹大統領が単独で、それも非常に乱暴なやり方で語ってしまうと、相手の報復を単独で受けなければならなくなる。

 最後に。「大国外交」は予測が難しい。一人で竹槍を持って夢中で進撃したのに、振り返ってみると米中首脳が「ほくそ笑み」ながら握手しているという、あきれたな場面を目撃することになるかもしれない。どのみち韓米日3カ国協力を強化するという決心を固めたのだから、日本が振舞ってきたことをよく見て、その半分だけすればよろしい。米国もお手上げな言葉と行動で事を起こした場合、その後始末は国民に回ってくる。あまりに心配だから申し上げているのだ。くれぐれもお願いしたい。

//ハンギョレ新聞社

キル・ユンヒョン|国際部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1089207.html韓国語原文入力:2023-04-24 19:01
訳D.K

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